59.思いがけないライバル
久し振りに流星たちのいる天界に時間軸が戻ります。
アルテミスと一緒に皆の元へ戻った流星。
彼らを待ち受ける出来事とは?
――午後八時半
アルテミスとのデートを終え、彼女の自宅に帰ってきた僕たち。すでに戻られていたレーアさま。それに、デメテル、千秋。そして、一緒について来たらしいフォルの四人が出迎えてくれた。
レーアさまの旦那さん――クロノスさまは仕事のため、どうしてもこれから行かなければならないとのこと。僕たちと入れ替わりでお出掛けになられたのだ。
でも、一目だけでもご挨拶できたのは良かったな。朗らかでとても温和そうな顔立ち。僕より頭一つ分高い身長と艶やかな黒髪。そして、まるで青年のような爽やかな笑顔が印象的だった。
「きちんと挨拶できなくてごめんな。また今度、ゆっくり話そうか」
と、穏やかな表情で仰って頂けて、とても嬉しかったよ。でも、その後――
「あ、そうそう。娘たちを泣かせたら、僕の奥さんの制裁が飛んでくるからそのつもりでね?なに、心配はいらないよ。そのあとの君は、うちの畑の肥料にしてあげるからさ。こう見えて、作物を育てるのは得意なんだ。安心しなよ。ちなみに、娘たちというのは、フォルちゃんやそちらの千秋さんのことも入ってるからね?……分かってるよね?」
念押しして、はっはっはっ、と笑いながら去っていくクロノス様。決して、泣かせるようなことはいたしません!そう返事をするより他になかった。
もちろん、皆を泣かせるつもりなんて微塵もないよ?近い将来、一人を選んでその子にも僕を選んでもらえたら、と思っていたんだけどな。一体、どうすればいいんだろう……?
「素敵です、レーア様!神様もこんな大恋愛をされるんですねー!憧れちゃう!」
「な?な!?そうだろ!?これを聞けば、絶対に千秋も感激するって!アタシの言った通りだっただろ!?」
「お母様とお父様、いいないいな~!わたしもそんな恋がしたいな~!」
「まぁ!アルテミスったら……ふふっ、あなたもいつか素敵な恋が見つかるわよ」
「そうだぜ!アタシたちみたいに大人になれば、恋愛の一つや二つ、五つや六つくらい当然だって!」
どうしたものかと考えていたところ、千秋たちの明るい声が響き渡る。先程まで聞いていたレーアさまとクロノスさまの馴れ初めの話題で再度、盛り上がっているようだ。
レーアさまたちの話を得意気に披露したデメテルとフォル。二人共、語るにつれてみるみるうちに瞳に涙が溜まってすぐに涙声に。最後の方なんて感動で泣きながらだったもんな。いかにレーアさまたちの愛が尊いかを熱心に教えてくれたのだった。千秋なんて感動しすぎて、むせび泣いてたしね。
「ん?そう言えば、千秋ってば、なんで初めて聞いたような反応なの?皆と一緒に聞いてたんじゃ……?」
「あーそれね。実は聞いてるうちになぜかふらふらして、いきなりすっごく眠くなっちゃったんだよね。それで、ちょっと休ませてもらってたの」
「それ、大丈夫なの?どこか具合が悪いんじゃない!?」
「流星さん、安心なさって~。千秋さんはとってもアルコールに弱い体質だったみたいなのよ。私の能力で睡眠の質を上げたから昼間は大丈夫だと思ったのだけど、カバーしきれなかったらしいのよね~」
「じゃあ、特に体に問題があるっていうわけでは……」
「えぇ、それは大丈夫。ただ、今後、お酒を召し上がる時は気を付けた方がいいかもしれないわ~」
安心させるようにニコッと微笑むレーアさま。
「レーア様、ご迷惑お掛けしてすみません。私、自分がこんなに弱いだなんて思いませんでした」
「そんな謝ることじゃないわ~。体質だもの。いまは気分が優れなかったりしない~?大丈夫かしら?」
