CHAPTER8ー1 開戦、クラスマッチ
初めての感想を頂きました。投稿して下さった方、ありがとうございます。創作意欲が沸々と湧いてきたので、すぐに次話投稿となります(笑)ようやく暑く、夏らしくなってきました。部屋にエアコンをバンバンに効かせて、執筆に励むという、良いんだか、悪いんだか分からない生活を送っています。皆様、これからも大富豪同好会の軌跡をよろしくお願いします。
4月24日。
三次は朝登校すると直ぐ様部室棟へ向かった。
棋道部と書かれた表札を確認しドアをノックした。無言。
「いないかな…………………?」三次はつまらなさそうに、部室の前の壁にもたれた。手には、バスケットがある。
数分後。
「ギリリギリリと軋みながらも、それでもまた再び動き出す♪」こんな声が聞こえてきた。
「何の歌?聞いた事はあるんだが…………」別の声がした。三次は壁から離れた。部室棟の2階に位置する棋道部室に向かって聞きなれた声が階段を上がってきた。
「ポルノグラフィティのシスター。そんなのも知らんの?」吉田が現れた。
「ふむ?三次さん。」
「おはよー!」
「おはようございます。」小橋が吉田の横から現れながら言った。途端に三次が顔をしかめた。二人のジャージは汚れ、汗臭かった。
「何してたの?」
「クラスマッチの野球の練習。肩が思うように動かんし、痛いよ。」小橋が肩を自分で揉みながら言った。
「三次さんは何を?」吉田が聞いた。三次は気を取り直して言った。
「お礼です。クッキー焼いたから、皆で食べてね?」
「ふむ?手作り?」小橋が興味津々で聞いた。
「そうだよ。」
「三次さん……………………」吉田が三次を見つめた。三次は少し赤くなって、目を落とした。
「何か盛ってないでしょうね?」
「!!!!!!なんでそうなるの!!!失礼な!!!」三次は怒りだした。しかし、吉田と小橋はその反応で満足したようだ。
「どうやら、安全なようです。ちょうどいい。三次さん、貴方にお話することがあるので入ってください。」
「………………………………」
「?どうしました?」
「…………………着替えるのに邪魔じゃない?」三次は嫌そうに言った。
「フム?確かに。じゃあ着替え終わるまで…………」
「ちょっと今時間ないの!そう、週番だから!昼休みでいい?」
「…………構いませんが。」
「ありがとう。じゃ!!」三次はそう言うと姿を消した。
「どうしたんだろ?」小橋が言った。
「さっぱり分からん。」
「ハァハァ……………いくら貴司君達でもあの汗臭さは勘弁………」三次はサッと教室に戻った。
ー教室ー1時間後
「小橋の肩が使えない?!あぁ?」
「あぁじゃねえよ。」小林に小橋の負傷を伝えた所、小林はもえだした。吉田が冷たく返す。
「どーすんだよ、誰がサードを守るんだぁ?」
「無駄にドスを利かすな。替えがいるだろ?」吉田は無駄に顔を近づけてきた小林を押し返す。
「う~ん、小橋が守備できないならヤバイぜ。あの完璧な捕球、送球、そして、打撃!!替えはちなみに誰?」
「俺。」そう言って、二人の前の海老澤が振り向いた。とてつもなく眠そうな顔で目は真っ赤だ。1時間目の地理の授業で白玉、立枝といった爆睡常連と共に、海老澤も寝ていた。担任であり地理教師の川北先生は同情なのか憐れみなのか嘲りなのか分からない笑みを浮かべて授業を続行していた。そのせいで女子は涙目、男子は震え、恐怖の授業となった。吉田や小林でさえ、何度も顔を見合わせた。
てな訳で、海老澤は確実に成績に響きそうだが、そんなことは今は些細と、元気に後ろを向いた訳だ。
「よだれ。」
「ぬっ?」吉田に指摘されて海老澤がじゅるりと拭った。
「海老澤か。海老澤クラスマッチは恐らく、スタメン出場になるからな?おK?」
「良いの?おっしゃああぁあああぁあぁああぁぁぁああぁあぁあぁあ!!!!!」
「うるさい。」
「グフッ?!」海老澤が吉田と小林の視界から消えた。
「全く、スタメンになれただけで満足な訳?結果を残さなきゃ、クビよ。」女子バスケ部の黒澤瑞穂が海老澤を殴ったらしい。
「あのな!」海老澤は今度は唇から流れる血を拭きながら言った。
「試合に出ることがどれだけ難しいか分からんのか?男子は26人もいるし、野球はそれに対して何人だ?あぁ?」
「分かった分かった分かった分かった分かった分かった分かった分かった分かった」黒澤は蝿を追い払うかの仕草で言った。
「貴司君は出るの?」隣でやり取りを見て笑っていた蛯原が吉田に聞いた。
「出ますよ?ショートで。」
「へえっ、頑張ってね!」蛯原が優しく笑ったが、吉田は素っ気なく頭を下げただけだ。
「女子はどうなん?優勝行けそうか?」小林は黒澤に向かって言った。
「優勝行けないようなチームいらない。」
「助詞が抜けてるな?焦るなって。ハハハハウグッ?!」茶化した報いに海老澤の鳩尾に黒澤の鉄拳が入った。
「とにかく、負ける気でやるわけないでしょ?やるかには優勝よ。」黒澤は小林に向かってビシッと言った。
「ほう?なるほど。」小林はそれ以降は何も言わず、2時間目の化学の予習を始めた。
ー昼休みの部室ー
三次が部室に行くと、またしても大音量で音楽が流れていた。
しかし、大音量から逃れるように後藤が部室の前の壁にもたれ、携帯をいじっていた。
「後藤君。」呼びかけた。答えない。無理もない。大音量にかきけされて、声なんざ聞こえないのだ。
「後藤君。」三次は後藤の真ん前に出て言った。ようやく通じたらしく、後藤が手をあげ、部室等の壁を叩いた。すると音楽が止んだ。
ガラガラガラーーー!!!
