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54.若き大地の鼓動・陰

クロノスは一体、どこへ?

そして、レーアはどうする?

 かつて戦いの神と恐れられ、いまは中隊長として第三大隊の中心的役割を担うアレス様。そんなお方を部下に持つ大隊長たる私が泣き言を言い、さぞ驚かれたことでしょうね。でも、話を聞いてくれて嬉しかったな。叱ってくれて……そのお気持ちがとても温かかった。


 叱咤激励された私は一刻も早く謝るため、そして、真実を知るためにクロ君の元へと向かう。その途中、セメレーとアレス様のご息女、ハルモニアさんに出会い、クロ君とセメレーの結婚疑惑が晴れることに。でも、彼は何処かへ何かを探しに行ってしまったという。一体、何を探しに行ってしまったの?


 帰宅途中のハルモニアさんと別れ、セメレーと二人で歩き出す。


「先輩、大丈夫ですか……?」


 余程、悲しげな顔をしてしまっていたのか、心配してくれた彼女が声を掛けてくれた。


「大丈夫よ。ありがとう。クロ君が何をしているのか気になるけど、戻ってこないことには何も分からないもんね」

「これからどうするんですか?」

「そうね……とりあえず、ふさぎ込むのはやめるわ。暗い顔して過ごしてても何も良いことないもの。クロ君が戻って来た時に、辛気臭い女神だなんて思われても嫌だしね」


 そう言うと、可愛らしい声で笑うセメレー。そんな無邪気な彼女を見ていると、私に足りないものが何なのかヒントを貰えたような気がした。


「せっかくまだ十日以上休みがあるけど、神殿に顔を出していつも通り過ごそうかな。書類もやらなきゃならないし……」

「えぇ~っ!せっかくのお休みなのに神殿に行くんですか?それなら、もっと有意義な過ごし方の方がいいと思いますよ?」

「ん~?とは言っても、私、趣味と言ってもお料理くらいしかないもの。ショッピングもいいけど、そういうのは……く、クロ君と行きたいし」

「ふふっ。ほんとに好きなんですね~。でも、わたしだって彼を想う気持ちは負けてませんよ!?それに彼もわたしのこと、とっても大切にしてくれるんです!将来、うちの工房の仕事ができるようにって、休みの日にほぼ毎週、手伝いに来てくれてるんですから!」


 へぇ~。いいなぁ、愛されてるのね、セメレー。


「そ~だ!先輩、それ手伝って頂けませんか?」

「えっ?それってどれのこと?」

ワイン工房(わたしんち)の仕事のお手伝いですよ!」

「えぇ~~っ!?」

「きっと、気分転換になりますって!」



――翌日の午前


「私なんかがお邪魔してしまっていいの……?」

「だ~いじょうぶですよ!それに、うちの工房にも先輩のファンはたくさんいますから!」


 それがちょっと心配なんだけどな……


「ほら、着きましたよ!じゃ~ん!うちのワイン工房、名付けて『大地の恵み』へ、ようこそいらっしゃいました~!」


 両手を天高く広げ、元気よく挨拶するセメレー。その後ろには大きな建物が幾つも立ち並び、それをぐるっと取り囲む様に広大なブドウ畑がどこまでも広がっている。

 列を作りきちんと並ぶブドウの木。作業をしている神や天使の背丈と同じくらいかやや高めかな?緑の葉が生い茂り、夏の太陽をその身に受ける。それはまるで大海原の様に雄大で、緑が生き生きと輝いていた。


「わぁっ~凄い!こんな素晴らしい景色、そうはないわね」

「そうでしょう?わたしもブドウ畑見るの好きなんです。何というか、大地の力強さみたいなものを感じますもん!いっぱい栄養とって美味しくなってねっていっつも思います」


 大地を司る私から見ても、この景色は素晴らしかった。ある種の荘厳さをも感じられる。自然とはやはり素晴らしいものなのね。そう思うと、自分がいかにちっぽけな存在なのか思い知らされるようだった。いじいじした気持ちが吹き飛んでしまう程に。


