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第四話

青いカラフル 第4回


〜雨の日〜



 「…朝だ。」

 「うん…」

 「…起きれるか。」

 「うん…」

 ぼんやりとした意識の中、外で雨が降っている音に気がついた。

 そうか、のぼるはそれで「…起きよう。」ではなく「…起きれるか。」と疑問系だったのか。

 「大丈夫、今日はそこまで落ちてない」

 「…よかった。」


 俺は雨が嫌いだ。いや、苦手と言った方がいいのかな?

 人間はずっと自然を意のままにしようと様々な物を発明して自然の摂理に逆らってきた。

 なのに、未だに雨が降ると人々は為すすべもなく傘を差して、服の裾がぬれるのを気にしながら歩かなくてはならない。

 未だに人間は自然に翻弄されっぱなしだ。

 どうすることも出来ない。

 そして、どうすることも出来ないという事が当たり前過ぎて、人々はそれに気付かない。

 そのくせ人間は万能だと思っていやがる…

 何も出来ないくせに…

 俺も…


 「…ユキ。」

 いきなり名前を呼ばれて驚いた。

 いつもの表情でのぼるは俺の顔をのぞき込んでいる。

 「大丈夫だって、今朝飯作るから」

 「…無理しない方がいい。」

 「無理なんかしてねぇって」


 俺は雨が嫌いだ。いや、好きになれないと言った方がいいかな?

 それでも以前に比べればよくなった方だ。

 ひどいときはベッドから出られず、大事な仕事がおじゃんになった事が何度もあったほどだ。

 それぐらい俺は雨に翻弄されてきた。


 「朝飯できたぞ」

 「…うん。」

 のぼるはベランダに出て「雨を見ていた」。

 「…今日はじっとしてた方がいい。」

 「俺に言ってるの?」

 「…雨が言ってる。」

 「俺に?」

 「…うん。」

 のぼるは「雨を見る」。

 すると雨が教えてくれるのだそうだ。

 「…ユキ、大丈夫じゃない。」

 「いや、大丈夫だって。朝飯もちゃんと作ったぞ。」

 「…」

 「朝だってちゃんと起きたし、今洗濯もしたし…ってゆうか今日は午後からクライアントとの打ち合わせがあるんだ。どっちにしろ出かけなきゃ…」

 「行かない方がいい。」

 のぼるが人の話を遮るとは珍しい。

 そんなに俺はヤヴァい状態なのか?

 「でも、今日はどうしても行かなきゃいけないんだ。仕事だからな。」

 「…そう、なのか。」

 のぼるがうつむく。

 そして、天を仰ぐ。

 背の高いのぼるが上を向くと、なんだか雲の上まで見わたせそうな気がした。

 「…しばらく雨を見よう。」

 「朝飯はいいのか?」

 「…ユキのため。」

 「俺は腹へってるんだけどなぁ…」


 俺は雨が嫌いだ。でも、今は少し好きかもしれない。

 俺が雨の日に心のバランスを崩すのは、他ならぬのぼるの性だ。

 のぼるに出会うまでは「雨」にさして思い入れなどなかった。

 なのに…


 「…聞こえるか。」

 「何が?」

 「…雨の声。」

 「俺には聞こえないって」

 「…よく聞いて。」

 「聞いてるんだけどねぇ…」

 「…雨が教えてくれる。」

 雨はしとしと。降り止まない。

 景色がぼんやりとして、頭の中がぼんやりとして、雨の音が聞こえる。


 俺は雨が嫌いだ。本当に大嫌いだ。

 のぼるはいつもわけのわからない事を言う。

 でも、きっとわからない俺にアイツは必死で何かを教えようとしているのだろう。

 でも、それがわからないから。

 教えて欲しいのに…


 「…今日はやっぱり、」

 「いや、そろそろ行かないと」

 「…でも、」

 「大丈夫、今聞こえたよ」

 「…」

 「駅までついてきてくれないか?」


 「素直にならないとな」

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