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ボーンライフ  作者: ユキ
195/196

ボーンライフ

ボーン意味

・ 骨

・生まれた

・運ばれた


ライフ意味

・人生

・生活


 まさかこんな形で元の人間に戻れるとは……。



 ヒュー……。


 久しぶりに感じる肌に当たる風の感覚が心地良い……。



 閉じられた瞼を開ければ、出来たばかりの瞳に差し込む眩いばかりの太陽の日差し……。



 あぁ……遂に生身の肉体を取り戻したんだ……。



 思わぬタイミングで魔王軍に参加した目的を果たせてしまったが、生身で味わう久しぶりの生きた感覚は、全ての疑問を容易に感動へと塗り替える。



「クリス……おめでとう! 遂に元の体を手に入れたんだね!

 あっ、でも……その姿だともう、クリスじゃないんだね……」


 真っ先に祝福の言葉を投げかけるルカだが、その事実に少し悲しげな表情をする。


 そんな所が本当に愛らしい。


 そんな事……あるわけないのに。



「ルカ、ありがとう……でも、元の姿に戻ろうが、俺はクリスだ。

 この世界でルカに名付けてもらったその時から俺は、どんなに見た目が変わろうとルカの夫で魔王……クリス十六世のままだよ」


 そう……俺が俺であれたのは、ルカと出会えたから……


 ルカにこの名を貰い、初めてこの世界に居場所を貰えたから……。



「……うん」


 ギュッ。



 俺の気持ちに瞳を潤ませ抱き付くルカ。



 生身の体で伝わるルカの温もりはとても心地よく、ここが俺の帰る場所なのだと感じられる安心感を与えてくれる。



 この世界に骸骨兵として転生した俺を見つけ出し、聖母のような愛で導いてくれた


 俺の原点で


 全てを包む絶対的な存在……



 ルカレット・エレンシア。



「ありがとう」


 彼女がいつも側で支えてくれた事に、自然と感謝の言葉が出た。



 ギュッ! ギュッ!


 そんな抱き合う俺たちに、ここぞとばかりに背中と腰に抱き付いてくる2人。



 生身の背中越しに伝わるタワワに実った2つの極上の感しょ、ゴホン……温もり。


 歪んでいるが折れる事のない一本筋の通った一途な愛で支えてくれた存在……ルナーレ・ヤマト。



 彼女のどこまでも一途な想いに何度救われて来た事か……。



 そして、腰に伝わる感覚は、大人と子供の間である成長途中の何とも言えない今だけの魅力を持った温もり。


 純粋とは言い難いが、何者にも染まらない無邪気で真っ直ぐな愛で俺を照らしてくれた存在……ミルカ。



 彼女の明るさが、いつも俺に元気をくれる。



 この世界に転生し、出会い、結ばれた3人の大切な妻たち……


 その温もりが俺に改めて生きている喜びを実感させてくれた。



「ちょっとナーレ、大きなお尻が邪魔だよ!」


「ふふ、お子ちゃまの自分に無いモノだからって僻まないで下さい」


「はっ? 僻むも何も、ただの駄肉じゃん」


「はぁ……わかっていませんね。ご主人様はこのお尻が良いんですよ。いつも胸と一緒にチラチラ見てますから」


「……見苦しいからじゃない?」


 ピキッ!

「はぁ!?」


 ……お願いだから俺に抱きついたまま歪み合うのやめてね。



「クリス……うふふ」


 ルカは相変わらず我関せずで幸せそうだね。



 ……まぁ、この喧しさもまた、俺が望んだ日常だ。


 彼女たちがいるから、俺の人生はいつも楽しく、華やかで……幸せに溢れたものだった……。



 彼女たちとなら、これからも……。



「魔王様、念願の元のお姿を取り戻す事でき、本当に良かったです。

 そして此度はご結婚……おめでとう御座います」


 そう言って近付いてきたのは定位置であるリンの頭に乗ったミュート。


 ミュートの言葉に続き、式場に参列した仲間たちからも次々に祝福の言葉が投げかけられる。



 彼らのおかげで、ここまでやってこれた……



 そんな彼らだからこそ、笑顔で祝福される事でこんなにも幸せになれるのだろう。



 フワッ……。


 ふと気付けば、辺り一面に空から舞い落ちる色鮮やかな花びら。


 洒落た演出をしたであろうグラスは、長年娘のように育てたルカの花嫁姿に、頬に一筋の涙を流しながら愛おしそうに見つめて微笑んでいる。



 ドンッ……ドンドン!