頭を下げる千秋にレーアさまがことさら優しく声を掛ける。体調を気にして下さるなんて、本当にお優しいな。当の千秋は、はい!と元気よく頷いて笑顔を見せるのだった。
「ねぇねぇ、さっき恋愛をたくさんしてきたみたいなこと言ってたけど、フォルって元彼いたんだ?」
素朴な疑問だったのだろう。千秋が何気なく聞くと――
「えっ!?いないいないいないいない!!全っ然、いないからっ!!流星が初めての彼氏だから!」
慌てた様子で全否定し、僕に駆け寄ってくる。
「本当なんだからな!付き合ったことなんて一度もないし!……そ、そうだ!ほら、昨日、アタシんちのキッチンで抱き寄せてくれたろ!?あんなこと、神生で初めてだからな!?」
「う、うん。分かったから落ち着いて――」
フォルの必死の言葉が投げかけられる度に、デメテルと千秋の冷たい視線が僕にこれでもかと突き刺さる。
「(ほっぺに)キスだって流星が初めてだし、この体だっていままで誰にも触らせてないぜ!?ずっとずっと流星だけのものだからな!?」
若干、目尻に涙を湛えながら、ピッタリと抱き着くフォル。彼女の柔らかい天然の桃がむにゅっと変形するにしたがい、すごい勢いで神力を高めるデメテル。目つきが鋭くなってて、めちゃ怖い。
助けを求めるように恐る恐る千秋の方を見ると、彼女もまた、決して言葉では言い表せない怒りの炎をその瞳に滾らせていた。
フォルは興奮しすぎて(たぶん)何を言っているのか、自分で分かってないんだろうな。僕の誤解を解こうと、相変わらず体をグイグイと密着させてくる。張りのある極上の二つの桃から感じる彼女の体温と柔らかさ。この世の全ての幸せを集めたような、そんな素晴らしい甘美な誘惑に陥落するのも時間の問題だった。
「や、柔らかい……」
「「……っ!?」」
しまった……!つい、口に出しちゃったよ……。
「ちょっと!フォルったら、いつまでくっついてるの!?あなた、仮にも女神でしょう!はしたないわよ!離れなさ~いっ!!」
「そうだよ!はしたないったら、ありゃしない!胸なら私の方があるんだからね!?……流星?流星ならいつでも触っていいんだからね?本当は日本でデートした時だって、触って良かったんだよ?」
自分で言っときながら頬を赤らめ、きゃっと小さな声を上げる千秋。そして、当然といった表情で抱き着いてくる。
「ち~あ~きぃ?あなたの方がはしたないじゃないの!それに、デートの時ってどういうことなの!?あなた、カップルが使うあのお城みたいな場所に流星と入ったことあるの!?まさか、ポイントカードなんて貯まったりしてないわよねぇ!?」
おぉっと?なんで、そんな知識まであるのさ。ていうか、ああいうところって、ポイントカードあるの?初めて知ったよ。勉強になります!
「さぁー?どうだったかしらねー?ワタクシ、何度も流星とデートしたことありますからぁ、当然、入ったこともあるような……気がする!」
「いや、ないよっ!?」
千秋のとんでもない発言を即座に否定するも、今度はフォルが――
「なぁなぁ!流星、聞いてるのか!?アタシの心も体も、もう流星のものなんだぞ?」
ちょっと、言い方ぁ!!
「あ~!まだくっついてる!フォルも千秋も早く離れないさいよ~!」
「ヤダヤダ!流星はアタシのもんだー!」
「へっへーん、やだよーっだ!」
デメテルの言葉に抗い、見せつけるようになお密着する二人。片や、瑞々しく艶やかで張りのある桃。そして、もう片方は存在感溢れる大玉メロン。
あ~!僕は……僕はどうしたらいいんだろう!必死に頭を悩ませていたその時、突如として背中に押し付けられる柔らかな二つの物体。こ、これはもしや……!?
