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第20話〜縁〜

〜〜〜


~スサノオ城城内~


「なるほどのぅ。まさか神獣とは。何かしら対策を練るべきかの・・・」


シバ・ウチカネが手元の報告書を見ながら唸っていた。

その報告書とは、2週間ほど前に鬼ヶ島(住民である鬼族は火喰い島と呼んでいたらしい)辺りに発生した謎の光の調査で、鬼ヶ島から近いイグナで中々の敏腕と評判の良い行商人(アズト・ミタラと言うらしい)に依頼料上乗せで依頼したものだ。

大まかな内容は、島への滞在期間3日の間、実在した鬼族3人と出会いアズト・ミタラが雇った者たちが交戦した結果、これを撃退し、その際の会話で、謎の光の正体は神獣だろうという結論が出た、というものだ。・・・いや、何というか雑過ぎるでしょ!だろうって、何?確認もしてないわけ?

・・・まあ、所見には鬼族が得体の知れない様々な技を使い、魔神と伝え聞く存在とも出会い、戦力が不足していた、ともあるけれど・・・



もっとも、完全に依頼達成というわけじゃないから依頼料は大幅に値引きしたけどね、私の権限で。それは仕方ないでしょ、戦利品と言えば実在した鬼族の存在と銀色の金属(動いて攻撃してきたって話だけど嘘臭いしね)だけだもの。

腑に落ちないのは、値切ってもアズト・ミタラが特に食い下がらなかったってことね・・・報告を信じるならばそれなりに危険な任務だったのに・・・(仮に報告内容が虚偽ならば再度警備兵とかに調べに行かせればすぐに判明するからさすがにそれはないでしょうが)

何か隠している・・・?



「それにしても、ヒノカにトゴウか・・・」


「なんじゃ、姫?何か気になるのか?」


シバが、私の呟きに気づいたのか、聞いてきた。

「いえ、ね。そのアズト・ミタラの報告書の中に出てくる調査に参加した人物の名前、というか名字が気になっただけなの」



他のところは知らないが、火の大陸での名字には、それなりに意味を持つものがある場合がある。もちろんただ付けただけというものもあるが。

255年前に私の御先祖が大陸を平定するより前からこの大陸には象形文字つまり文字そのものの形が意味を為すという所謂、火語(ひご)が共通の文字として使われているが、その文字はかなり昔には人名として使われていたそうだ。

例えば現代の名字を火語を当てはめてみると、シバのウチカネは(打鉄)ガロウのサイハは(砕刃)というふうになるだろうと思う。(ちなみに初代スサノオというのは名字ではなく名前がそれのみだったが平定を記念して、後の世代へ名前を繋げるという目的で名字扱いへ変更したと、我が家のみに伝わる伝記に書かれていた)だからヒノカというのは、火ノ牙?トゴウというのは、斗剛?と置き換えることができる。

何故この文字が不意に浮かんだのか?これも我が家の伝記それも初代覇王のスサノオの手によるものだが、その中の「大陸平定貢献の武人」のところの自らの最強の仲間、三大英雄という箇所に火語で、火ノ牙、斗剛、羅義、という文字があったからだ。

これを現代風に読むと、ヒノカ、トゴウ、ラギ、と読めないこともない。

まあ、確認のしようもないが。ただ、もしそうだとしたら私を入れてかつての最強の仲間同士だった者の子孫が3人も居るというのが集まれば何だか大きなことができるような気がする。全大陸統一とか・・・まあ、夢物語ね。


「それよりも儂が気になるのは、神獣をどうするかじゃが・・・」


シバが真面目にそう言った。正直私は政務よりも直接その島に行ってみたいのだが・・・



「神官と警備兵の混合部隊を作ってみるというのは?」


行きたい気持ちをおくびにも出さず、とりあえず私も真面目に提案してみた。


「うむぅ。今はのぅ・・・」


「まあ、そうよね・・・」

言ってみただけなので却下されるのは勿論分かっていた。何しろ今は・・・


「神剣はまだ見つかる目処が立たないの?」


カグツチの神官は全て神剣探しに奔走しているからだ。火の大陸では神剣にしろ神獣にしろ神と名のつくものや聖剣や聖獣と聖と名のつくものは全て神官を通じて探したり取り扱ったりしている。だから魔物が強力になってきている今、その要因が神剣にあるのでは?と先週の報告から推測した私たちは神官たちを全て大陸の南のほうへ調査させに遣っている。