「気持ちの良い眺めね。こんな素敵な場所で働かせてもらえるなんて、とっても嬉しい!ありがとう、セメレー」


 にっこり笑ってお礼を言うと、なぜか彼女は頬を赤らめ目を逸らす。


「もぅ、先輩ったら。無自覚系女神なんだから。モテ笑顔(そういうの)はやたらと振り撒いたらダメなのに」

「ん?何か言った?」

「い、いえ!何でもありません!さ、それよりも両親をご紹介しますね!お父さ~ん!お母さ~ん!」


 彼女に手を引かれ建物の中へと入る。そこには樽がいっぱいに置いてあり、木の良い香りが建物内全体を覆っていた。


「あれ?どこ行っちゃったんだろう?先輩と帰るからねってちゃんと伝えたのに……」


 困った顔をするセメレー。周りの十人程の天使たち(職人さんかな?)が、またかといったような表情で彼女を微笑ましそうに見つめていた。


「お嬢、またですかい?」

「旦那様たちなら、そのうち戻って来まさぁ!」

「仲が良いのはよろしいではありませんか。私だっていつかは素敵な彼と結婚したいわぁ!」

「お!じゃあ、おれなんてどうだい?腕は確かだぜ?」

「ちょっと、ポエル!アタシという彼女がいるってぇのに、他の天使()を口説くたぁどういう了見だいっ!?」

「げっ!レリエル、いたのか!?さっき畑に出てったんじゃなかったのか!」

「……アンタに仕事の合間に食べてもらおうと思って作っといた()()、渡し忘れちまったからさ。でも、こいつはどうやら、いらないみたいだねぇ?んー?」

「おほーっ!そいつを先に言ってくれよ!おれの大好物じゃあねぇか!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「さて、どうしようかねぇ?浮気モンに食わせるのもシャクだし……」

「許してやりなよ!そーいやさぁ、こないだ辞めてった若い天使がいただろう?あの女の子。あの子がポエルに告白したの俺、偶然見ちゃったんだよな」

「えぇっ!?お、おま……あれ、見てたのか!?」

「へぇー?そいつは初耳だねぇ。全っ然、知らなかったよ。詳しく聞かせて貰おうじゃないのさ!」

「勘弁してくれよ……」

「いやいや!そんな怒る話じゃねえって!ポエル(こいつ)さ、その時なんてったと思う?『おれには心に決めた奴がいるんだ。すまねぇ。そいつのこと大事にしたいんだ。ちこっと気は強いけどよ、レリエルは最高の女なんだ』だってよ?」


 ……っ!?凄いなぁ。そんなに相手のことを素直に言えるだなんて!


