第36話 第三の殺人未遂――疑惑の物証
2020/01/22 誤字を訂正(「間違いなののです」→「間違いないのです」)
「物証がある?」
キイナの説明に、理香が思わず聞き返す。
「なのです。櫛については、ちゃんと検察側の証拠として提出されているのですよ」
場所は理香の家。部活が終わって3人がいつものとおり集まっている。
キイナは制服姿のままだが、理香はタンクトップにショートパンツという出で立ち、酒挽はポロシャツにチノパンだ。
理香だけがラフな格好なのは、他の二人がこれから裁判に臨むからだ。
「胸ひもの時は、小人は捨ててしまっていたのだろう? なぜ櫛は取ってあるのだ?」
この裁判は『白雪姫が自分の結婚式の時に王妃を殺害した』という嫌疑で行われている。
そのため、証拠の収集は、白雪姫と王子の結婚式以降に行われているはずだ。
胸ひもは、切断して廃棄した、というのは分からなくもない。
だが、なぜ櫛は小人が捨てなかったのかがよくわからない。
「多分、毒が原因だと思うのです。小人の証言が多すぎて、なぜ、という点についての証言は確認できなかったのですが、証拠品として裁判所に提出されていることは間違いないのです」
その辺は、証言を求めた方が手っ取り早そうだ。
「あと、毒なのですが、簡単に言うと蜂の毒の成分が櫛に塗られていたようなのです」
「……それはまた、随分と手の込んだ事をしているな」
理香が呆れたように呟く。
「どういうことだ?」
「恐らく、アナフィラキシーショックを姫は起こしたのだと思う」
「アナフィラキシーショック?」
「アレルギーを起こす原因物質によるアレルギー反応の事だ。蕁麻疹が出たり、呼吸が苦しくなったり、場合によっては血圧低下、意識障害を起こし、命を落とすこともある。
もっとも、蜂の毒で必ずしも起るわけでもなく、それ以外の場合、例えば、食べ物によっても引き起こされる可能性がある。
いずれにしても、アレルギー反応が起こることが前提の手段だな」
「それはつまり、白雪姫は蜂の毒に反応して、そういった症状を起こすと知っていたということになるのです?」
「そういうことになるが……ならば、なぜ物証が残っている?」
理香は腕組みをして首を傾げる。
「どういうことだ?」
「アナフィラキシーショックなら、蜂に刺されたことにすればそれでお終いのものだ。櫛が残っていなければ、事故死で処理できる」
なのに、櫛が現場に残っている。
もっとも、実行犯は王妃なので、原因を聞き出すことはできない。
「どうにも釈然としないな……少し注意深く証言を確認した方がいいかもしれないぞ、当利」