「まだじゃな・・・」


「そうよね・・・じゃあ、水の大陸のレ、レヴィアス国?の神官、みたいな立場の人に依頼するというのは?」


「・・・姫。確かにカグツチとレヴィアス国は交流があるが、そもそもレヴィアス国に神官が居るかどうかも分からんのだぞ。

それに神獣の力を別の大陸の者に奪われる可能性もあるので、どちらにせよそれは無理じゃな・・・」


「そうか。そうよね・・・じゃあ、とりあえずこの件は保留ね。神剣が先だわ」

「そうじゃな。まずは神剣じゃ」



と2人して頷いた。



〜〜〜



~ヴァニア城城内~


「この魔力・・・!?」


城の一室。


そこでは1人の男が呟き、何かに驚いていた。

この男、名をアルカード・ブラッディと言い、数千年の時を生き人狼(ワーウルフ)族の長をしている。この男、元々人狼(ワーウルフ)ではあるが、生まれ持った魔力と特殊能力、その野心、知能、から人型の姿のまま人狼(ワーウルフ)一族を統一し、此処(血沸き島)に自らの領土、居城を築くにまで至った。

だが、生まれ持った強さも外界に上には上が居る、と悟った時よりそれを行使せずにもて余し、持っていた野心も薄れ居城に閉じこもっていた。

そう、100年ほど前に自らも参加した戦いの際に他者の強さを悟った時より・・・


ドンッ!!!


