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第68話 第四の殺人未遂――小人の証言(その1)

 物証の提示もなく、白雪姫の証言で検察側から指摘されたことを改めて問い合わせる必要もなし。

 酒挽(さかびき)は、白雪姫への反証を見送った。


「では次に小人で……一番痩せている者に証言を求めます」


 白雪姫が消えた後の証言台だったが、光が差すことはなかった。


「訂正するのです。小人で最もBMIが低い者に証言を求めるのです」


 キイナが言い直すと、光が現れた。


「どういうこと!?」


「『痩せている』では定義が曖昧なのです。なので、数値換算できる基準を提示したのです」


 小人を召喚すれば全員来るくせに、料理人はピンポイントで一人だけ召喚される。厳しいのか緩いのかいい加減なのか。童話裁判所の召喚はよくわからない。

 証言台に現れた小人は、少しほっそりとしているが、痩せているという感じではない。が、BMIを基準に召喚されたのは間違いないのだろう。


「……その基準で召喚できるってことは、健康診断でもやっているのかよ」


「物語に絶対値が書かれていないだけで、登場人物のステータスはキッチリと設定されているのですよ」


 身長や体重は、裏できちんと決められているらしい。


「証人、名前は」


 裁判長がいつのも質問を行う。


「小人」


「証人は、7人の小人の中で『BMIが最も低い者』として召喚されましたが、相違ありませんか?」


「……BMI?」


 本人は把握していないらしい。

 テールが手を挙げる。


「証人のステータス上、7人の小人の内で確かに最もBMIが低い者です」


 そして、検察は何でも把握している。極めて優秀だと認めざるを得ない。


「分かりました。では、証人、職業は?」


「鉱山で石を掘ってる」


「所属世界は?」


「童話『白雪姫』」


「それでは弁護人、尋問を」


 最年長の小人は、ここまでの間でも余計な話を挟んできたが、この小人は必要なことしか話さないようだ。こちらから色々と聞きださないといけないかもしれないな、と酒挽は質問の内容を頭の中で整理する。

 聞くべき内容は、白雪姫がりんごを食べて倒れた後の話だ。


「では、小人さん。白雪姫がりんごを食べて倒れていたところを発見した時のことについて証言してください」


「りんご?」


「白雪姫は、胸ひもと櫛で倒れた、その次の時の話です」


 小人はしばし考え込む。よくよく考えてみれば、小人はこの時、結局白雪姫の意識を取り戻すことができなかった。何が原因で倒れているのかを認識していないのかもしれない。


「ああ、あの時の話」


 何とか話が通じたようだ。小人は証言を始める。


「夕方頃家に着いてドアをノックしたんだけど、白雪姫は出てこなかった。窓が開いているから中にいるはずだったけど、ドアには鍵がかかっていた。だから、鍵を開けて中に入ったら、白雪姫が窓際で倒れていた。

 で、前やったみたいに、胸ひもを解いたり、髪に何か刺さってないか見たけど、何もなかった。

 何をしても白雪姫は生き返らなかった。白雪姫は死んだんだ。

 そのままにもしておけないから、白雪姫が入れる棺を用意して、棺台の上に乗せてから、白雪姫の死体を棺に入れた。

 皆泣いた。3日間、仕事にもいかずに、皆棺の周りに座って泣き続けた。

 でも、いつまでもそうしてはいられないから、埋葬しようってことになった。

 でも、白雪姫は全然死体に見えなかった。頬は赤いし、肌もみずみずしいまま。

 だから、ガラスの棺を作ってもらって、そこに白雪姫を寝かせた。上に金色で白雪姫の名前と出自を書いた。

 そして毎日誰か一人が残って白雪姫を見守った。

 白雪姫はいつまでも目を覚まさなかったけど、まるで眠っているみたいだった。死体なら腐って当たり前なのに、それもなかった。何か月過ぎても、そのままだった。

 どれぐらい経った後だったか、王子が家に泊まりに来た。

 部屋に入ると、棺を見つけて、しばらく白雪姫の事を見つめてた。

 そして徐に言ったんだ。『この死体を売って欲しい』って。

 僕たちは、断った。いくら沢山のお金を積まれたって売るわけにはいかないって、行ったんだ。

 そうしたら王子は『じゃあください』なんて言い出した。そして必死に訴えてきたんだ。『彼女を見ずには最早生きていけない。この世で一番愛おしいものとして大切にするから』って。

 あまりにも必死な訴えに、可哀想になって結局白雪姫を棺ごとあげた。

 王子は家来をたくさん呼び寄せて、棺を運んで行ったよ。馬車に乗せることなく、人の手で、丁寧に運んで行くのを見て、大切にしてくれるんだと思った。王子に渡して正解だったかも、なんて皆で話をしたよ」


 寡黙かと思ったらとんでもなく饒舌だった。さすが7人の小人の一端を担う者だ。

 白雪姫が倒れてから、王子がお持ち帰りをするところまで一気に証言してくれた。

 それにしても違和感しかない。

 王子は最初白雪姫の死体を()()()()()()と小人に申し出たという。そして断られると、()()()()()、と言ってきた。

 最終的には情に訴えて白雪姫の死体をゲットしたことになるわけだが……金で買おうとしたなんて証言を聞くと、いよいよ理香が懸念したことが本物のような気が、酒挽にはしていた。

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