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第7章 誘拐2

ガタン。電車が止まり、無表情なニアと真っ青な顔の金子が乗車してきた。金子は冷たい目で携帯をいじる吉田、ふんぞりがえる小林を見た。萩谷を見ると驚いた顔になった。

「ニア、助っ人だ。同じクラスの小林に、中学校時代の3強の1人の萩谷だ。」吉田が言った。 電車のドアが閉まり、動き出した。

「そうですか。後藤です。電話での盗聴対策にニアと電話では呼ばれています。吉田の1年の時に同じクラスだったものです。」後藤はそう言うと、手を出した。

小林も萩谷も慌てて握手し、自己紹介した。態度が悪いが、口調は実に落ち着いた、丁寧なものだった。


「俺が金子です。小林君と吉田と同じクラスです。」

「小林がよく話してくれましたよ、君の事を。バスケをやらせたら、ピカ一だとか。」

萩谷は金子と握手しながら温かく言った。金子は僅かに青ざめた顔を赤くした。 「そんな………それより同じバスケ部の瑞穂が服部たちに誘拐されてしまった。何のために………」

「陵辱目的か?」金子の質問に最悪なパターンの答えを萩谷が言った。

「ない、ない。」小林が手を振りながら言った。

「何でそう言える?」萩谷が少しムキになった

。

「考えて見ろよ。陵辱してる場を見られそうな事をするか?わざわざ場所まで指定するなんて。これは俺達を誘き寄せるための餌さ。」

小林が答えた。吉田と後藤が頷いた。

「…………誘き寄せてどうする?殺すのか?」萩谷が言った。

「それもあるが、俺達を学校に乗り込む事を見込んでるんだ。恐らく、校舎に不法侵入するところを、現行犯逮捕………いい忘れてたけど今日は創立記念日なんだ。」小林が萩谷を見ながら言った。

「………現行犯逮捕って………退学じゃないのか?お前らそんなに『悪』なのか?」萩谷が呆れたように言った。

「もちろんだ。」吉田が誇らしげに言った。

「流石は鉄面皮だな。もし、俺らが来なかったら奴らはどうするんだ?」

「彼女だけを不法侵入として、警察につき出すんだ。それは言ってた。」金子がげっそりと言った。 「証拠がでっち上げじゃないか。警察は………」萩谷が言い出したが、吉田が手を振って制止した。

「萩谷にゃ分かっちゃいないさ。警察とは名ばかり。実際は防衛大学付属高校なんだから、警察学校とグルなのさ。それに、こっちが学校の規則を破ってるのは事実だしな。」

吉田が言った。萩谷は納得したように言った。

「分かった………達也や吉田の危機管理の凄さの事だ。恐らく、写真やビデオと言った確実な証拠が無いんだろ。現行犯以外ない訳か。」

「そうだ。恐らく、俺達を捕まえれば、退学は勿論、もしかしたらムショに送れるかもしれないんだ。そして、自分は県内トップ校を浄化したと称えられるのさ。だが………」小林が言っている途中で金子の携帯が鳴った。

♪〜〜〜〜

「電車はマナーモードが基本だぜ。人様に迷惑だぞ。」吉田が金子に冷たい目線を向けながら言った。

「わ………悪い。知らない電話番号だ。服部達か?」

プチ。

金子が電話にでた。

「もしもし。」

「もしもし、服部だ。金子か?」

「服部………瑞穂は無事か?」

「無事だ。彼女を助けに来ないのか?」

「今、行くからな………瑞穂は関係ない。俺が身代わりになるから解放してくれ。」

「………今、何処にいるんだ?早くしないと、管理人に見つかっちまうぜ。」服部はたんたんと言った。

「元はと………」金子が言い出したそのとたんに、吉田が携帯をもぎ取り、電源を落とした。そして小林に投げると、小林は素早く携帯を黒い箱に入れた。

「何すんだよ!!!」金子が激怒した。

「馬鹿!!逆探されてるんだよ。何で、金子に電話をしてきたかと言うとだな、この場で逆探が出来る携帯は金子のだけだからだ。奴らは、金子が手助けを求めるであろう人をよんでるな。」