アルカードが何かに驚き呟いてから間もなく自らが居る部屋の扉が噴き飛んだ。


「なっ・・・!?」


驚いて扉が元々あった場所を見るとそこには、


「久しぶりね。いや、この姿では初めましてと言いましょうか、ワンちゃん?」

と、異常な魔力を身に纏って立つ見覚えのない顔の人らしき少女がそう言った。



~~~



以前よりもこの城の主の小心者ぶりに磨きがかかったのか、城に正面から侵入しただけで数百体の人狼ワーウルフが配置されていた。そして、おそらく亜人特有の勘なのか、こちらの姿を見るや害を為すものと思われ1体の例外もなく襲いかかってきたが(勿論全て返り討ちにした)。それとも、この城の小心者の主、アルカード・ブラッディから見知らぬ者は全て排除しろとか言い含められていたのかも知れない。かわいそうに。仕える主を間違ったのだろう、結局全滅したのだから。

それで、この城の最上階の方に以前感じたよりも多少強力になった魔力を感じるが・・・おそらく目的の者はそこに居るのだろう。

そして、その者が居ると思われる部屋の扉を無造作に噴き飛ばした。

部屋の中の者が、


「なっ・・・!?」


と驚いていた。私は、


「久しぶりね。いや、この姿では初めましてと言いましょうか、ワンちゃん?」


と言った。するとアルカードが、


「き、き、き貴様はだ、誰だっ!?ニンゲンかっ!?何をしに此処に来たっ!?」


と私に言った?・・・ああ、成程。

何故そんなことを言われたか考えた私は納得し、被っていたフードを脱いだ。


「き、鬼族だと!?」

私の額にある角を見て判断したのだろう、そう言った。


「!!ま、まさか貴様は奴の手の者かっ!?それで私に復讐をしにきたとでもっ!?」


「奴?誰のことを指しているのかしら。それに復讐?ワンちゃんは何か復讐されるようなことをしでかしたのかしら?」


「ワ、ワンちゃんだと・・・?今までそのようなふざけた呼び名でこの私を呼ぶものは皆殺しにしてきたが・・・貴様は、鬼婦神きふじんゆかりの者ではないのか?」


「うーん・・・人狼ワーウルフ族の中では飛び抜けた知能を持つアルカード・ブラッディと言っても所詮はワンちゃんか。魔力の波動の種類とかは分からないものなのね・・・それに鬼婦神きふじんか・・・その名前も随分久しぶりに聞いた気がするわね。まあ貴方の言うことはそれほど間違ってはいないと言えば言えるわね。鬼婦神の縁の者と言えば私ほどの縁の者は他に何処を探してもいないでしょうからね・・・」


「どういう、ことだ?」


「どういうもこういうも簡単な話よ。私がその鬼婦神、デュカ・リーナそのものだというだけ」


「!!?そんなバカな・・・奴はあの戦いで消滅したはずだ・・・」


「ええ、そうね。貴方が、貴方達がそう思ったのも無理はないと思うわ。実際私の以前の肉体は貴方達のおかげで消滅してしまったのだから・・・でも、中身はまだこの世に留まっていた。それであの時近くにいたこの身体を持つ少女に乗り移って転生したというわけ?分かったかしら、ワンちゃん?」


「以前の肉体・・・転生・・・」


「それと、ワンちゃん?貴方はもう一つ正しい事を言ったわ」


「な、なに?なんのことだっ」


「何をしに此処に来たか・・・貴方が先ほど言ったように・・・・・・復讐よ」


私は言い、最大限に魔力を集中させた。


「ちっ!グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」


アルカードが吠えながらその身体を人型から人狼型へと変貌させていく。

そして、


「あらあら。小心者で仲間も居ない貴方の割には頑張るわね?いきなり切り札を使ってくるなんて」


その手には刃が赤く染まった剣が握られていた。


「貴様を消すのに躊躇いなど不要っ!!!」


「そう。あの時も不意をつかれたとはいえその剣に吸われた分は結構大きかったのよね・・・」


アルカードが持っている剣は、吸血剣ドレインブラッドと言い、その特性は斬った対象物の血、血中に含まれる魔力を吸い取り、その魔力は使い手に柄から吸収される。100年程前に私は最初にこの剣で斬られ思った以上に魔力が吸い取られた。アルカードが生まれつき持っていた牙を加工したもので、人狼型にならなくても使えるというメリットがあるため、自らの牙を折って作った1点物だ(そもそもアルカードが人狼族の中でのし上がったのには、知能などよりもこの牙の持つ特性に因るところが大きい、と思っている)


「けど、今はこれがあるのよ。ネイルッ!」


嘆きの杖の剣形態で吸血剣ごとアルカードを横薙ぎにした。

だが、


ガギイイ!


両手持ちにした吸血剣に受け止められる。


「へえ。貴方強くなった?前は魔力が弱った私にすら噴き飛ばされてたのにね」


魔力が全盛期並みにある、私のネイルを受け止めたので素直に称賛した。

そうして剣の押し合いをしていると、


「・・・この100年このアルカードが何もしていなかったと思うなよっ!」


「・・・でも、この城にずっと居たのでしょう?」


