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やり過ぎたか?

「魔物が侵入したぞー!!」


 オークキングが投げ飛ばした魔物が門を直撃し、大穴が開いてしまった。

 ハルトナ駐屯兵も奮闘したが、突撃命令を出された魔物の猛攻により僅かだが魔物の侵入を許してしまった。


「全員家から出るな! 顔も出すな!」


 アレンが叫ぶと、ケリーもそれに負けじと声を張る。

 どの程度の侵入を許したか解らないが、魔物相手に一般人が太刀打ち出来るわけもないから。声で呼び掛けるしかない。


「絶対に顔を出さないでくださいねー!」


 マリンも頑張って呼び掛ける。

 毎朝巡回している朝市も人気が全くなく閑散としている。

 

「来ると思うか?」


「ここは南門からそんなに離れてないし、大通りに近いからな」


「来たら俺が退治してやる!」


 それを聞いたアレンとマリンは耳を疑った。

 アレンは『自分はまだ倒す自信がない』と言った意味で言ったのだけど、ケリーには別の意味で伝わったようだ。

 無論、マリンもアレンと同様だ。


「ケリー、お前まさか魔物に来て欲しいと思っていないよな?」


「当たり前だろ? ここで倒せば、一気に名を売るチャンスだぞ?」


「バカを言うな! 大森林の魔物と草原の魔物と一緒にするな! 死ぬぞ!」


「アレン君!」


 マリンの叫びが二人の諍いを中断させる。

 マリンの指差す方向を見れば、自分たちの背丈と同じくらいの蜘蛛型の魔物が詰め寄って来た。

 アレンは自分たちの声に引き寄せられたと歯噛みするが、ケリーはこの状況を好機と見たようだ。


「ケリー、ダメだ! 今の俺達じゃ無理だ! ここは密集陣形で応援を呼ぶべきだ、引くぞ!」


「バカを言うな、逃げたきゃ二人だけで逃げろ! 俺はここで名を上げるんだ!」


 アレンも流石に付き合っていられないと思ったのか、別の通りから逃げようと考えたが、更に別の魔物も寄って来た。


「クソッ俺達が狙いなのか?」


「何でも良いさ!」


 そう言って剣を抜くと、目の前の魔物に斬りかかる。

 普段から練習しているのか、ランク『E』の割に太刀筋はよく、威力も申し分無かった。

 加えて、魔物も相手を見縊っていたのか、前足の一本を切断され落とすことになった。


GYAAAAAAAAAAA!!


 足を失い喚く魔物を見て、自分の攻撃が通用すると思ったケリーは調子に乗ってそのままとどめを刺そうと向かった。


(ほら見ろ! 出来るじゃねぇか! ここから俺は強くなるんだ!)


「止めだ!……ぐあぁっぁぁ⁉︎」


 魔物が弱っていると思い、そのまま止めを刺そうとしたケリーが反撃を喰らい吹き飛ばされる。

 四本足の魔物と違い、蜘蛛型の魔物は、一本程度失った所で歩けなくなる訳ではない。

 寧ろ、失った事による怒りで凶暴性が増したようだ。


「ケリー!」


「アレン君、こっちのも来ます!」


 ケリーのカバーをしようにも、自分達に寄ってきた敵から視線を外せない。

 外せば、その瞬間呼びかかってくるだろう。


 たった一撃喰らっただけで、体が思うように動かない。

 立とうにも、膝が笑って力が入らない。

 そう、本能的に敵に恐怖している。

 もう目の前に敵が迫っている。

 

「こんな筈じゃ……」


 そして前足を振り上げる。

 蜘蛛型の前足は先端が鋭利に尖っている。

 突き刺されば、まずひとたまりも無いだろう。


「ケリー、動け! 逃げろ!」


「こんな筈じゃ無かったんだ……」


 そしてさっきのお返しとばかりに、その先端をケリーの頭目掛けて振り下ろした。



 



 

「ギルマスご無事でしたか?」


「瑞樹ちゃんか、ちょっと肝を冷やしたが。まぁなんとか無事じゃよ」


 ギルマスと合流して、キングの討伐の報告をした。

 討伐までの紆余曲折は全てが終わってからで良いとのことだったから、とりあえずは……。


「門からはどれだけの魔物に入られたのですか?」


「およそ十体程度じゃの、余裕があれば手伝ってほしいのじゃが……」


「わかりました。もう暫くしたらオーグさん達も到着しますので、こちらの方はお任せします」


 俺はそう言うと街へ入っていった。

 街の中にも冒険者が巡回で回っていた筈だ。

 けどランクがそんなに高くない冒険者も混ざっている筈。アレンやマリンもいるいる筈だ。


 そう思った矢先、市場の方で大きな音がした。

 冒険者か一般人かわからないけど、襲われている。少なくとも魔物はいる筈だ。

 駆け付けると、遠目で誰かが魔物に襲われている! ……ケリーか!

 魔物に吹き飛ばされたのか所々が出血していて、今まさに前脚を振り下ろそうとしていた。

 何でされるがままになってるんだ!

 

「こんな筈じゃ無かったんだ……」


 そんなこと言ってる場合か!

 ダッシュじゃ間に合わない!