「いいもんいいもん!私だってこれには自信があるんですからね!」
後ろから聞こえるデメテルの声。そして、むにゅっむにゅっと感じる極上の弾力。大玉メロンよりは大きさでやや劣るものの、そのぷるっとした弾力はまさに極大級!一般的に見れば十分過ぎる大きさと、マシュマロのような柔らかさを両立させた女神メロン。それがいま、僕の背中を占拠。ううん、これはもはや蹂躙だよ!?とっても幸せな、がつくけどね。
ちなみに、女神メロンだけど、『め』は、めちゃ柔らかい!『が』は、我慢できないくらい柔らかい!『み』は、ミラクルな柔らかさ!だよ。異論は認めない。
「ねぇ、お母様?お姉様たち、何やってるの?」
「あの年頃にはよくあることなの。でも、アルちゃんはああなってはダメよ~?はしたないからね~?」
「は~い!」
「あら?そのネックレス、どうしたの~?綺麗ね~」
「これ?お兄ちゃんにさっき、貰ったの!あの噴水広場で」
「「なんだ(です)って!?」」
「えー!アルテミス、いいなぁ。なーんて、私だって生きてる時に流星からピアスとか色々、買ってもらっちゃってるもんねー」
「「なんだ(です)って!?」」(二回目)
げっ!アルテミス、喋っちゃったのか。ま、まぁ、特にやましいことは何にもないんだけどさ。
「まぁ!そうなの?良かったわね~。それ、もしかしたら、『 紅玉 』じゃない?」
「うん!お兄ちゃんがそう言ってたかも!内緒で買ってくれてサプライズしてくれたの~!」
嬉しそうに話すアルテミスに、頬を緩ませて笑顔を返すレーアさま。
「りゅ、流星……?あれ、アルテミスに贈ったのか?」
「意味を分かって渡したの……?」
なにやら驚愕した様子のフォルとデメテル。それに対して、何が何やら分からないといった表情の千秋と僕。
「どうしたの?二人共。あれってもしかして、ルビー?すっごく綺麗だね!これの意味って?」
「あれ、意味なんてあるの……?あ!そういえば、ラミエルさんが『これを贈る時はよく考えて下さいね』って言ってたっけ」
彼女のやけに真剣な目つきが気にはなってたんだよね。どういう意味だったんだろう?
「ラミエル?ふ~ん、随分と親しいのね?名前からして天使かしら?どこで知り合ったの?いつ知り合ったの?どうして知り合ったの?」
「流星、アタシらの前でよく他の女の名前を出せたなぁ?」
なんだかすっごい早口で圧が強いデメテルと、不穏な神力を漂わせるフォル。
「いや、単にアクセサリー店の店長さんで――」
「流星……」
なんだか言い訳をしているような感じになっちゃってる僕の言葉に被せるように呟く千秋。案外、いつもの声色だったので、ホッとして視線を合わせると――
「その女と私とどっちが大事なの?」
は?……え?
「ち、千秋、その質問おかしくない?ラミエルさんは別に……」
「流星、自分がモテてたのちっとも気付いてなかったでしょ!きっとその女も流星に気があるに決まってるよ!それに、バイトの時なんて、レジの女の子たちが一緒のシフトに入りたくて争奪戦してたんだよ?お客さんからも何度も連絡先、渡されそうになってたしさ」
そんなことがあったのか。全然、知らなかった。
「そうなの?でも、僕、連絡先なんて一度も貰った事なんてないけど……?」
「ふっふーん!そりゃ、そうだよ。バイトの子たちと結託して流星のこと、悪い虫からガードしてたんだもん」
悪い虫って……。
「おー!でかした、千秋!偉いぞ!」
「よくガードしてくれたわね!」
「いぇいっ!」
お?不穏な空気がなくなった?
「で?」
「で……って?」
千秋の言葉の意味が分からずに困っていると――
「「「一体、誰が本命なの!?」」」
千秋とデメテル、フォルが声を揃えて叫ぶ。
「う、うん。それは早めに決めなきゃとは思ってるんだ。でも、いまはまだ……そ、そうだ!ほら、一対一でデートしてそれを参考にするって話だったじゃないか。ね?ね?」
「それはまぁ……」
「そう……」
「よねぇ」
三人がしぶしぶといった感じで言葉を発し、微妙な表情だけど納得してくれた。あぁ、良かった。しかし、ホッと胸をなでおろしたのも束の間、すぐにあっけらかんとした声が耳に届く。
「お姉様たち~?お兄ちゃんの一番はわたしだよ~!」
「「「「えぇっ!?」」」」
アルテミスの可愛らしい声が、僕たちの思考を瞬時に停止させる。シーンと静まり返った部屋に響く嬉しそうな笑い声。さらに彼女は、容赦なくとどめの一撃を浴びせるのだった。
「だって、わたし、さっきプロポーズされたんだも~ん!」
今回もご覧頂き、ありがとうございます!
なんと、まさかのアルテミスが本命に躍り出た!?
このあと一体、どーなっちゃうの!?
次回もご期待下さい!☆