「フンッ!確かにそうだが、同胞の生贄を糧に私は強くなったっ!!」


「・・・・・・貴方、同じ種族を斬ったの・・・?」


「そうだっ!私とて、ずっとこのまま此処に留まっているつもりなどないっ!もう100年、200年かけて魔力を高め、いずれは闇に打って出るつもりだっ!」


「・・・そう。一応野心は捨ててなかったのね・・・」


「当たり前だっ!なに、もう少し魔力を高めればいずれは奴らにも匹敵するほどの強さになるはずだ・・・そうなれば」


「残念だけど、それは無理ね・・・」


「なんだとっ!貴様如きに何が分かるっ!」


「分かるわ。だって、貴方は今日此処で死ぬのだから。獄裂ヘルバーストっ!」


バァァァンッ!!


私は杖の先に魔力を集中させ強大な魔力を破裂させた。

嘆きの杖は使い手の魔力を吸い取りより強力になる。その上吸い取った魔力を増幅させ放出することもできる。ただ、魔力の消費量が大きいのでそれなりに強い相手ぐらいにしか使わないが・・・


「グハァッ!こ、こんな・・・」


左半身が噴き飛んだアルカードが此方を見て怯えていた。


「あらあら、その様ではもう戦えないかしらね?ワンちゃん、かなり強くなったはずなのにねえ」


「ま、待てっ!た、頼む助けてくれっ!」


「へえ。命乞い?・・・そうね、3べん回ってワンと鳴いたら考えてみようかしらね・・・」


「なっ!?き、貴様っ!・・・・・・・・・・・」


そう言うと、アルカードが激昂した。かに見えた、が


「・・・・・・・・・ワンッ!!!」


3べん回って鳴いた。


「くっくくく、あははははははははははっ」


お腹がよじれそうになった。

アルカードは羞恥によるものなのか顔が真っ赤になっている、ように見えた。



「はあ、はあ、可笑しかった」


「た、頼む。貴様、いや貴方の言う通り回って鳴いただろ?ゆ、許してくれっ!そ、そうだ!私を仲間にしてくれっ!奴らと共に戦おうではないかっ!?」


再度、懇願してきた。だが私は、


「仲間ねえ・・・私が言うのも何だけどその身体で?」


「こんなもの、部下を何体か斬り魔力を吸えば元通りに再生するっ!頼むっ!私を仲間にしてくれっ!」


「・・・ふう。分かったわ」


「本当かっ!?」


「いいえ。違うの。ごめんなさいね・・・・・・ハァァァ!」


「!?ち、違うだとっ。そ、そ、それに何故魔力を高めて・・・?」


「・・・自分のために同族を殺すような者はいつか必ず裏切るわ・・・そんな者を仲間にするわけにはいかないということがわかったの・・・」


「ま、ま、まて、た、頼む・・・!」

その言葉を無視して私は手に魔力を集中させた。


「さよならね、獄炎ヘルブレイズっ!」


「お、鬼ぃっ!ギャァァァァァァァァァァァァァ!」


アルカードは断末魔の叫び声を上げた。



カランッ

アルカードを塵になるまで焼きつくしたが、吸血剣は燃え尽きなかった。よほど今までに血や魔力を吸い取ってきたのだろう・・・同族の・・・

私はそれを拾い、


「ふう。まずは1体か・・・思ったよりも魔力を消費したわね。私一人で残り全員はきついかな・・・」


他の復讐すべき相手の顔を思い浮かべて嘆息した。


「やはり、駒は必要よね。あの人間とかはどうかしら・・・・・・・・・それにしても、鬼って・・・今更よね・・・」と、先日会った人間の顔を思い浮かべ呟きながらその場を後にした。



〜〜〜



あの島から戻って1週間・・・俺はアズトがレヴィアスへ行く準備を整えるのを手伝っていた。いや、レヴィアス滞在中の生活費を全部負担するとか言われたら、ねえ・・・それにあの島の調査の報酬や金鉱石で余程儲けたのか尋常じゃない量の仕入れをしているところを見ると、あの島での報酬みたいに手伝い費や用心棒代も上乗せしてくれるかも?という甘い期待もある。

ちなみにあの島の最低報酬は1人3000丸だったが、実際もらったのはその10倍近くあった・・・29500丸も・・・何故か諸経費で500丸引かれていたが、そこは抜け目がないなと感心した。まあ、金鉱石を山分けしろと言い出させないため、ということもあるだろうが。それでもアズトはいくら儲けたんだ・・・推測だが数百万丸ぐらいか・・・?まあ、別に俺はこれで数ヵ月何もしなくても暮らしていけるから良いが。

と、ほくほく顔で港に停泊するアズトの船(速度は大分落ちるが結局ガルディアの船で牽引して行くことになったらしいのでこれに荷物を積んでいる。おそらくだがアズトが予想より遥かに仕入れ物の予算を増やしたので、また相当儲ける気で・・・)に荷物の積込をしていると、



「トウヤさん、ミシルさん、そろそろ休憩にしましょう!」

と、俺の雇い主のアズトが声をかけてきた。


「ああ、そうだな。腹も減ったし」


俺が言うと、


「了解した」


ミシルも手を止めた。


「あ、御飯はネクさんが戻ってからですよ」


何っ!ネクの奴まだ帰ってないだと!どうしてくれる!俺の腹・・・