ドアが勢いよく開いた。音楽も止まった。中には吉田しかいない。
「いらっしゃい。どうぞどうぞどうぞどうぞ。」吉田がパイプ椅子を指さし、座るよう言った。
「三次さん、調子はどうですか?」
「はい、大丈夫です。」三次がしっかりと答えた。
「そりゃ良かった。先日、我々を襲った組織を詳しく知りたがっていると、小橋から聞いたのです。」吉田は真向かいに座り、本棚から書類をだした。
「さてさて……………………」吉田が整理してるのに構わず、三次は聞いた。
「あいつは………前道は死んだの?」
「え?まさか。三次さん見なかったんですか?三次さん自身がすれ違ったはずですが。前道と上久保を。」
「見ました……でも………」三次がどもった。
「海老澤君にも、小橋君にも言ったんだけど、私は、前道しか見てないの…………上久保って誰?」
「……………………」吉田が突如立ち上がった。
「何の冗談です?」
「冗談じゃないけど………?」
「……………!まさか………」吉田はそう言ったきり、部室の中を歩き回りだした。不審な顔をしていた後藤も何か物思いに耽っているようだ。
「はぁ、なるほど。」吉田がやがてそう言って、席に戻ってきた。
「こりゃ、驚いた。三次さんが居なければ、とんでもないことになってた。」吉田が笑いだした。
「ハッハッハ、やってくれるなぁ、前道も!」吉田が言った。
「一体何が…………………」
「幻覚だ。」
「は?」
「上久保の事だ。前道が僕らに幻影を見せてたんだ。だからあんなに弱かったんだよ。刀だってあんな簡単に折れたし。ハッハッハ。」吉田が余りにも笑うので三次が不安な顔をした。
「しかし、何で三次さんだけには幻影が見えなかったんでしょう?」
「先日の戦いの前触れとして、屋上や理科室で戦ったろ?その時、霊を目撃………じゃない、接触してないのは、三次さんと小橋だけだ。しかし、小橋は会員だからな?前道と面識が有ったかどうかは知らんが、会員ということですぐマークしたんだろうな?だが、三次さんに幻影のカス…………だから屋上で目撃した霊体や理科室の白衣の男な?それがついてなかったんで、三次さんに幻影を見せられなかったんだろ?幻影を見せるには対象に霊的なものを見せる必要があるから。そういう訳さ。」
「ほぅ?では前道は何故我々に幻影を見せたんですか?それと刀は何処から………?」
「あの弱さに薄々怪しいとは思ってたんだよ。だから、わざわざ鞘に入れてから膝蹴りした…………そしたら簡単に折れた……模造刀だな?霊体と同じ仕組みだから、刀を持てた。意識によって対象を操作してたから、小橋と戦った時は善戦してたが、目を離した途端、つまり僕と戦った時は弱かったわけだ。わざわざ上久保を見せて殺したように見せかけるのが魂胆だ。ごっつぁんが気絶した時点で霊力は使い果たしたわけだ。」
「はぁ…………やっぱり前道の単独行動か…………」
「当たり前だな?突如、上久保が出るなんて余りにもあり得ないことだからな。」
「上久保って人はじゃあ偽者……実在する人でもあるの?」
「実在します。だが昨日のは………言わば映像みたいなもの?です。考えてみりゃ、銃を使うことも怪しいな。」吉田が笑った。
「ねえ、もっとその組織について教えて?」
「相手組織の話は前しましたよ?詳しく話すのはこれからですが。」
「3Gだっけ?それって何の略?」三次がこう聞くと、吉田と後藤が笑いだした。
「これが笑えるんですよ。前にも言ったけど、正式名は『ゲシュペント・ガイスト・ビューロー』ドイツ語で『幽霊事務所』の意味なんですが、頭文字はGGBなんですよ。それをバカにして我々がGGGって言ってたら向こうが採用したんですよ!逆輸入っつやつ?ハハハハ!」吉田と後藤は少ししなければ笑いが止まりそうにない雰囲気だ。 「では、組織の詳しい内容を……………」そう言って吉田は書類を捲った。