 その後ろでは、告白の時のように、魔法によって盛大な花火が打ち上げられる。


 式場に入りきらなかった魔王軍の面々が、式場から聞こえる割れんばかりの拍手と祝福の言葉に反応して、今やボーンシティで知れ渡っている俺の告白シーンを再現するように花火を上げてくれているのだ。


 その気持ちにただただ感謝の想いが湧き上がってくる。



 世界と2人の想い人を救う筈が、何故か流れで始まった結婚式だが、終わってみれば全てが上手く行き、それどころか元の姿まで手に入れた。


 それもこれも、俺たちをこんなにも祝ってくれる仲間たちがいてくれたおかけだ。




『楽しかった?』


 その時、いつぞや精神世界で聞かれたあの質問が再び、神ギャルから投げかけられた。


 だからこそ俺は、再び同じ答えを答えた。



「あぁ……最高に楽しくて……最高に幸せな人生だった」


『そう……それなら良かった』


 あの時と違ってそれだけ言うと、今度はそれっきり神ギャルからの声は聞こえなくなった。



 それが正真正銘、俺の心からの想いなのだと分かったように……。



 あぁ……今なら思う。



 骸骨兵になり、沢山の人……主に変態と出会い……



 様々な戦いに巻き込まれ……



 いろいろあったけれど……



 いろいろあり過ぎたけど!



 だけど……



 本当に最高に楽しくて……



 最高にハッピーな!



 ボーンライフだった。

















『……あらら? どうも生き返ったのはアンタだけじゃないみたいよぉ?』


 アナタは毎回……素直に終われないんですか!!




「……って、えぇ!? 今なんて言った!?」


『だからぁ、アンタたちの有り余る魔力のせいで、ここ一年の間に亡くなった人たちが生き返ってるみたいよぉ』



「「「……はぁ!?!?」」」


 神ギャルのとんでもない言葉に驚く俺たちだったが、その言葉を証明するようにとんでもない事が起きる。



 ピカーッ!


「うわっ!? 俺の体が急に光出した!? いったい何が……ッ!?」


 突然光出した体に驚いていると、光は体から飛び出し、少し離れた場所である形を成す。



「ア……アナタは!?」


 光が止んだ後に現れた人……それは、俺の命恩人であり尊敬する、あの方だった。



 こうしてこの日、長年にわたる魔族と人族の戦いに終止符が打たれただけでなく、この戦いやワッフル王国での戦い、旧魔王軍の侵攻で亡くなった人々まで生き返る前代未聞の出来事が起こり、その上、世界が千年前の元の形を取り戻すという異例づくしの奇跡の日となったのだった。



  *****



 あの戦いから数年後……。


「……と言う事でよろしいでしょうか?」


「あぁ、全てその段取りで頼む。


 所で……大丈夫か?」


 ボーンシティにある魔王城の執務室で、今後の予定を話していた俺は、目の前の彼女を見ながら心配して質問する。



「えぇ、生まれてくるのはもう少し先ですので心配なさらずとも大丈夫です。

 それにお医者様には適度に動いた方が良いと言われてますので」


 そう言って少し目立ち始めたお腹を愛おしそうにさする彼女。



「そうか……キミが良いなら良いんだ……」

 バンッ!!

「ここに居たのかコリアッ!! お前は……お腹の子に障るから休めと言ったら!!」


 そう言って執務室の扉を蹴飛ばして鬼気迫る勢いで入って来たのは、魔王軍四天王が1人……ジン・ウォレットだった。



 あの戦いが終わってボーンシティに帰った俺たち……そこで出迎えたコリアを見つけるなり、何とあのチキンジンが公開告白をしたのだ。


 どうもリンが裏でけしかけたみたいだが、後にまさかあの話から告白になるとは思わなかったとリンも驚いていた。



 本人は誰かに取られまいと決死の告白だったみたいだが、周りは既にコリアの想いなど知っていたので、案の定、嬉し涙で了承する姿を見ることになった。


 そうして今は、念願の第一子をめでたくご懐妊した訳だ。



 ちなみに、コリアの想いを知らなかったとある小さなアイドルドワーフは、その光景にただ膝をついて唖然としていたと言う……。


 今は失恋を忘れるように、双子の姉と世界中を回って熱心なアイドル活動をしている。



「そうかコイツか!! この無情なパワハラ魔王が妊婦をこき使ってやがるのか!? コイツが……ッ!? イテヘヘヘ!?」


「コラッ! 魔王様はいつも私の体を気遣ってくれています!!