あの島から無事に帰ったあと、俺、ネク、アズト、ミシルはイグナを拠点とし、ガルディアの国へ行くための準備をしている。レンジとリクオのおっさんは暫く休業し、ある程度休んだらまた仕事を再開するそうだ。リシナと双子の姉妹は帰って修行をしたり過去の文献を探したり(鬼ヶ島にまつわる文献らしい)するらしいのでこれもまた暫く仕事は休業するとのこと(まあ、全員予想外に報酬があったからな)

ガルディア率いる探索団はアズトがなるべく多くの種類の火の大陸の物を持って行きたいので10日は準備期間をくれと頼んだところ承諾し律儀にイグナの町に滞在して待っているらしい。つまりあと2〜3日で当分この大陸に帰ってこれなくなる・・・飯は何を食い溜めしておくか・・・持っていく食い物もそろそろ考えておいたほうがいいな・・・

と、空を見ながら物思いに耽っていると、



「はぁ、はぁ、はぁ。た、だいま!」


ネクが大量の書物を抱えて息を切らせながらようやく港に戻ってきた。

俺は、


「ネク、心配したぞ!」

「えっ?トウヤ・・・そんなにあたしのことを?」


「ああ、当たり前だっ!お前が帰って来なかったら俺の飯はどうなるっ!」


「・・・・・・・・・・」

何かすごい冷めた目で見られた。



「ま、まあネクさんも戻って来たことですし、御飯を食べに行きましょうっ!」

「おー!」


「了解した」


「・・・・・・・・・・」


何故かネクがまだ冷めた目で俺を見ていた。



〜〜〜




「ああ、あったわ。そうそうこれですよ、この表紙ですよっ」


私は、鬼ヶ島(本来は火喰い島と言うらしい)から家に帰って来て約1週間、トゴウ家の書庫で昔見た憶えのある書物を探していた。もっとも見たのは子供の頃録に文字も読めずに絵が描かれていたのでぱらぱらと眺めただけだったと思うのだが。

双子の弟子に稽古をつけたり自らの修行の合間に時間を見つけてはその鬼ヶ島について書かれた物を探していたのだが、ついに見つけた。



「えっ?これは・・・」


その書物を作成した人に絵心があったのか、見覚えのある表紙の書物を見つけて少し興奮していたが・・・

「島の絵・・・?」


その書物の表紙には、つい数日前に見た鬼ヶ島の入口辺りの特徴ある形の絵が描かれていた。


「ということは、これを作成した人は鬼ヶ島に行ったことがあるのかしら・・・」


仮に行かなくても絵は描けるかもしれないが、おそらく実際に見ないとここまで細部を上手く描けないのではないか・・・

と、思いながら頁を捲っていくと、



「・・・記録?」



そこには、約一ヶ月に及ぶ鬼ヶ島の滞在記録が書かれていた。半ばあたりまで読むと・・・大まかな内容は、作者が持つ自分の特殊な能力を見込まれ誘われてその誘った人物と共に未知の場所である鬼ヶ島へ行き、そこに住む鬼族と出会い戦った、というものだった。

「まあ、あの鬼族も言っていたものね。以前にも人間の侵入者が居た、と。こういう記録があっても不思議じゃない・・・か」



だが、と疑問に思う。

あの鬼族と出会い戦って無事に帰れたのか?と。

確か侵入者は全員倒したというようなことを言っていたような・・・


「まあ、創作の可能性も・・・」


だが、この作者が交戦した鬼族の名前にジン・ガトウという文字を見つけたときそれはない、と考え直した。あの方達が戦った鬼族がその名前を名乗っていた、と聞いたからだ・・・


さらに読み進めると、


「戦って引き分けた結果、互いの領土へは不可侵の約束・・・もし、これを破った場合は武力行使・・・そんな話は初耳だわ・・・」


これは何の話でしょう?本当にあの島で起こったことなの?一体いつ頃書かれた書物なの?


と、作成日時の頁を見てみると、


「歴元年・・・?」


つまり、スサノオが大陸を平定した年?254年前に書かれた物?


さらに最後のほうにはこう書かれていた。



「・・・・・・我々はその島に住む最高齢の鬼族と話した時に驚くべき話を聞いた。なんでもこの島に住まう住民の祖先を辿れば我らの大陸と源流を同じくす、と。つまりこの島の鬼族の最古の者は火の大陸の人間だったのではないかと。もっともかなりの年月、それこそ数万年前まで系譜を遡って調べなければ立証は不可能だが。ただ、そう考えれば我々人間と亜人と呼ばれる異形の者たちがいつの日か手を取り合える時が来るのかもしれない」


!?


鬼族の祖先が元は人間!?


そして、その書物は最後にこう締め括られていた。



「私は大陸平定に貢献した、と自負している。その私の人と異なる力を後の世に残すため、大陸の王となった我が友のため、愛しい妻、そしてまだ見ぬ我が子のため、我が妖術の体得方法運用方法を巻物に別に記した。妻よ。身重のお前に我が儘ばかりですまないがその巻物を私の父に届けて欲しい。私はおそらく帰って来れないだろうから・・・だが、私は行かねばならない。闇に堕ちた我が友を救うために。

最後に・・・幼い頃からこの力により迫害されてきた私に人として生きる悦びをくれてありがとう・・・最愛の妻へ・・・愛を込めて

斗剛 一弥」


と・・・

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