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CHAPTER7ー5 火術師×霊術師

このCHAPTERだけやたらと長くなりました。当初の計画より長くなりましたが、そして遅くなりましたが、章は完結です。アクセスして戴いた方はありがとうございます。これからもどうかよろしくお願いします。


-校舎外-


「小橋、大丈夫か?!あいつらは一体誰なんだ?何しに来たんだ?貴司達とケンカしてるのは何故だ!どうして手から火が出るんだ?」海老澤は一気に捲し立てた。小橋は何も言わず二人を駅の方へと案内した。

「おって話す。今はなるべく学校から離れることだ。」小橋はそれ以上は何も言わなかった。


-校門付近-


吉田と上久保が刃物を目にも止まらぬ速さで振り回していた。

「流石は会長?いい腕してんな?」上久保は間が離れた所で言った。

「そいつはどーも。」吉田は冷たく言った。

「尚更、切り殺すのは惜しい。だが!!」上久保は再び突進してくる。距離を詰めなければ吉田の火術の餌食になるからだ。吉田は逆に逃げる。吉田は十分な足の速さを持ってはいたが、上久保はそれなりに俊足だった。以前、後藤と闘った時、足の速い後藤ですら、距離を詰められた。

「うおおおぉぉぉっっっっ!!!!!」上久保は雄叫びを上げて突進してくる。吉田が火球を投げつける。鋭い送球だ。しかし、上久保は刀で凪ぎ払う。

「そんな重いものを振り回せる力があるとは。女子とは思えないな。」吉田がこういう間に上久保は吉田との距離を詰め、脚を狙う。

「フン。」吉田は逆に脚で、刀を握る手を蹴った。

「ウッ。」上久保は小さく呻き、前のめりに倒れた。

「ウラッ!」吉田がさらに膝げりを腹に入れ、蹴り飛ばした。

「ガハッ!!」上久保は咳き込み、距離を取らされた。

「喰らえ」吉田が火球を放つ。

「なっ………………!」上久保は焦って刀を持ち直したが、吉田の火球をもろに食らう。

「あつっ、あちっ!!あつぅううぅぅうぅ!!!!!!」体が燃え上がった。吉田は冷酷な目付きで見つめる。

「あぁああぁああぁあぁあああぁあぁぁあぁあぁぁああぁああぁああぁあぁあああぁあぁぁあぁあぁぁあっっっ!!!!!!」上久保は叫びながら地面を転がり回り、火を消した。

「どうだ?まだ抵抗するか?今度は本気で焼き殺すぞ?」吉田は冷酷な声で言う。

「貴様あっ!!!!!!!!!」上久保は吠え、銃を取り出した。

「むっ。」吉田は急いで近くの草むらに伏せた。ほふく前進で移動する。その際、校庭の校門付近で後藤と前道が戦っているのが見えた。戦っているというより、一方的ないじめと言う方が正確かもしれない。後藤が次々と氷の短剣で繰り出す攻撃をくらうか逃げるかのどちらかだ。どうやら霊術の討滅に成功しそうだ。

「死ねぇ!!!」その時上久保が叫び、吉田を撃つ。

「下手くそ。」吉田は草むらでほくそ笑んだ。元々剣術師なのだから銃の扱いに不馴れな事くらい簡単に予想できたことだ。

パン、パン……………………

銃声が止み、吉田は草むらから火球を放った。

「ガハッ、あぁああぁああぁあぁあああぁあぁぁあぁあぁぁああぁああぁああぁあぁあああぁあぁぁあぁあぁぁあぁああぁああぁあぁあああぁあぁぁあぁあぁぁああぁああぁああぁあぁあああぁあぁぁあぁあぁぁあ!!!!!!!!!!!!!」上久保の悲鳴が大きく響いた。


ー駅ー



「大富豪同好会の宿敵?」三次が目を丸くした。

「そう。俺らのやることを芳しく思わない連中がいるってこと。」小橋が駅のベンチに腰掛けながら言った。

「その一味なのか?さっきの奴らは。」

「そ。」

「何て組織なんだ?」

「名前はGGGっていうんだ。………………………知らんよ、そういや何の略だろうな?やつらの体の何処かにGが『森』『品』みたいに3個書いてある刺青があるんだよ。」

「何で大富豪同好会を芳しく思わないの?憎まれるようなことしたとか……………」

「………………3Gも俺らみたいに依頼を受けてそれに応える所謂何でも屋みたいな感じなんだ。だから、依頼が被る時がある。例えば、『AからBを取り返して欲しい。』とCが俺らに依頼したとしよう。それに対して、Aが『CからBを死守して欲しい』との依頼を3Gにしたらどうなります?俺らが戦うことになるよね?そういう訳だよ。」