「おいおい、もう勘弁してくれって!こっぱずかしいじゃあねぇかよ」

「誰が気が強いだってぇ!?」

「れ、レリエル……すまねぇって」

「ふふっ。嘘だよ。怒ってなんていやしないさ。ポエル、アタシさ、いますっごく嬉しいんだ!ありがとう!」


 そう言って嬉しそうに抱き着き、キスをする彼女。大いに照れる彼。はやし立てる周りに笑顔を振りまく彼女がとても微笑ましかった。羨ましかった。


「ちょっとちょっと!お客様がいらっしゃってるんですからね!もぅ!」


 セメレーの言葉に一斉にこちらを振り向く天使たち。注がれる視線。そうだ。皆さんに挨拶しないと。咳払いをひとつして一呼吸置く。そして――


「皆さん、初めまして。今日からこちらでお世話になるレーアと申します。短い期間ですが、お邪魔にならないよう働かせて頂きます。どうか、よろしくお願いします」

「えぇっ!?レーアって、あのレーア……様?」

「本物!?」

「レーア様だ。間違いねえ……!」

「お嬢!これは一体、どういうことでぃ!?」

「ん~とね、秘密のアルバイトってところかな?」


 自信に満ちた笑顔でそう言ってのけるセメレー。秘密のって……別に秘密にしてるわけじゃないんだけどな。


「お嬢、それじゃ全く分かんねーよ」


 ですよね~。


「いいんです!皆、そういう事にしておいて下さいね?」


 ニッコリ笑う彼女に、困惑気味の天使たち。そりゃ、分からないわよね。


「皆さん、ご迷惑でしょうが、よろしくお願いします」

「いやぁ、迷惑だなんてそんなことねぇよ?」

「そうそう!いまは少しでも人手が欲しいのさ。なんたって、この街だけじゃなくて近隣の街も全部、アタシらが賄ってるんだ。よろしく頼むよ」

「アタイが色々、教えてあげる!」

「レーア様がいくら有名だからって、それと仕事とは別だかんな?きっちり働いてもらうべ!おれ様の教えは厳しいだよ~っか!」

「だから、アタイが教えるって言ってんでしょうが!大体、そんな鼻の下伸ばした顔で偉そうなこと言ったって説得力ないってーの!」


 再び頭を下げる私に、皆、口々に優しい言葉を掛けてくれる。ふふっ、仲が良くて羨ましいな。


「あの、レーア様?初めてのことだらけで戸惑うかも知れませんけど、私たちがフォローしますし何でも聞いて下さいね。変に気負っても良いことなんてないですから。私たち、自分らしさを大切にしてるんです。その方が仲間と何でも話せますし。だから、レーア様もいつものレーア様らしくいて下さいね」


 一番最後に声を掛けてくれたのは、私と同い年くらいで黒髪がとても美しい天使だった。見た目は少し大人しそうに感じる。でも、掛けてくれた言葉は非常に力強くハッとさせられた。


「えぇ!ありがとうございます」


 ちょっとした有名()とはいえ、嫌な顔ひとつせずに受け入れてくれる。そのことがすごく嬉しかった。なんだか、心がとても温かくなっていくのを感じた。

 私がもし、こんな風に素直に気持ちを出せていたら……本来の自分でいたなら、クロ君を傷つけることもなかったのかな。天使の皆から、とても大切な事を教えて貰っちゃったな。


「先輩、すみません。わたしも自分の仕事がありますので、ちょっと離れますね。また後で来ますから。それじゃ、皆!レーア先輩のことお願いね~!」


 そう言い残して、元気に手を振りながら駆けていくセメレー。よし!くよくよするのはもう終わり!いまは仕事(こっち)に集中しなきゃね!