「『前道一成』こいつは霊術師。霊や霊体さらには幻覚を見せて相手を惑わす野郎だ。まぁ会ったんだから分かるよね?『上久保雅美』剣術師と呼ばれる女だ。主に棍術が得意だ。容姿は、昨日前道が見せたやつと一緒。」
「他にもいるの?」
「そりゃもう、たんまりと。」後藤が皮肉った。
「 『清水弘宣』感術師。人の感情を操作できる…………過去の嫌な思い出を思い出させたり、心が読めたり……いやぁ、便利だ。」
「会った事あるの?」
「いや、ないです。この書類はごっつぁんが本拠地のR高校に忍び込んで調べた事ですから。よく生きてたな?」
「他人事ですか。」
「『塙圭吾』獣術師。一般動物から空想動物までをも作り出し操るとな?マジ?ごっつぁん。」
「はい。」
「ふーん。」
「空想動物なんて作れるの?」三次が聞くと吉田が思案顔になった。
「どうですかね?合成獣なら記録がないわけじゃないですが…………まぁ、普通に考えれば、空想動物を作るには体力が相当必要そうですがね。」
吉田は使い終わった書類をトントンと机で叩いて揃えた。
「『橋本千尋』造術師。この女とは接触済みですね?物に命を吹き込むという反則技の持ち主ですよ?果たしてどういう理論なのか?」
「え?理論とかあるの?」
「そりゃそうですよ。魔法使いじゃないんですから。必ず科学的根拠はあります。」
「じゃ、貴司君達も?」 「当然です。今は説明を…………」
「あ、ごめんなさい。」
「いえいえ………前回は僕と小橋が対峙しました。勝ったかな?けど逃げられました。」
「逃がしたんですか。」
「車輪のついた椅子に命を吹き込んで猛スピードで逃げた。」
「なるほど。」後藤は妙に納得したようだ。
「『脇田尚樹』闇術師。暗闇の空間を自由に作り出し、あとは体術。以上。」
「いつになく早いね。」
「フム、3Gの中では最弱と書いてある…………マジ?」吉田が聞くと後藤が頷いた。
「『中鶴武人』水術師…………か。」不穏な空気が現れた。吉田と後藤から表情というものが消えたのだ。
「この人とも接触済み………?」
「……………………接触済みです。対峙しました。そして…………」
「負けたんですよ、わたくし達が。」後藤は自分と吉田を親指と小指で器用に指しながら言った。
「相性と言えば聞こえはいいですが、単なる言い訳です。あの時、小橋が来なかったら……………」吉田が言葉を切った。ひどく重い空気が流れた。
「これで全員?」
「いや、この7人の上に上司的存在が3人いますが、特殊能力も分からなければ、名前や容姿すら分かりません。だからこれ以上はもう何もするべきことはありません。」吉田が書類を片付け始めた。
「貴司君は何の術師なの?」
「…………知ってて聞いてません?」吉田が聞くと、三次が悪戯っぽく笑った。
「火術ですね?ごっつぁんは氷術、小橋緑術…………ってみんな見たでしょう?」
「3人だけ?」
「んな訳ないでしょう。他にもいますが、言えません。」
「どうして?」拗ねたような声を出した。
「ククク、三次さんが相手に捕らわれて拷問された時に話させないためです。」吉田がクククと笑った。
「……………………………はい。」三次が頷く。
カーンカーンカーン。と鐘が鳴り、吉田達は部室を出た。
「そんな奴等を相手をしとたなんて知らなかった。すごいね?」
「フッ、そうですか?ありがとうございます。ああ、そうだ。」
吉田がクククとまた笑った。
「困ってる人を見かけたら、我々を紹介して下さい。少しは稼ぎがないと…………………」
「?」
「我々もやってられませんから。」吉田は自嘲的な笑みを浮かべた。しかし、三次は力強く頷いた。