「だから邪魔な訳…………商売敵みたいなもの…………?」三次が言うと小橋は苦笑した。

「商売にしちゃ、利益が無さすぎですね。高値な依頼は3Gが引き取るから。」

「え?どうして?」

「評判の違いだよ。」

「どういうことだ?何故評判が悪いんだ?安値で解決率の高さは校内でも有名だぜ?」

「ふ、そうか。そりゃありがたい。だが、俺達は何でもかんでも依頼を引き受けるわけじゃない。」小橋は二人を見た。二人が黙っているので、小橋は先を話した。

「俺達は犯罪協力や理不尽な連中の依頼は受け付けない。『誰かを怪我させる』とか『アリバイの証人になってくれ』とかの依頼はシャットアウトです。3Gはそれをも受け入れるんだよ。」

「…………………………………」

「裏金の証拠揉み消しとか、不利な犯罪歴の抹消とか。そういった奴らはいくらでも金を積む。だからこそ、大盤振る舞いもでき、評判も上がるのさ。分かった?」

「………………………………」

「だけど、構わんよ。校内生からは信頼されてるなら助かるし、少なくとも…………」小橋は二人を見た。

「依頼者や協力者はありがたい存在です。」

「あっ………………………」

「クックック…………なかなかくさいぜ、小橋よ。」

「ありがとうよ。」小橋が礼を言った。

「……………ねぇ、小橋君。」

「ん?」

「学校に戻っていい?」

小橋は信じられないという表情をした。

「俺を困らせたいの?会長が逃がせと言ったのに、ノコノコ戻るなんて………」

「ううん、吉田君や後藤君、もちろん小橋君にもおれいが言いたいの。お願いします。」三次が頭を深々と下げた。

海老澤はニヤニヤしながら、小橋を見ている。

「…………ッ、駄目なものは駄目です。頭を上げてください!」

「良いって言うまで上げません!!」三次の声は前道に掴みかかろうとした時の声と一緒だった。小橋は数分粘ったが遂に根負けした。


ー校舎ー


「さあ、最終通告だ。」吉田は上久保の真っ正面に立ち、冷たく言った。上久保はボロクソだった。

「拍子抜けも良いところだ。かつて上久保は僕をかなりの所まで追い詰めた…………今回はどうした?やられっぱなしで反撃もなしか。つくづく哀れな奴め。」吉田が地面にペッと唾を吐いた。

「……………殺すのか?」上久保が憎々しげに顔を上げて唸った。

「なんで、貴様みたいな奴の為に手を汚さなければならないんだ?貴様をどうこうするつもりもない。貴様が女だからといって乱暴する趣味もない。」吉田が言うと、上久保はけたたましく笑いだした。

「アハハハハハ!!!!この人は何言ってんだろね!!手を汚さなければならない?アンタの手は血まみれだよ!今更何を躊躇う?!何人もの不良を陰で本当に殺してきながら、動きの鈍い女一人すら殺せないなんて滑稽!!!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「………………………………」

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」吉田は上久保に迫り、肩を斬った。切り落としてはいない。

「日本刀を握れる日がまた来るといいな。虫けらが。」吉田は上久保の日本刀を鞘にしまい、両手で鉄棒のように握り、膝げりを入れて叩き折った。

「虫けら…………?」

上久保はピクリと反応した。

「貴様のような弱い奴は……………」

「違うな。」

「あ?」

「私が弱くなったんじゃない。アンタが強くなったんだ。」

「………………………………慈悲の乞い方は学んどけ。」

「前に戦った時は、私の打突を受け止める力があんなに強くなかった。」

「………………………………」

「何があった?強くなる要因…………」

「さあな。」吉田は上久保に背を向けた。

「助かるかな?それとも、出血死になるかな…………?」吉田は残酷な笑みを浮かべ立ち去ろうとした。

「待て。」



吉田が止まり、振り返った。

「逃げさせてもらう。」前道が後藤の衝撃をいくつか受けて、血まみれになりながらたっていた。

「……ごっつぁんは?」

「気絶してる。」

「まさか…………!」吉田は先程まで後藤がいた場所を見た。確かに小柄な体が倒れていた。

「貴様、どうやって…………ン?」吉田が空を見上げた。数分の思案のうち、笑いだした。

「ハッハッハ。自爆したか。」吉田は前道を見た。

「霊力を使いきったな?あ?全く気配が感じられないんだが。」

「ちっ。」

「最後の力を振り絞って、ごっつぁんを殺そうとしたな。甘いぜ。そんでなくても弱ったお前が、ごっつぁんを倒す?」

「…………………」

「いいぜいいぜ。逃げれば?討滅に成功した訳だ。なら文句なしだ。貴様らのボスは貴様らを人質に取った所で切り捨てるに決まってんだろ。」吉田がこんなに歓喜に満ちているのを初めて見た二人は校門から歩き去った。

