表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/421

第20話 狩人の証言

なんとか間に合いました。

でも、まだ裁判には突入できませんでした。

なかなか進まず申し訳ありません。

〈2019-4-21〉ふりがなの設定がおかしかったので訂正しました。

〈2019-4-23〉分かりにくい言い回しを一部訂正しました。

 夜、理香から「今から電話してもいいだろうか?」とメールが来たので、酒挽(さかびき)から電話をかけてみる。

 呼び出し音が何度か続き、程なく理香が出る。


「ボクの方に用件があるのだから、ボクからかけるのが筋だと思うのだが」


「いや、俺も用があったし」


「そうか、ならば致し方ない。先にボクの用件を伝えていいだろうか」


「ああ」


「明日、迎えに行くから、一緒に登校して欲しい。キイナも一緒だ」


「わかった」


 そんなこと、メールで十分な気がするが「頼みごとをするなら、せめて直接電話するのが筋だろう」というのが、理香なのである。


「あれ、キイナは理香の家にいるのか?」


「いや、童話世界にいるはずだが……ああ、そういうことか。朝はボクの部屋に扉を開いて、一緒に通うことになった」


 酒挽の質問の本質を読み取った理香が、先回りして回答してくる。


「じゃあ、夜は童話世界にいるわけか」


「そうだ。しかし、向こうの世界とは通信手段がないからな。タイミングを誤ると、ラッキースケベ的なイベントが発生しないとも限らん」


 その点、同性の理香なら問題ない、というのが結論らしい。


「理香のあの行動を見ると、問題大ありのように思うけどな」


「異世界人を認識するために胸を揉みしだいたことか? 別段、性的な目的なぞないぞ?」


『あの行動』だけで、酒挽の言わんとした『問題行動』が何かを正確に言い当てている時点で、自覚ありと白状しているようなものだろうに。


「そう言えば、昨日はどうやってこっちに来たんだ? 学校まで来てるし」


 キイナは昨日、唐突に転校してきた。それも午後に急遽だ。理香は学校にいたわけで、童話世界からの扉を開くことができなかったはずだ。


「文部科学省の役人と一緒だったそうだ」


 急な転校手続きを、一切の必要書類なしに行うため、国が身元を保証する事で話を進めたらしい。

 国家権力が介在しなければ、常識外の転校手続きなど不可能だ。理香が以前に、言及したことを思い出す。


「一応、キイナには国家権力の介入がないよう『お・ね・が・い』はしてある」


「……その程度で、国がどうこうできるものかね」


「国は、『異世界』の存在を認知し、『異世界人』との交流を既に行っている。それを、一切主権者たる国民に公表することなく、だ。投票でその地位を得ることができる議員どもや、自ら責任を取ることを嫌う役人どもは、勝手に公開されることを、何より恐れるだろうな」


「それ脅しだろ! 何、国に喧嘩売ってるのさ!?」


「売ってなどいないさ。国が関与する異世界人の面倒をボクたちが見ているのだ。ボクたちの身をキイナが案じていたのでな。交渉材料を提供したに過ぎない」


 実際、キイナは上手に交渉したらしい。理香のところに、文化庁の役人が直接電話をかけてきたという。「キイナをよろしく」と。


「それ、上手くやったんじゃなくて、理香が背後でキイナを操っていると思われているだけじゃないか?」


「そう思い込んでくれれば好都合だ。余計にボクたちに迂闊に手を出せまい」


 荒立てなくてもいい事を荒事にしているようにしか思えない。


「して、当利の用件とは何だ?」


「いや、一つ確認しておきたいことがあって」


「何だ?」


「理香は、どうしてキイナに『狩人の証言の有無』を確認したんだ?」


「狩人は証言をしていないと思ったからだ」


「なぜ?」


「理由は簡単だ。狩人は()()()()()()()()()()だ」




 そして翌朝、予告どおり理香とキイナが酒挽(さかびき)の家に迎えに来た。


「理香は本当にすごいのです。狩人は証言していなかったのですよ!」


 そして会うなり、キイナは目を輝かせて酒挽に訴えたのだ。


「一体どういうことだ?」


 昨日の電話では『キイナが裁判記録を確認してからだ』と言って、詳細な答えをはぐらかしていた。

 確証を得たことで、きちんと説明してくれるはずだ。


「狩人が姫を森に連れ出したのは、『森の姫君』と同じ内容だ。ならば、王妃は、狩人に姫を森に連れて行き、殺害するよう命じたはずだ」


 しかし、狩人はそうしなかった。白雪姫を逃がしたのだ。


「そして王妃は、姫が死んでいないことを知る。魔法の鏡に問いかけることによってな。殺したいほど姫の美貌に嫉妬している王妃が、自分の命令に背いた狩人を、生かしておくと思うか?」


「だから、証言台に立てなかった……既に、殺されていたから」


「……というのが、昨日のボクの推論だ」


 そして、裏付けのため、キイナに裁判記録を確認させた。

 童話裁判では、証人は強制召喚。拒否はできない。

 なのに、狩人は証言台に立たなかった、という事実を得た。


「さて、これで検察側が、第一の姫殺人未遂事件で奇妙な表現を使った理由が分かった」


「奇妙な表現?」


「『白雪姫が狩人に森へと連れて行かれた』と言った件だ」


 確かに、森に連れて行かれただけでは、殺人未遂にはなり得ない。


「確かにおかしかったのです。正確には『一度目は、白雪姫が狩人に森へと連れて行かれた時です』と言ったのです」


 その時酒挽は、テールの『自分の命を4度も狙ったはずの相手』という言葉に上手く誘導され、自分が知っている話と結合し、白雪姫が狩人に殺されかけた、という事実を作り上げてしまっていた。


「つまり、検察側としては『姫が狩人に森に連れて行かれた』という事実は認めているが、『殺されかけた』は、認めていないことになる……ようやく確証が持てた」


 確かにテールは「被告人は、これら4件を全て王妃によるものだと主張しております」と言った。

 理香の言うように、検察側は、王妃による殺人未遂事件自体を認めていないのだ。


「姫が王妃を殺害する動機としての位置づけで、4つの殺人未遂事件は取り扱われているに過ぎない。こちらとしては、姫から正確な証言を引き出すしかあるまい」


「……そうか。1番目の事件だけ、実行は狩人で、残りの3件は王妃自身が実行しているからか」


 理香は頷く。


「実行犯が既に存在しないのだ。姫にできる限り正確に思い出してもらい、その証言を裏付ける証人の存在を何とか引き出す必要がある」


「それで、脇役、か」


「そうだ。ありとあらゆる脇役を確認し、事件に関わっていそうな人物の証言を集める」


 それが、朝の作戦会議。

 学校にいる間、キイナはやたらと酒挽の近くにいたがった。

 キイナ曰く『異世界人だとバレないよう、フォローをお願いするのです』。

 それがまた、同級生男子からの反発を招いたのであった。

と言うわけで、いよいよ次回から本格審理の開始です!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