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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第七章 幼女と前世の影
186/812

186 幼女、決意する

『あらら、いつの間にか仲良しだ』

 呆れたように、端末の中のクルミが腕を組んで苦笑した。

 そんなクルミに背後から声が掛かかる。

『クルミ、ちょっといいかな?』

『あ、あおい』

 画面の中でクルミが振り返ると、その背にはあおいの姿があった。

 その名前に敏感に反応した月奈が、同じく画面を見ていた穂乃香に視線を向ける。

「うん、そう、あの人が、プリッチの監督さんをしてる、藤倉あおいさん」

 穂乃香が名前を出したのをきっかけに、あおいがクルミと場所を変わって、気さくに手を上げて見せた。

『やあやあ、君が月奈ちゃんだね』

「は、はいっ」

 緊張した様子で、月奈が大きく頷く。

 その横で、穂乃香がもう一つ情報を加えた。

「で、あおいさんは、あかね先生のお姉さん」

「「「え?」」」

 吃驚した様子で、みどり、奈菜、月奈が一斉に穂乃香に視線を向ける。

 穂乃香は悪戯が成功したとばかりに、嬉しそうに微笑んで見せた。

『そうそう、うちの妹がお世話になってます』

 ぺこりと頭を下げたあおいに、皆が反射的に頭を下げる。

 顔を上げたあおいは、早速とばかりに月奈に問いかけた。

『じゃあ、確認だけど、月奈ちゃんは妖精役をやってみたい気持ちはあるかな?』

「は、はい……でも……」

 即座に頷くものの、言葉を詰まらせた月奈に対して、あおいは先の言葉を予測して微笑む。

『もしも、ご家族の許可がってことなら、任せて頂戴。今聞きたいのは、月奈ちゃんの気持ちだから』

「じゃ……じゃあ。やりたい……るなはやりたいです!」

 目を輝かせて画面に向かって前のめりになりながら訴える月奈に、あおいは『おっけ~』と言うなり胸元からスマホを取り出しつつ立ち上がった。

『じゃ、いろいろ進めておくから、お邪魔しましたー』

 フラフラと手を振って、クルミと再び位置を変わると、あおいは立ち去っていく。

 画面から消えかかる頃には『あ、あかね~』と妹に電話をしている声が聞こえてきた。

 それを一番近くで見るクルミが苦笑する。

『相変わらず、行動は早いのはさすがだけど、突然に話を振られて、あかねさん、テンパらなきゃいいけど』

 クルミの言葉に、容易に慌てふためくあかねを想像した穂乃香は、思わず乾いた笑いを零していた。


『では、改めて本題に戻りましょう!』

 いつのまにか取り出したフレームの太い黒縁の伊達眼鏡を掛けたクルミが、コホンと咳払いをした後に仕切り直しの言葉を放った。

「あー、そういえば、サイン……」

 クルミの仕切り直しに、目的を忘れかけていた穂乃香が声を上げる。

「なにをいってるの。穂乃香さま! 穂乃香さまのサインをかんがえるのがもくてきだよ」

 月奈の主張に、穂乃香は「いや、てっきり主役は月奈ちゃんかと、思ってた」と笑った。

 穂乃香の返しに、嬉しさ、戸惑い、恥ずかしさといろんな感情の混じった複雑な表情を浮かべて顔を真っ赤に染めた月奈は、そのまま固まる。

 そこへ、さらにクルミが追い打ちをかけた。

『まあ、でも、今の感じだと、多分大丈夫だろうし、穂乃香ちゃんだけじゃなくて、四人全員のサインを考えた方がいいと思うよ』

 ますます固まる月奈の横で、クルミの言葉を受け取ったみどりが首を傾げる。

「みどりたちも、サインつくるの?」

『多分、穂乃香ちゃんと四人セットでサインを頼まれることもあるかもしれないでしょ? 考えておいて損はないよ』

 クルミの言葉に、みどりはワクワクした顔を見せた。

「じゃあ、みどりもサインつくる! 奈菜ちゃんや月奈ちゃんも作るでしょ?」

「私はいらないような気もしますけど……」

 奈菜は頬に手を当ててそう応えてから、でも、と言葉を改める。

「使わなくても、みんなで一緒に考えるの楽しそうだから作ります」

 そう言って可愛らしい微笑みを見せた奈菜に頷くと、みどりは固まったままの月奈の腕に触れた。

「月奈ちゃんは? 月奈ちゃんも、サイン作るでしょ?」

「へ? は? え、ちゅ、ちゅくりまふ」

 全体的に噛みながら、それでも作ると主張した月奈の目にもやる気の炎が燃え上がる。

 そんな中で、穂乃香は空気を読まずに自己主張をしてみた。

「私は作らな……」

 が、言葉の途中で穂乃香の否定の意思に敏感に反応したみどりたちに、言葉を遮られてしまう。

「だめだよ、ほのかちゃんは、つくるのけっていだもん」

「そうですね、穂乃香さまが作らなくては意味がありません」

「く、クルミちゃんも手伝ってくれるのに、作らないのは駄目だよ、穂乃香さま!」

 三人の剣幕に圧されて、穂乃香は「作らない、訳にはいきませんよね」と苦笑した。

「うん、みんなでかんがえたらたのしいよ!」

 みどりが両手を上げて、楽しさをアピールする。

「穂乃香さまのサインがほしいひとはきっといっぱいいるよ、るなもそうだもん!」

 自分が証拠だと断言する月奈の言葉には、わずかな揺るぎもなかった。

「私達はともかく精霊の姫の穂乃香ちゃんは大人の人もすごいって言ってるくらいなんですから、絶対この先サインがいるヒトになるにきまってるじゃないですか!」

 若干怒ったような口振りで、自覚が足りてないとばかりに奈菜は穂乃香に迫る。

『まあ、仕方ないと改めるついでに、その『さいん』とやらに、呪的守護を上乗せすれば、配る意味も生まれるのではないかの?』

(あー、そうだね、なんか、すごくやる気がわいた、ありがとうユラ)

『う、うむ。眷属として、主殿により良き方策を示すのは当然だの』

 姿を消したまま、声を掛けてきたユラのそれは、気恥しそうに変化して、穂乃香は思わず微笑んだ。

「わかった、頑張るよ」

 最後にみんなに対して穂乃香がそう告げたことで、囲んでいた皆がホッと胸をなでおろす。

 そうして、皆はいよいよサイン作りに着手した。

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