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第1話〜序章〜

〈プロローグ〉

 …その日、山向こうの夜空が煌めき、大気が震えた。


 家の外では村人たちが何事かと騒いでいた。今日は村の祭りで特に人出が多い。


「何だ何だ今の音はっ」

「一瞬光ったぞ」

「何もこんな目出度い日に……」

 俺、トウヤ・ヒノカは家の外から聞こえてくるそんな話し声を聞きながら、そっとため息を吐き、目の前の人物へ話しかけた。


「親父、外が何やら騒がしいが様子を見に行かなくていいのか?」

 おれが自分の父親である目の前の人物、タチオ・ヒノカにそう言ったのには二つ理由がある。

 一つは、俺の親父はこの村で村長に次ぎ二番目にお偉いさんだということ、だから何か騒ぎが起こった場合村長よりも先に確認しなけりゃならない。

 もう一つの理由はそれを利用して俺自身とっとと外に出たいということ、なのだが。

「心配は要らん。話し声を聞く限りでは、このあたりには被害もなさそうだし、余程大事になれば村長が勝手に出張ってくるだろう。それよりも今は儀式を終わらせるほうが先決だ。」


 …これである。この変な頑固さの前に俺は為す術がなくなった。

ちなみに今俺達二人が行っているこの儀式というのは、この村の古くからのしきたりで、15歳になると元服(げんぷく)を迎えた、つまり一人前の大人として認めるために、様々な儀式、説明等が行われる一連のものを指している。話が長いので俺は早い段階で飽きていたので親父をそそのかそうとしたんだが上手くいかなかったってわけだ。

まあ長い面倒臭い儀式とは言え、元服さえすればそれに伴い色々な権利が使えるようになるので我慢するしかないのだが。元服した際の権利とは例えば剣を持てるようになったり、大人の許可なく村の外へ出れるようになったり、だとか。ようやく旅に出れるなぁ…


「つまり、そのことを踏まえていれば、いざというときにも…トウヤッ!聞いてるのか!?」

「モ、モチロン」

 聞いてませんでした。


「ふぅ。お前というやつは相変わらず…まあいい。ちょうど儀式は終わりだ。どうせお前のことだ、最後まで真面目に聞くとは思ってない。だから重要な部分だけ端折ったんだがな。」

 と、親父殿は苦笑しながら、

「どうせ気の早いお前のことだ、明日には旅立つんだろう?しばらく帰ってこんだろうから今日はせっかくの祭りだし、楽しんでこい。」

 九に話が分かることを言い出した。


「っああ!ありがとう親父…っと父上、行ってきます。」

 俺は立ち上がると、親父に一礼し、外へ飛び出した。




 暦255年、7大陸から成る、とある国のとある村の一室より物語は始まる…………と、その前に。

 話は12年程前に遡る。






〈〜暦243年〜〉


 空は澄み小鳥のさえずりが聞こえる、そんな爽やかな朝だった。その空の下にあるうちの屋敷の庭先で。


「えいっ!やあっ!とうっ!」

 朝の静寂を打ち破るように一人の少年がそんな気合いとともに木剣を振り回していた。軽くよろけながら。


「剣は力任せに降ってもダメだぞトウヤ。それに剣に振り回されすぎてるな」

 と、たしなめる声が少年の傍から聞こえた。

それは、黒髪を短髪に揃え身の丈180㎝へ僅かに届かない筋肉隆々な青年だったが、その少年を見守る黒い瞳の眼差しはとても温かなものだった。


「むぅ。でも、このけんがおもたくてむずかしいよ、とうちゃん」

 トウヤと呼ばれた黒髪黒瞳の少年は口を尖らせて抗議する。


「はは、そうだな。トウヤの身体より剣のほうが大きいもんな。ただ剣を振るうのは力任せじゃ駄目なんだ。ちょっと貸してみろ。」

 父ちゃんと呼ばれた青年…タチオ・ヒノカはトウヤと呼ばれた少年より剣を受けとる。そして、諭すような口調で、

「いいか、トウヤ。人には体内に流れるオーラってものがある。それを上手く操ることで力も速さも何倍にもすることができるんだ。」

 タチオは木剣を受けとると同時に全身にオーラを纏いだした。淡く身体が光りだし、剣先まで光りだした。

「よく見ておけ。これがオーラだ。このように自分の身体から手に持った武器にまでオーラを行き渡らせることで破壊力や反応速度が数倍から数十倍に跳ねあがる」

 と、おもむろに目の前にある大岩へ剣を振りかぶる。


ドゴン!


 そんな音がし目の前の大岩が真っ二つに割れる。


「このようにオーラを纏った武器で斬ると木剣といえどかなりの破壊力になる」

と説明する。


「まあ、いきなりやれといっても無理だろうから徐々に覚えていけばいいさ。まあ今日はここまでにしとこう。汗を拭いとけよ。」


そういってタチオはトウヤの頭を軽く撫でて、家のほうへ踵を返した。


「おーら……?」


 三歳の少年には言葉のみの説明が難しいと判断したのかは分からないが、実際みてもよく分からないといった風情の少年がそこに立ち尽くしていた。



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