 私が無理を言って働かせてもらってるんですからアナタは失礼な事言わないで下さい!!」


「はい……申し訳ありませんでした」


 俺が考え事をしている内に、いつの間にか頬をつねられ真っ赤にしたジンが地面に正座してコリアのお説教をくらっている。



 全く……初めての子供に心配になるのはしょうがないが、お前が一番コリアに負担をかけてるっていい加減気付いて欲しい。



「それじゃ、俺はそろそろこの辺で……ほとほどにな」


 そう言ってその場から逃げるように立ち去る俺。


 そのままとある場所へと魔王城を出てボーンシティを歩き出す。



 今や魔族領の環境も改善した事で、魔族領内だけでなくヤマト王国との国交も盛んになり繁栄したボーンシティ。


 街中には多種多様な種族に加え、沢山の人族も行き来をしている。


 もちろんその中には、この街の名前にもなった骸骨兵が今も勤勉に働き、それ以外の意思のある魔物もいる。



 ミュートやリンの夢見た世界がここにあるのだ……。


 そんな2人は今、リンの家族とすっかり平和になった獄森の中に家を作り住み平和なスローライフを送っている。


 まぁ、ミュートはいまだにあの時の力を手に入れるんだと、あの戦いで生き返ったダッチと修業の日々を送っている。



 そうそう、夢見た世界と言えば……グラスは今このボーンシティを離れ、世界中を旅している。


 もちろんその理由はあのろくでもない男のロマンを叶える為に、いろんな種族の可愛い女の子をナンパする為だ。


 真態は相変わらずである。



 彼らの話から、これまで平和で順風満帆な日々を送っているように聞こえるが、そうではない。


 魔族領と人族領だけでなく、星そのものを元通りにしたのは良かったが……何と神ギャルに見捨てられた外の土地にも生き残りが存在し、この俺たちが住む土地に攻めて来たのだ。



 何とかヤマト王国と協力しこれを撃退したが、まだまだ解決しなくちゃいけない課題もあり、当分は忙しい日々が続くだろう。



 そうそう、ヤマト王国と言えばあの後マーラが正式な女王となり、口約束だった魔王軍への属国もなされた。


 ただ、その式典で

「魔王様が余計な方たちまで生き返らせたせいで纏めるのに大変だったんですからね? この責任……とって下さいませ」


 とか言われたんだけと……何を要求されるのか今から怖い。



 よし……忘れよう。



 ……えっ? アルス?


 あぁ……存在自体を忘れたいあの……。


 アルスはグロービルと共に、世界の平和の為に尽力しているとか……世界中のマッスルの為に尽力してるとか……とにかくよくわかりません!


 関わったらろくでもない事になりそうなので関わりたくないです! はい!


 何にしても魔王の俺でも勝てる気しないのだから、どんな事があっても大丈夫でしょ!



 そうして現実逃避しつつ、辿り着いた場所……そこは丘の上にある小さな家……


 その扉に手をかけゆっくりと開ける。



「あっ! お帰りなさいアナタ!

 疲れたでしゃ! お姉様にする? ナーレにする? それともワ・タ・シ? だよね!!」ガバッ!


「こらミルカ! ご主……旦那様が困っているでしょ!

 お帰りなさいませ旦那様。

 直ぐに私の女体盛りの準備をしますね」


 出迎えそうそう変態爆発の妻2人。



 ……は、相変わらずなのでスルーする。



「そっか! もう、3人同時なんてアナタも……エッチ」


「ハゥッ!? 無視なんてこれは……ご褒美!?」


 それぞれアレな反応を返す2人……。



「はいはい、2人とも、ご飯が出来たから並べるの手伝って」


「「はーい」」


 そんな中、ルカがキッチンからやってくると2人に声を掛け、2人は共に歪み合いつつも仲良さげにキッチンへと出来上がったご飯を取りに行った。



 そして嵐が過ぎ去り静かになったその場でルカは俺に向き直ると、ニッコリと笑いかける。


「お帰りなさい、クリス」



「あぁ……ただいま、ルカ」



 いろいろアレな仲間達や妻たちに囲まれ騒がしい毎日だけど……


 俺には帰る場所がある。


 待っててくれる人がいる。



 骸骨兵として転生して、本当に幸せな日々だ。



 ーーー 完 ーーー

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