第4話 キイナの目的
「でもさっきお前『異世界から来た』って……」
「状況証拠は揃っているからな。電話でも話したが、現れたとき、彼女は全裸だった。外から侵入してくるには余りにも目立ちすぎる。その上、銀髪、ウサ耳だ。しかし、事実、密室状態のこの部屋にキイナは忽然と現れたのだ……もっとも、信じるに足る証拠は見せてもらった」
理香はそこで一つ、ため息を挟んだ。目線を落とし、言葉を続ける。
「だが、ボクだけでは、確認ができなかったのだ」
「理香だけじゃ確認できないって、どういうこと?」
「キイナ。頼む」
「はいです」
キイナは座ったまま片腕を正面に向け真っ直ぐ伸ばす。掌をしっかりと開いた彼女は、伸ばした腕の先を見据えた。
何もない空間。
だが、次第に景色が歪んできた。ブンという音が一瞬響くと、そこに、忽然と物が現れた。
木製の玄関扉。
「まるで未来から来た特定意志薄弱○○監視指導員の資格を持つMS‐903型ロボットがお腹のポケットから取り出した代物のようだろう?」
「マニアックすぎて誰にもわからんわ!!」
たまらず酒挽は突っ込む。
「確かに日本の国民的アニメに出てくる代表的な秘密道具に類似していますが、これは違うのです」
「君もあっさり切り返してるんじゃねぇ!」
そこに脊髄反射的に反応した酒挽自身も、十分マニアックであることに異論はないだろう。
そんな些細なボケと突っ込みはともかく、事実として三人の前には扉が現れた。だが奇妙なのは、扉にドアノブも取っ手もついていないことだ。
「私は『童話世界』と『人間界』を繋ぐ扉を作ることができるのです。でも、この扉は『人間界』から押すことでしか開けられないのです」
「現れた扉を開けてみたら、キイナが飛び出してきたのだ」
突っ込みをスルーされたことはともかくとして、酒挽は納得した。
こちら側からしか開けることのできない扉。向こう側に行くことはできても、こちら側で扉を開けてくれる人がいなければ帰ってくることができない。
「じゃあ、俺か理香のどっちかが残っていれば、確認できるわけだ」
「まぁ、そうなのだがな」
理香はちらりとキイナを見る。キイナが言葉を引き継いだ。
「童話世界に来て欲しいのは、トーリなのです」
「何で?」
「私が人間界に来た理由が、童話『白雪姫』の事を覚えている人を探すためだからなのです」
「……『白雪姫』?」
まさか、その固有名詞をこの場で聞くことになるとは思わなかった。
今日の――いや、もう午前0時を回っているから、昨日となる放課後、酒挽は理香との間でちょっとした意見の相違があった事件を思い出す。
「はい。『童話裁判』に負けて、人間界から抹消されてしまった童話『白雪姫』を助けて欲しいのです」
やっと目的までたどり着きました。




