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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第六章 幼女と信頼
151/812

151 幼女、嵐に飲まれる

 茉莉の言葉に、穂乃香は沈黙以外の選択肢を見いだせなかった。

 その呆然とする隙に、茉莉は穂乃香を放置して、千穂に向き直る。

「知ってしまった以上は、千穂にも手伝ってもらうからね?」

 茉莉に話を振られた千穂は、プルプルと体を震わせていた。

 直後、爆発する感情と共に、千穂は嬉しそうに同意して見せる。

「もちろん、もちろんだよ、茉莉! というか、ごめんね、私にサプライズしてくれるつもりだったんだよね。台無しだよね」

 泣き笑いのような複雑な表情だが、テンションはうなぎのぼりの千穂の様子に、茉莉はニヤリと口元に笑みを浮かべた。

 一方で流れるように進んでいく二人のやり足りの結果、相談していた内容とまるで関係ないことが決定した事実に、穂乃香は目を丸くする。

「穂乃香ちゃんはあえて、精霊の姫とか魔女とかは避けた方が良さそうだよね」

「そうだね、そうだね、もちろんそれも可愛いだろうけど、違う格好もみたいね!!!」

 茉莉にいいように操られる千穂は、もはや穂乃香が何を言おうが断行する構えだった。

 その気配に、仕方がないかと諦めて受け入れに傾いたところで、穂乃香は絶句する。

「あ、そーだ、どうせなら、ステージでお披露目しちゃおうよ!」

「ふぇ!?」

 珍しく間の抜けた声を穂乃香が上げたのは、千穂の発言で脳裏に描いたステージが一つしかなかったからだ。

 そして、沸き起こる嫌な予感とともに、その思い付きが的を射ていたことを確信する。

「だって、その頃には、スペシャル回の放送も終わってるし、あの子は誰だーってなってて、可愛さにみんながメロメロなタイミングで、ステージに招待して、しかも可愛いハロウィン衣装を着てたりしたら、お客さんも大満足間違いなしだよ!!!」

 たった一息で流れるように言い切った千穂は、そのままくるりと踵を返した。

「ちょ、え、千穂お姉ちゃん!」

 穂乃香が慌てて声を掛けた時には、千穂はもう会議室を抜け出す直前で、満面の笑顔で振り返り大きく手を振って見せる。

「あおいさんとか、プロデューサーさんとか、マネージャーさんに、了解貰ってくるね」

 もはや止まる気配もない千穂に、茉莉が普段は小言を言うテンションで声を掛けた。

「千穂、穂乃香ちゃんのことも考えて」

 そう言われてハタと止まった千穂は、少し考える素振りを見せてからまた輝かんばかりの笑顔を見せる。

「そうだね! ゆかりさんにも聞いてくるね!!!」

 千穂はそう言い残すと、茉莉が「そうじゃないから!」と突っ込むよりも早く姿を消していた。

 嵐の如く過ぎ去った千穂に呆然としつつも、さび付いた鉄製の扉のような重い動きで、穂乃香が自らの首を動かし、視線を茉莉に向ける。

「茉莉お姉ちゃん……」

「ま、まあ……ああなった千穂は止められないから……ほんと、ごめんね」

 苦笑で答えてから、茉莉は少し真面目な顔を取り繕った。

「でも、一応誤魔化せたよ……まだ、あのことは皆に伝えない方がいいと思うから」

 茉莉の発言に、穂乃香は少し引っ掛かるものを感じつつも、静かに頷く。

「まぁ、冷静に考えると、茉莉お姉ちゃんの誤魔化しがきっかけじゃなくても、ああなった気がしますしね……仕方なかったと思って受け入れます」

 ふぅと小さな肩を落として溜息をつく穂乃香に歩み寄った茉莉は困り顔で肩を叩いた。

 それから、視線を向けてくる穂乃香に、茉莉は実に皮肉めいた言葉を掛ける。

「穂乃香ちゃんは……ほんと、大人だよね」

「あはははは」

 茉莉の発言に思わず穂乃香が返した笑いは、どこまでも乾いていた。


「はい、というわけで、穂乃香ちゃんのステージ参加が決まりました!」

 千穂はそう宣言するなり、プリッチメンバーと穂乃香の前で嬉しそうに宣言をして見せた。

 その中で、最初に手を上げたクルミを、千穂が嬉しそうに指名して、発言を促す。

 指名されたクルミは、車座に並べられたパイプ椅子からゆっくりと立ち上がり、疑問を口にした。

「参加はいいけど、まさか、ダンスパートじゃないわよね?」

 スケジュール的にも、身体能力的にも、穂乃香なら合わせられるかもしれないとは思っていても、初参加の穂乃香、ダンスは暴走気味になりやすいアリサ、イレギュラーへの対応が遅めの茉莉と、いずれかのメンバーの負担が大きくなると踏んでいるクルミとしては、大枠ではダンス参加は反対なので、そういう尋ね方をする。

 対して千穂は、座長としてその意見も察した上で「大丈夫」と言いきった。

 そこへ間を置かず彩花が更なる説明を求める。

「その心は?」

「穂乃香ちゃんに参加してもらうのは、トークコーナーだから」

 千穂の返しに、穂乃香を除くメンバー一同がなるほどと頷き、全員が穏やかに賛成を表明した。

 しかし、場が荒れたのはその直後の事である。

 ニヤリと細い三日月の様な笑みを作った千穂の口から放たれた一言で、場は騒然となった。

「時期はハロウィンなので、穂乃香ちゃんにはコスプレで参加していただくことになっています。つきましては、諸君のアイディアを聞かせていただこうと思うのだがっ! ずばり、穂乃香ちゃんの衣装に意見を求めるのだがっ!!」

 かけてもいない眼鏡を上げるようなしぐさをして見せながら、妙なキャラを演じる千穂がそう宣言をするなり、4人はそれぞれ行動を開始する。

 スマホで画像検索を始めた茉莉、どこかから取り出したスケッチブックにイメージイラストを描き始めたアリサ、衣装部に早速電話をかけ始めるクルミ、そして、席に座ったままピクリとも動かない彩花は、時折穂乃香を見ては脳内で着せ替えを始めるのだった。

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[一言] 「まぁ、冷静に考えると、茉莉お姉ちゃんの胡麻化しきっかけじゃなくても、ああなった気がしますしね・・・仕方なかったと思って受け入れます」の胡麻化し→誤魔化しと思いました
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