 

 ハッ! 息を鋭く吐いてナイフを投擲する。

 そのナイフはピンポイントで前脚の関節を貫いて落とした。

 流石に脚を二本も落とされると魔物もたじろぎ、その隙をついて俺は背後から魔物を刀で串刺しにした。


「じゃあどんな筈だったんですか?」


「あ………瑞樹……?」


「瑞樹!」


 方然とするケリーの向こうから俺を呼ぶアレンの声がする。

 あぁもう一体いたのか。

 ケリーのことは後回しだな、もう一体を片付けようか。


「ありがとう、瑞樹!」


「マリンも無事でよかった」


 もう一体もサクッと倒して一安心だと思ったけど、約一名納得のいかないご様子だ……。


「アレン、ケリーはどうしたの?」


 俺がくる前の経緯を聞いてみたけど……。

 ん〜…………。

 自業自得と言えばそうなのかも知れないけど。


「勇敢と無謀を履き違えたかな……?」


「何だと⁉︎」


 俺の言葉を聞いて反応したのは、案の定ケリーだった。

 体を痛めたにも関わらず、俺よりも頭一つ分も高い身長差で胸ぐらを掴まれた。

 それを見たアレンが止めに入るが俺が手だけで制する。

 ありがとう、大丈夫だよ。


「俺の行動が無謀だと言うのか!!!」


「えぇ無謀ですね。あれは殺して下さいと言っているようなものでした。いえ、実際私が助けなければ、そのまま串刺しでしたね」


「あの後俺が勝つ予定だったんだ!」


「剣も持たずにあんな台詞吐いといてよく言いますね?」


「ぐっ……あの時はあーするしか無かったんだよ! 見てもいねーのに偉そうな口を聞くな!」


 確かに見ていない、アレンから状況を聞いただけだ。

 けどこの場合、アレンの密集陣形が正しいと思う。

 

「一体も捌けない貴方がよく言いますね? それにアレンは密集陣形を提案したそうですね? そっちの方が適切だと思いました」


 黙っちゃったよ……。

 でも納得いかないって顔だな。

 しゃあない。

 取り敢えず胸ぐらを掴む手を離してもらい、ポーチからアイテムを出して渡した。


「これを飲んで下さい、ポーションです。すぐに治ります」


 そう言ってケリーにポーションを飲ませると、次に俺の腰に挿してある刀を渡した。


「貴方は私がこの武器のおかげで強いと言いましたね? 実際、先程のもそう思った事でしょう。ですので、この場で貴方と立ち合いましょう」


 それで全てが納得いったのか、ケリーは立ち上がり俺の刀を抜いて刃を向けてきた。

 お願いだから鞘を投げ捨てないでくれよ…………そのデザイン結構気に入ってるんだぞ!


「斬られて後悔するなよ?」


「良いですよ。お互い恨みっこ無しでお願いしますね」


 マリンはハラハラしながら見守るが、アレンの表情は一つの動作も逃すまいと瞬きすらしていない。

 遺恨も残さず……か。明らかな手抜きじゃ絶対にダメだよな?


「じゃあ、少しだけ本気でいきますね?」


 【身体強化】、そしてケリーの目を見つめて……殺気を放った。

 そしてそのままゆっくりと一歩ずつケリーに向かって歩き出し、一足一刀の間合いで止まった。

 俺の殺気に当てられて、刀を持つ手が震えてる。


「どうしました? そこからならケリーさんでも斬りに行けますよ?」


 少し挑発してみる。

 震えながらでも上段に構えて叫びながら斬りかかってきた。

 その状態でも足が前に出るだけ大したもんだと思うよ。


「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」


 けど、それだけじゃ足りない。

 そのランクで大森林の魔物に向かった度胸は認めるけど。

 それだけじゃやっぱり無謀だ。

 俺は斬りかかってきたケリーを見据える。

 そして、上段から来る刀をすり抜け、出来るだけ慎重かつ丁寧に優しく、鳩尾に掌底を喰わらせた。


「ぐぼぉぉぉぉ」


 けど、盛大に吹っ飛んだ……。

 拙い、まさか死んでないよな……?

 瓦礫に埋もれてる中から咳き込む声が聞こえてる。

 よし、生きてるな! 救出だ。


「まだやりますか?」


 瓦礫からケリーを助け出して、もう一度ポーションを飲ませたんだが。

 鳩尾を押さえてるところを見ると、完全に回復しなかったのかな?


 「いや、いい……街も取り敢えず沈静化したようだから俺はもう戻るぞ……」


 一言そう言うと、覚束ない足取りでどこかへ行ってしまった。

 やり過ぎたか……?

 ケリーのことは次にあった時にでもフォローしとくか。


 「え、えっと瑞樹?」


 ケリーの言う通り、沈静化したかわからないけど、一通り見て回るか。

 何て考えてたら、後ろからマリンの声がした。

 …………決して忘れてたわけじゃないぞ?


「ん? マリン、どうして怯えてるの?」


 いやマジで。

 俺、マリンにそんなに怖がることしたか?

 そう思ったらアレンが簡潔に答えてくれた。


「そりゃさっきのケリーの時んだろ? あれだけの殺気を放ったんだ、直接浴びてなくてもビビるさ」


 あーなる程、余波を浴びたのか。

 それは悪い事をした。


「あ、ごめん、大丈夫? マリン、この騒動が終わったら、また一緒にご飯食べに行こうか!」


「うん、約束だよ!」


 うん、チョロかった。


 そう言えば、今回の依頼で判ったことがある。

 それをギルマスに報告しないとな。

 でもなー……また何か頼まれそうなんだよなー……。

 俺はもっと穏やかに過ごしたいんだよ……。


誤字や脱字、感想や評価など頂けたら今後の励みになります!

って言うか張り切っちゃいます!

よろしくお願いします!

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