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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第七章 幼女と前世の影
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184 幼女、却下される

「では、本格的に、会議に入りたいと思います」

 ゆかりの仕切り直しの言葉に、穂乃香を含む幼女四人が応える。

「「「「はーーい!」」」」

 この場にあかねがいたら羨ましがったかもしれない程、素直で可愛らしい声は見事に揃っていた。

「では、会議を始める前に、この場には来られませんでしたが、時間の許す限り、会議に参加してくれるアドバイザーを紹介します」

 ゆかりは言いながらノートよりやや大きいサイズの携帯端末を取り出す。

 そこには、赤いスカーフのセーラー服の上に、医者や理科実験できるような白衣を纏ったクルミが映し出されていた。

『ハロハロー! クルミちゃんだよぉ!』

 モニター越しに、会議室の様子を確認したクルミが営業用のキャラを被って挨拶の言葉を口にする。

 それに真っ先に反応したのは月奈だった。

「く、クルミちゃんさま!!!」

 すると、クルミは思わず口にされた呼称に、盛大にずっこけて見せる。

「わ、わぁ、大丈夫ですか、クルミちゃんさま!?」

 慌てる月奈に対して、体を起こして、カメラの中央に座り直したクルミが、チッチッチと指を左右に振りながら『だいじょばないよ』と言い切った。

 それから改めてクルミは理由をくっつける。

『う~~ん、ちゃんさまは、語呂が悪いもんね。クルミちゃんでいいよ』

 バチンとわかりやすいウィンクを飛ばして言うクルミに対して、月奈は至極素直だった。

 大きな声で「はい」と答えるなり、月奈は少し気恥しそうに「クルミちゃん」と名前を呼ぶ。

『ふふふーなにかな、月奈ちゃん?』

 クルミの返しに、月奈は「ふわぁ」と驚きの声を上げた。

 その反応は想定外だったクルミが『どしたの?』と尋ねると、興奮した様子で月奈が応える。

「はい! るなのなまえをクルミちゃんがしってるとおもわなくて!!」

『あ~……ねぇ、不思議だねぇー。でも、クルミちゃんにはわかってしまうのだ!』

 悪戯っぽく笑うクルミに、尊敬の目を向ける月奈は「クルミちゃんって、ヤッパリまほうつかいさんなんですか!?」とキラキラの目を向けた。

 その言葉に、穂乃香、みどり、奈菜の幼女三人がそれぞれ小さな反応を示すが、クルミも月奈も気付かない。

『実は月奈ちゃんの名前は、ゆかりさんに聞いてたし、気付いてないかもしれないけど、月奈ちゃんは自分で『月奈は』って言ってるから、魔法を使わなくてもわかったんだよ』

 あえて、魔法に関する問いをはぐらかして、かわりに種明かしをして見せたクルミの言葉に、月奈は感心したように頷いた。

 そうして、訪れた会話の谷間に、何事か思いついた穂乃香が口を挟む。

「あ、あの、月奈ちゃん、私も穂乃香ちゃんでいいよ!」

「え? むりです」

「はい?」

「穂乃香さまは、穂乃香さまです」

 真顔で月奈に返されて、穂乃香は理由も聞けずに「はい」と頷いて引き下がった。

 すると、思わぬところからも非難の声が上がる。

「確かに、穂乃香さまの方がしっくり来ますよね」

 月奈に同調したのは奈菜だった。

「特別に、奈菜ちゃんも呼んでもいいですよ」

「へ?」

「ありがとう、月奈ちゃん」

「は?」

 ガシッと握手を酌み交わす月奈と奈菜は、穂乃香を取り合う仲だからこそ、その気質が近しい。

 ゆえに響き合えば誰よりも二人は分かり合えた。

 そして、もう一人、この場に同じ気質を持つゆかりもまた、大いに頷いて、二人に祝福の思いを抱く。

 置いてけぼりの当事者穂乃香とともに、クルミもみどりも少し困ったような乾いた笑みを顔に張り付けた。


『えーと、ゆかりさんに見せて貰ったけど、月奈ちゃんは私達のサインを書けるのね、ちょっと引い……驚いたわ!』

 暴走状態の千穂を見るような目で引いたと言いかけた自分の言葉を打ち消すように、クルミは『驚いたわ』の部分で声を一段大きくした。

 その微妙な言い直しには気にも留めず、褒められたことに月奈が嬉しそうに身をくねらせる。

「え、えと、いっしょうけんめい、れんしゅうしたんです」

 照れながら主張する月奈に、クルミは頑張ったねと声を掛けてから、話題を軌道修正した。

『で、月奈ちゃんが書いてくれた通り、私達のサインは、ひらがなが三人、アルファベット……英語の表記が二人なのね』

 クルミは改めておさらいとばかりに、手元にそれぞれの名前とサインが書かれたフリップを順番に立ててみせる。

『で、穂乃香ちゃんのサインは、私達とバランスを取るならアルファベットの方がいいけど、正確にはプリッチのメンバーではないから、穂乃香ちゃんぽくひらがなっていうパターンもあると思うんだよね』

 そう言いながら、クルミは『ほのか』と『Honoka』と丸みの強い文字で書かれた色紙を披露した。

 それを見た、みどりが最初に疑問を口にする。

「えと、さかきばらほのかじゃないの?」

 可愛らしく首を傾げたみどりに、クルミは頷きながらその理由を答えた。

『えっと、エンディングのテロップってわかるかな? 終わりの歌が流れてるときに、たくさん名前が書かれると思うんだけど……』

「うん、みどり、わかるよ」

 みどりの答えに、クルミは頷くと説明を続ける。

『そこにね、私や穂乃香ちゃん、みどりちゃん達、出演した……プリッチに出た人やあおいさんみたいに作った人の名前が出るんだけど、穂乃香ちゃんはそこに『榊原穂乃香』じゃなくて、ひらがな三文字で『ほのか』って書かれてるの』

 だからだよと、結ぶクルミの説明に対して、皆がそれぞれ「なるほど」と頷いた。

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