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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第六章 幼女と信頼
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178 幼女、口を閉ざす

 エリーの肯定に、一瞬、言葉を失ったものの、どうにか気を取り直したクルミが恐る恐る尋ねた。

「つまり、榊原家が報道を抑え込んだ……んですか?」

 背中を何か冷たいものが滑り落ちていくのを感じながら、クルミは思わず敬語になってしまった自分の言葉に対する答えを待つ。

 すると、わずかな間も置かずに、エリーは静かな口調で微笑みつつ答えた。

「穂乃香お嬢様が関わっている事案に対しては、可能な限り情報封鎖をすることになっています」

 笑顔なのに怖いと、クルミが内心で思っていると、アリサが自分の端末を操作してから、会話に参加してくる。

「えーと、検索エンジンでいろんなワードで、さっきの事故について検索してみても引っ掛からないのは……」

「まず、正式な経緯を決め……いえ、経緯が確定してから、プレス発表後、解禁となるように、各社に協力をお願いしています」

「あ、そうなんですね」

 エリーと微笑みを交わしあいながら会話をしているはずのに、なぜか気圧されてる印象をアリサは感じていた。

 結果、言い直しに突っ込むことも出来ずに、ただただ流されていく。

「ですので、皆さんも、正式に通達される今日の経緯を参考に質疑応答されたり、情報発信に努めていただけると手間が省け……大変助かります」

「ちょいちょい、何かが漏れ出ている気がするんですけど……」

 エリーに対して、クルミがなけなしの勇気を振り絞って突っ込むが、返ってきたのはたった一言だった。

「気のせいではないかと」

 そうして生まれた絶妙に冷えた空気を晴らすべく、茉莉が口を開く。

「そ、そういえば、なんか、機械を付けていたメイドさんがいたよね」

 茉莉の言葉に、頷いたエリーはゆっくりと口を開いた。

「あれは榊原グループの榊原重工と榊原エレクトロニクスが共同開発している外部骨格式電動補助装身具です。現在駆動部の耐久性能テストと駆動装置や電源類の小型化を研究している段階です」

「うわ、なんかすごそうな話ですね」

 エリーの説明に、千穂は目を丸くして驚く。

「将来的には、災害時の救援活動から一般家庭での介助まで、幅広い用途に合わせて複数のラインアップを製造シリーズ化する予定です」

「では、今回はそのデモンストレーションも兼ねていたんですか?」

 彩花が説明を理解した上で、そう尋ねると、エリーは首を左右に振って見せた。

「いえ、完全に予定外です。ただ、死者が出ると隠蔽……穏便に解決できないと判断し、特例で投入いたしました」

「特例……」

「穂乃香お嬢様が現場に居合わせた場面で、不祥事を起こすわけにはまいりません……それに比べれば開発中の機体の情報漏洩など大した問題ではないと、会長以下幹部クラスが満場一致で承認しました」

 エリーは断言して一息つくと、そこからさらに会話を展開していく。

「まあ、もっとも、外部骨格式電動補助装身具のデモンストレーションという観点で行きますと、穂乃香お嬢様が現場にいらっしゃったことをより強いインパクトで上書きするためにも、明日には大々的に今回の成果を発表する予定ではありますから、心配なさらなくても大丈夫ですよ」

 そう言ってエリーが話をまとめると、千穂たちの目が自然と穂乃香に向かった。

 対して視線を向けられた穂乃香は苦手な分野の話だったこともあって、どこか申し訳なさそうに目を瞬きさせるのみである。

 そんな穂乃香に、唯一声を掛けれた茉莉が苦笑気味に「穂乃香ちゃん、愛されてるね」と、若干乾いた声で告げた。


「それでは、またスタジオであいまショー」

 この日のロケ現場であった学園を中心にして、穂乃香の自宅と真逆の方向にあり、一番遠かったために、最初に送ることになったアリサが、怪しげな日本語スタイルに話し方を改めると、ロケ車を降りて、マンションへと向かって歩き出した。

「アリサお姉ちゃん、またねー」

 戻を開けて手を振る穂乃香に、アリサは振り返ると大きく腕を振って「See You!」と可愛らしくウィンクして見せる。

 そうして完全に建物の中に、アリサが消えていくのを見送ってからロケ車は動き出した。


「くぅーー最後が良かったよーー」

「わがままは言わない……というか、帰れないから離れて」

 穂乃香と別れの抱擁を交わしたものの、なかなか手を離さない千穂に業を煮やした彩花が引きはがしにかかっていた。

 家が近いという事で、二人一緒ならばと、大通りでの下車になったのだが、肝心の相棒が穂乃香から離れない。

 あまりにも埒が明かないので、彩花は千穂に抱きしめられたまま身動き一つしない穂乃香に、救援を求める視線を送った。

 すると、穂乃香はこくんと頷いて、千穂の腕の中からその顔に視線を向ける。

「ん、なに、穂乃香ちゃん?」

 即座に視線に反応した千穂に、穂乃香は「千穂お姉ちゃん、今日はいろいろあったから、お家で早く休んでほしいの……心配、だから……」と目を伏せた。

「何やってるの、彩花、帰るよ」

 わずか数秒で車外へと移動を済ませた千穂に呆れながら、彩花は降り際に穂乃香に「ありがとう、穂乃香ちゃん」と微笑みを残してステップを降り来る。

 そうしてそのまま、やや暗めの住宅街へと二人は消えていった。

 もっとも護衛として、その後ろに闇に紛れるメイド服をみて、クルミと茉莉は去り行く千穂と彩花から目を離して、視線を交わし合う。

「んー……護衛なのはわかるけど、この車には乗ってなかったよね……」

「まつりん、多分、考えちゃダメなヤツだと思う」

「そ、そだね」

 それ以上は考えないという方針をクルミと茉莉が取り決めたところで、ロケ車は次の目的地へと走り出した。

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