「フ…………さて。」吉田は後藤の所まで歩いていき、後藤の意識を冷まさせた。

「ん??あ、吉田君………しまった、前道は?!」

「討滅に成功した。だから逃がした。」

「……!!!逃がした?!」

「駄目だった??」

「前道は霊力を使いきっんですよね?」

「そ」

「…………………ならいいんですが。」後藤はようやく安心したようだ。

「貴司君~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」 その時、校門から三次が叫びながら走ってくるのが見えた。

「ありゃ?逃げてなかったのか………」吉田は苦笑しながら言った。

「はぁはぁ、怪我は…………ない?」三次が肩で息をしながら言った。

「大丈夫ですよ。どうやら三次さんをつけ狙った奴も滅ぼせたようです。」

「ホント?!すごい!!!」

「さっき前道が上久保を抱き抱えて俺らの脇を素通りしたな。二人とも血のレールこしらえてたな…………」

「小橋、病院行った方がいいんじゃね?出血がひどいぜ。」



「ん。ああ………………行くさ。後で。暫くは………………」

「?」

「?」

「野球が出来ないかも。」

「なっ……………!」海老澤が絶句した。

「お前、クラスマッチはどうするんだよ。」

「ああ、部活の事言ったんだが……………Hmm、そっちも休むようかも。」


「あのなぁ、そんでなくても硬式野球部員がいなくて困ってんのに、軟式野球部員まで休んでどうすんだよ?」

「俺が出ても足手まといになるだけだな。この肩じゃ、打つだけで精一杯だ。」

「まあまあ。」吉田が割って入った。

「これから練習にも参加するさ。小橋だって、クラスマッチまで1週間以上あるんだぜ?」

「本調子には戻らないだろうな。少なくとも、フル出場は危ぶまれるな。」

「サードだっけ?小橋は?」

「そっ。そうだ、海老澤君。サード俺と兼用しよう。」

「……………ああ?」

「怪我した代役はお前だろ?忘れたんじゃないだろうな。」

「スマン、忘れてた!!」

「謝った割には堂々としてるな。」

「そうか?サーセンw」

「テンション高いな。」

「あの~~~~~~」三次がいつまでも雑談している吉田達に向かって言った。

「帰らないの?」

「……………ヤベ。」海老澤はそう言って、携帯を取りだし、電話をかけ始めた。

「どうした?」

「親。」海老澤は短く答えると、電話越しに弁解を始めた。

「三次さんは大丈夫?」

「帰るのいつも9時くらいだから、大丈夫。貴司君達は大丈夫?」

「………………大丈夫ですよ。」

「右に同じです。」

「?……………そう?」後藤と吉田の満足気な顔に曇りが走った気がして、三次は戸惑った。


「ふ~~~やれやれ。もうこんな時間か。」海老澤は携帯をポケットにしまいながら言った。

「親に電話したら、夕食待ってらんないから食ってこいとか言われた。誰か行かないか?」

「フム、ファミレスならおK。」小橋が言った。

「たまには良いかもな。戦勝祝い?」吉田も言う。後藤も頷く。

「う~ん、私も行きたいけど……………ゴメン。」三次が言った。

「っと………そりゃ残念。」海老澤はガックリと肩を落とした。

「一人で大丈夫?」海老澤が粘る。

「うん、今日は皆ありがとう。」

「…………いや、お礼には及びません。まだ奴らは死んだわけじゃないので……」

「ううん、そんなこてじゃないの。」

「…………?」吉田、後藤、小橋、海老澤はそろって首を傾げる。

「誰も相談にのってくれないような事や、警察が無視してしまう事までお世話になって………上手く言い表せないけど、本当にありがとう。」

「フッ、どういたしまして。」吉田がクククと笑った。

「じゃあ、駅までは一緒に行きますか。」後藤はそう言って、立ち止まった。

「荷物を部室に忘れた………!」

「俺もだ!」小橋と後藤が走り出した。

「先、行ってるからな~~~!!」吉田が言うと、海老澤と三次が笑いだした。」

夜の校舎に笑い声が響いた。その笑い声とは裏腹に憎々し気な顔をした男が立って吉田達を見つめていた………………

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