表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/421

第76話 第四の殺人未遂――王子の証言(その2)

またしても日を跨いでの更新となり、申し訳ありません。

 淀みなく長い証言を終えた王子。その姿に酒挽(さけひき)は、背筋がぞくりとした。

 通常であれば、拍手を贈りたくなるその感覚は、役者「酒挽当利」が感動したことを示していた。

 だが、ここは法廷。

 決して演技力に感動をして良い場所ではない。

 王子は、政治家だ。本心をすんなりと他人に見せるほど、単純でも素直でもないだろう。


「お尋ねしますが、王子は独りで森にいたのですか?」


「そうだ」


「何のために?」


「領内の視察だ」


「王子が自ら領内の視察を単独で行うのは、普通に行われているのですか?」


「そんなことはない。あくまでも今回はイレギュラーだった」


 まぁ、そうでなければ色々とおかしい。

 もし王子が頻繁に単独で領内を視察しているのなら、暗くなるまで森に留まっているはずはないし、仮にその言葉が真実だとするのなら、小人の証言と矛盾してしまう。

 最年長の小人が検察側の反対尋問の際に「来訪する者もほとんどいない。泊まる者は皆無だった」から「寝具は小人の数だけしかない」と証言している以上、小人の家に王子が来訪することは、それまでなかったはず。

 だから、証言は正しいわけなのだが……。


「イレギュラーとは、一体何があったのですか?」


「弁護人」


 テールが予想外のタイミングで口を挟んでくる。


「申し訳ありませんが、その点については、証人の国の防衛上の問題があるため、裁判記録に残る形での証言は不可能です。必要とあらば、法廷外で当職が説明しますが、本件審理の内容に直接関係のある話ではない、ということだけ補足いたします」


 異議、というよりも、察しろ、ということらしい。

 これは本当に、家来とはぐれて森の中で迷子になった説が有力だ。国境にほど近い森に、王子は視察にきて迷子になってしまう可能性があるという情報が、国家転覆を狙うグループの耳に入ろうものなら、待ち伏せの上、暗殺、なんてことが起こり得る。


「では……次の質問です。その時の王子は、白雪姫との面識はありましたか?」


「なかった。もちろん、何かしらの会合や国際会議がなされた際に見たことはあるかもしれないが、覚えてはいない」


「噂で聞いたことは……?」


「それもないな」


 面識はない。

 だが、魔法の鏡をして「世の中で一番美しい」と言わしめた白雪姫、王子が一目惚れするのも、わからないわけではなかった。

 もっとも、棺に入って3か月を経過しても、なお瑞々しい死体を、すんなりと受け入れてしまう王子のメンタルの強さを褒めるべきなのか、何事にも動じない鈍感さを称賛すべきなのか、酒挽には判断のつけようがなかった。


「あなたは、棺に入っている白雪姫を、小人からお金で購入しようとしましたが、どういうつもりだったんですか?」


「白雪姫が美しかった。だから()()()()にしたかった。当然、金銭補償は必要だろう。ガラスの棺もタダではない」


 つまり王子が金銭の話を持ち出したときは、あくまでも()()()()()()()()()()()()()()を欲したことになる。

 小人も、物扱いする王子に引き渡すつもりはなかったから、断ったのだろう。


「では、なぜその後『ください』と無償での譲渡を依頼したのですか?」


「彼女が物ではないことに、気が付いたからだ」


 王子は、()()()()()()()()()()()()()()を欲しいと考え、金を積んだ。

 しかし、小人に拒絶された。そして、王子自身も自分の提案に違和感を覚えた。

 だから、()()()()()()()()()()を、()()()譲って欲しいと願った。

 それを王子は、先程の証言で「恋に落ちた」と表現した。


「そして、王子の城から人がやって来た、と」


「ちょうど良い具合にな。夜も明けたし、すぐに棺を城へと運ばせた」


 ということは、王子と小人の「譲れ」「譲らない」の攻防は、一晩中行われていたのか。

 なんだか、迷子になった王子を家来が探している間に、家の外まで漏れていた小人と王子の激しい言葉の応酬を聞きつけて、王子を発見! というのが、真相のような気がしてならない。


「人数は?」


「12名だ。棺を3交代で城まで運ばせた」


 人数的にも、小人との証言に矛盾はない。

 ――ないのだが、酒挽はどうにも釈然としなかった。


 ……本当に、偶然なのか?


 王子の証言は、あくまでも偶然により成り立っている。

 森で時間がなくなったせいで、一晩泊まるため小人の家を訪問したところ、白雪姫の死体を発見した。

 王子は小人を夜通し説得した。

 話がまとまり、白雪姫を譲り受けた王子は、ちょうどよく小人の家に来た家来たちに棺を運ばせる。

 運搬のための人員は12名。3交代可能な数。


 物語である以上、偶然という必然でストーリーを展開する必要性も出てくる。

 そう、審理の対象となっているのは、あくまでも「童話」。物語なのだ。

 偶然が重なったところに、物語としての必然が存在する。

 酒挽は理香の言葉を思い出す。


 ――王子は無能だったわけではなく、検察側と組んで、姫を敢えて有罪にするよう仕向けた可能性がある。


 先程、テールが酒挽の質問に介入してきた。「証人の国の防衛上の問題」という理由をつけて、王子に証言をさせなかった件。

 王子とテールが手を組んでいる、一つの証左ではないのか。

 もしそうだとしたら……。

 酒挽は、幼馴染の分析能力に、ただただ、舌を巻くしかなかった。

さらに申し訳ないことに、明日、明後日は都合により更新ができません。

次回更新は、土曜日夜になる見込みです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