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歌姫、鬼神を飼う。ー連環の計の駒?いいえ、鬼神の主は私です。未来知識で天下を操る。ー  作者: チャプタさん


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6-8:忠義には栄誉を、裏切りには屈辱を

6-8:忠義には栄誉を、裏切りには屈辱を

壇上の上から見下ろす広場は、まだざわめきの渦に包まれていた。

つい先ほど、裏切り者・李粛への判決が下されたばかり――にもかかわらず、兵士たちの胸中には、納得と戸惑いがないまぜになった感情が渦巻いているのが、はっきりと伝わってくる。耳を澄ませば、短く切れた呼吸、鎧がかすかに鳴る音、誰かが唾を飲み込む気配まで、異様な緊張感の中で際立っていた。


私は、そのざわめきの中心に立ち、まるで広場全体の空気を握りしめるように、ゆっくりと口を開いた。

「――聞け、呂布軍の兵士たちよ」


声を張り上げたわけではない。むしろ、低く、重く、確実に耳へ届くように抑えた声だった。だが、その声音には、揺るぎない威厳が宿っていた。まるで、この軍の未来を告げる新たな鐘が、いま鳴り始めたかのように。


「なぜ、李粛を斬らなかったか――疑問に思う者もいるだろう。『甘すぎる』と、そう思った者も、少なくないはずだ」


その言葉に、不満を声高に叫んでいた兵士たちが、わずかに肩を震わせた。鋭い刃先で突かれたように、息を呑む気配が走る。


私は、彼らを見渡した。一人一人の瞳を射抜くように。

「だが、よく考えるがいい。貴様らの求める『示し』とは、ただ血を見ることなのか? 仲間であった者の首が、地面に転がるのを見て、満足することなのか?」


そこで、間を置いた。わずか数秒――だが、兵士たちには、永遠のように感じられた時間だっただろう。


「それは……董卓のやり方と、何が違う?」


私の声は鋼のように冷たく、しかし、激情を内に秘めていた。

その瞬間、広場の空気が変わった。兵士たちは互いに顔を見合わせ、言葉を失ったように口を閉じる。彼らが忌み嫌い、反旗を翻した相手――董卓。その名をここで聞かされ、自分たちの求めていた「処罰」が、その男と同じ発想に立っていたことに気づいたのだ。


「我らは違う!」

私は一歩、壇上の先端に踏み出す。

「我らが求めるのは、恐怖による支配ではない! 信頼による結束だ!」


声が広場の隅々まで響き渡る。兵士たちの目が、私の一挙手一投足を追っていた。


「だからこそ、私はあえて彼を殺さなかった。死は、一瞬だ。斬られれば苦しみはそこで終わる。だが、生きること――それは、己の罪を背負い、背中に刻まれた烙印と共に歩み続ける、果てしない罰だ」


兵士たちの喉が、ごくりと鳴った。私は続ける。

「李粛はすでに全てを失った。仲間も、誇りも、生きる場所さえも。これから彼は『裏切り者』として、誰からも軽蔑され、石を投げられ、嘲笑されながら生きるのだ。武人としての誉れを失い、ただ己の愚かさを噛み締めながら、残りの人生を送る。……お前たちは、あのような惨めな男になりたいか!」


「「「なりたくない!!!」」」

地面が震えるような咆哮が、広場を揺るがした。その声に、兵士たち自身が驚いていた。自分たちの胸の奥底から、これほどの力で声が湧き上がるとは、誰も予想していなかったのだ。


「ならば心に刻め!」

私は、最後の一撃を放つように声を張った。

「これが、我が軍の『法』だ! 罪は、身分に関わらず、必ず裁かれる! だが、我らは無益な殺生を好まぬ! 我らが求めるのは、恐怖ではなく、信頼だ!」


広場を覆う空気が、もう完全に変わっていた。

そして、私は彼らの魂の芯に、永遠に残る刻印を打ち込む。

「忠義には、最大の栄誉を! 裏切りには、最大の屈辱を!――これが、我らが掲げる『義』である! 決して忘れるな!」


その瞬間、広場が爆発した。


「おおおおーーーっ!!!」

「貂蝉様、万歳!」

「呂布将軍、万歳!!」


歓声は熱狂を超えていた。それは、新しい価値観の誕生を祝う、魂の叫び。恐怖ではなく、規律と信頼に基づく軍――その姿が、この場に集った全員の心に、はっきりと刻み込まれた瞬間だった。


壇上からその光景を見下ろしながら、私は胸の奥で静かに息を吐いた。兵士たちの瞳が変わったのが分かる。そこには、もはや「聖女」への憧憬だけではない。「法を体現する者」への、絶対的な畏敬が宿っていた。


そして――その視線の一つが、壇の脇から私を見つめていた。

呂布。

彼は、誇らしげに、それでいてわずかに畏れを含んだ眼差しを向けていた。

愛する女が、ただ美しいだけではなく、軍をも動かす器を持つ存在だと、改めて悟ったのだろう。


歓声は夜空に吸い込まれ、そして、この瞬間が永遠の誓いとして刻まれていった。

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