「逆探知?」小林が何時になく必死なので、金子が狼狽した。

「ああ。でも電車の中だと気付いてしまっただろ。幸い、たくさん話してたら30近く経ったからもう着くけどな………」

「スピードが落ち始めましたね。」

小林の言ったように、電車はホームに入り始めた。窓から見ていた後藤がそれを認めた。 ガタン。それから間もなく、電車が停車した。

5人は一斉に降りた。萩谷は追加料金を払わなければならなかったので、時間がかかった。


「待ってくれーーー」萩谷は吉田達を追いながら言った。吉田達は友達と一緒でなければトイレにいけないような馬鹿共とは違うので萩谷を待つような優しい事は決してしなかった。


「学校はここからどれくらいだ?」萩谷が言った。

「10分かからんぞ。」

「吉田は大股はや歩きだからな。萩谷の歩行速度なら15分くらいだな。」吉田の発言を退けながら、小林が言った。




15分後…………


「ここが達也達の学校か。暗くてよく見えんが。今何時だ?」

「………5時50分だ。」携帯を取り出しながら金子が言った。

「その女子は何処にいるんだ?」萩谷が言った。

「さあ………とりあえず昇降口まで行きましょう。」 後藤がそう言った時、目の前に突如、縛られた女子を連れた、背の高い黒いマントを被った男子が現れた。

「来たか。それで全員か?」声が言った。

「そうだ。瑞穂を早く放してくれ。」金子が呻くように言った。

「約束だ。放してやれ。」また新たなマントを被った男子が現れた。声から服部だと分かった。

「ああ。」最初の男が、マントを脱ぎながら言った。しかしどういう訳か、その男は昇降口のドアを開け、縛られた女子をほどき、猿轡を取りながら、突き飛ばして、中に入れた。

「さあ、どうぞ。」服部はニヤニヤしながら言った。

金子は迷わず歩き出した。しかし、小林がその手を掴んで止めた。

「待て。罠かもしれない。」小林が言った。

「そんなことないぜ。ありゃ本物の黒澤さんだ。」吉田が、探知機のような物を倒れたままの女子に向けて言った。

「そうだ。罠なんかじゃないぜ。少なくとも今お前達を傷つけるような事はしない。」服部は落ち着いて言った。

「……………」小林はまだ何かを考えるようだ。

「俺達が何かすると思うなら、そうだな、下がっていよう。石田!!」 「あいよ。」石田と呼ばれた男子が昇降口から離れた。

「…………貴司、あいつらから目を離すな………バラバラになると危険だ。全員で行こう。」小林が言った。


全員が歩き出したが、服部達は何もしない。

後藤がふと気付いて小声で言った。

「なんか、服部達は無理に笑ってません?何か体が震えているようにみえるんですが………何かに怯えてるように。」吉田は後藤の言葉を聞いて、二人を見た。確かに張り付いたような笑顔だ。恐怖を無理矢理押さえつけるかのようだ。


ついに、一行は黒澤のもとに着いた。金子がかがんで、脈をとった。異常はない。

小林が金属探知機を出し、爆弾等が仕掛けられていないか、確かめたが、何もない。 「よし、大丈夫。気を失っているだけだな。」金子が黒澤を抱き抱えようとしたが、気絶した黒澤は普通より遥かに重く、出来なかった。

「俺で良ければ。」長身の萩谷が進み出た。やっと事件に関われた、というような表情だ。

「ああ、頼む。」金子が言った。


ガシャン!!!!

凄まじい速さでドアが閉まった。


「?!なんだ、何のつもりだ?」

金子が叫んだ。

「ク………これは、もしや?」小林がガラスを割ろうとして止めた。いや、そのまま倒れた。


「小林!!!どうし………」吉田がいいかけで同じように倒れた。

バタバタ。何かが倒れる音がした。外の転校生二人も倒れていた。

後藤が、ナイフを取りだし、ガラスに叩きつけた。しかしガラスはびくともしない。萩谷、後藤が倒れ残った金子もあっという間に倒れた。

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