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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第六章 幼女と信頼
175/812

175 幼女、アフレコを提案される

「さて、困ったわね」

 最初にそう言葉を発したのは、現在現場で一番の責任者であるあおいだった。

「とりあえず、待機ですか?」

「まあ、そうなるでしょうね」

 クルミの問いに、あおいは頷く。

 事故原因が屋上の金網の劣化だと推測され、その原因が、撮影を覗きに来た生徒たちの重みであったとしても、引き続き撮影を継続できるかと言えば、それは否だった。

 穂乃香護衛隊の迅速な行動で、被害者は出なかったのは不幸中の幸いであるが、しかし、事故である以上警察の現場検証などは行わなければならない。

 目撃者であり当事者である生徒たちはもちろん、穂乃香達を含む撮影隊や護衛隊も、警察の聴取に協力する必要があり、結果、撮影隊は足止めされてしまっていた。

 しかも、関係者の人数が多いために、学生から順に話を聞く方針を警察が採ったために、撮影チームの順番はいつになるかもわからない状態である。

「まあ、編集作業は機材を持ってきてもらうからいいとして、画が足りないのが困ったわね」

 既に榊原家の協力で、編集室に匹敵する演算力の高い機材を大型車両で提供してもらったあおいは、割り振られた教室までケーブルを伸ばして作業に入っていた。

「精霊の姫は、アフレコで声だけ足して繋ぎます?」

 カメラマンが自らのパソコン上に圧縮して落とした撮影画像を確認しつつ、あおいに問う。

「んーー、アフレコは、穂乃香ちゃん初めてだから……」

 ガシガシと頭を掻きながら悩むあおいに、今度は千穂がウィッチチーム五人を代表して提案をした。

「私達もブースに入れば、初めてでも、穂乃香ちゃんなら演れると思うんですけど」

「必要なら、動きもつければいいんじゃないかな?」

 千穂に次いで、クルミも録音風景を想像しながら提案に加わる。

「この学園の放送室には最新の音響設備があるみたいですよ」

 愛用のスマホを操り、彩花が該当の放送室について書かれたページを提示した。

「それじゃあ、学園長先生に確認取って使わせてもらいましょう。さっき、通信アプリのID交換してもらいました~」

 シレッとアリサがいつの間にか手に入れていた学園長のIDを表示しながら微笑む。

「アリサ……いつの間に……」

 茉莉の呆れた表情に、アリサは「その顔は心外です~何かあった時の為に、撮影チームを代表して、聞いておいただけです」と眉を寄せた。

「いや、だから、それあおいさん達の仕事じゃない?」

 茉莉が今度は額に手を当てて、論点が違うといえば、アリサはフルフルと首を振る。

「それはそうですが、茉莉も知っての通り、そのあおい達に、そういう外交能力は期待できないので、代理ですよ」

 そこまで言われてしまうと、茉莉としても否定しきれなくなるので、自然と視線があおいに向かった。

 茉莉に視線を向けられたあおいは、引きつった笑顔を浮かべて頭を掻く。

「いやぁ。みんなの助けでお仕事出来てます」

 あおいの言葉に突っ込みを入れたい衝動を抑え込んで、茉莉は大きなため息をついた。

「しっかりしてくださいよぉ」

「いやねぇ、正直、千穂ちゃん、クルミちゃん、彩花ちゃん、アリサちゃん、茉莉ちゃん達の方が、社会人として、しっかりしてると思うのよ……この前は、妹にも怒られたし……」

 茉莉の言葉に、苦笑の度合いを含めて言うあおいは、ゆっくりと精霊の姫の扮装から私服に着替え終えた穂乃香に視線を向ける。

 その視線の動きの意味が理解できずに、千穂たちが首を傾げた。

 穂乃香は、その皆の様子にクスリと笑ってから、真相を告げる。

「実は、私の幼稚舎の担任が、あかね先生といって、あおいさんの妹さんなんです」

「な、なんで! きいてないよ、あおいさん!!」

 まず、千穂があおいにつかみかかり、次いで彩花が無言で迫った。

 苦笑いのまま、二人をなだめるためにあおいが見解を述べるが、すぐに彩花が否定する。

「いや、だって、別に報告するような事じゃなくない?」

「報告することです。これだから常識を知らない人は……」

 声をワントーン低くして、吐き捨てるように言う彩花に、あおいは驚きの声を上げた。

「え、うそ! てか、彩花、何気に酷くない?」

 あおいは首を傾げつつ、彩花の態度に対する疑問を口にするが、すぐに「控えめに言っています」の返しで一蹴される。

 そのタイミングで、一連の会話という名の騒動から離れていたアリサが声を上げた。

「あー、あおいさん、学園長の許可取れましたよー」

「え、ホント!?」

 不意打ちのごときアリサの活躍に、あおいは目を丸くするが、それに合わせたように続いたクルミの報告に今度は呆然とさせられる。

「音響監督の佐々木さんがもうすぐ着くって」

「へ?」

 間の抜けた顔を見せたあおいに、クルミは「いや、ここで音録るなら、音監さんいた方がいいでしょ?」とさも当たり前のように言い切った。

 そして、それはその通りなので、あおいはカクカクと頷いて見せる。

 こうして、千穂と彩花に迫られている間に整ってしまったアフレコの準備に、あおいは少しボーっとした後で、目を瞬かせながら問うた。

「えと、ふたりとも、私のマネージャー業に興味は……」

「あ、ないですー」

「こういう仕事をするなら、穂乃香ちゃん家で働きたいから、パスで」

 あっさりとアリサとクルミに躱されて、あおいはしょぼんと肩を落とす。

 それから、あおいはわかりやすく口で心情を示した。

「とほほー」

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