――その日の夕刻


「いやぁ!初めてにしちゃ上出来だぁ!さっすがレーアだな!」

「ほんとほんと!アタシ、てっきり神衛隊をクビになったのかと思っちまったよ」

「まだ2000万歳なんだろう?どうでぇ?本当に工房(うち)に就職しちまうってのはよぉ?」


 まだ初日なのに、あれからすっかり皆と打ち解けることができた。気さくに声を掛けてもらえるし、なんだか楽しいな。


「ありがとう、皆さん。そう言ってもらえて嬉しいわ。でも、いまはまだ辞めるわけにはいきません。この力、天界の防衛のために使うことが使命だと思うんです」

「そうですよ!先輩の能力はもの凄いんですからね!ていうか、ポエルさん!?先輩に向かってなんで呼び捨てにしてるんですか!?」


 その声に振り向くと、セメレーが仁王立ちでポエルさんを睨んでいた。


「ちょっとちょっと!いいのよ。私がそう呼んでくれるように頼んだの」

「えぇ~っ!?」


 大袈裟に見えるくらい驚き、私を凝視する。


「んだよ?レーアがどうしてもって言うから……なぁ?」

「えぇ!だって、働かせてもらってるんだもの。お客さんとして来てるわけじゃないしね。十日間だけだけど、ここの従業員よ!」

「そうですかぁ?まぁ、先輩がそう仰るならいいですけど……」


 そう言いつつも、まだどこか納得のいってなさそうな様子ね。ほんとに別に構わないのに。


「すみません、先輩。結局、戻ってくるのが遅くなってしまって」

「大丈夫よ。皆さんにとても良くしてもらったの」

「そうだ!今夜は先輩の歓迎会ですよ!昼間、父と母に連絡したら、ぜひやりましょうってすごく乗り気で、食べ物もたくさん用意してくれたんです!来てくれますよね?ね!?」

「ありがとう。それじゃ、せっかくだからお邪魔しちゃおうかな」

「やった~!もちろん、皆も来てくださいね?ていうか、片っ端から誘っちゃってください!」


 セメレーがそう声を掛けると、色めき立つ天使の皆。


「きゃぁっ!太っ腹ねぇ!アタイ、畑に出てる連中にも声掛けてくるー!」

「待って。わたしも行くわ」

「おう!任せたぜ。じゃ、オレはこっちだ!」

「おれもちょっくら触れ回ってくらあ!」

「あ!みんな~!今日はお酒、飲み放題だって伝えて下さいね~!?」


 一目散に飛んでいく天使たちに向かって大声で叫ぶセメレー。それに呼応するようにあちらこちらで歓喜の声が上がるのだった。



――そして、時は過ぎて工房で過ごす最終日の夜


「今日で最後か……なんだかあっという間だったなぁ」


 セメレーと二人、ブドウ畑を一望できる小高い丘に腰を下ろし、独り言を呟く。夏の夜らしく、この時間になってもまだどこか暑さを感じる。時折、ひゅぅっと吹き抜ける柔らかな風。火照った肌をくすぐるような感覚と、ひんやりとした冷たさがとても心地良かった。


「レーア先輩、本当にありがとうございました。お陰様で助かりました」

「ううん、こちらこそ。とっても楽しかったわ。色んな経験をさせてもらったし」


 あの日から約十日間、私はすっかりセメレー一家にお世話になっていた。彼女のご両親にも働くことを快く承諾して頂けたし、何より、他の従業員の皆に受け入れてもらえたことがとても嬉しかった。


 工房内外の掃除から始まって、馬やその他の家畜の世話。ブドウの品質向上を目的とした 夏剪定 (グリーンハーベスト)。夏の終わり頃には収穫が始まるため、それの準備や前の年の葡萄酒の瓶詰め作業など。多岐に渡って作業に触れさせてもらえた。


「先輩、なんだかちょっと変わりましたよね?なんというか、神殿にいる時よりもずっと明るくなったような……」

「怖い顔をしていない?」

「そうそう!そうなんです!あっ……」


 言ってから、分かりやすく、しまった!という顔をするセメレー。


「ふふっ。いいのよ。自分でも驚くくらい気分が清々しいもの。あなたたちのお陰よ。ありがとう」

「先輩……」


 工房で働いてるうちに、それまで仮面をかぶっていた自分って何だったんだろう?見栄を張ることに一体、なんの意味があるんだろう?そう思うようになっていた。


「それにしても、クロ先輩とはまだ連絡つかないんですか?」

「うん……部屋にも行ってみたんだけど、帰った形跡がないのよね」


 クロ君が何処かに行ってしまった日から、私は仕事帰りに毎日、彼の部屋に行っていた。けれども、待っているのはいつも明かりの点いていない真っ暗な部屋。農耕研究所の方にも何度か行ってみた。ただ、そこの神や天使たちも彼の行先は聞いていないとのことだった。


「でも、大丈夫よ。表彰式の日を楽しみにしてるって話してたんでしょう?なら、きっと、もうすぐ帰ってくるわ」

「そ、そうですよね。先輩、クロ先輩と会うの怖くはないんですか?」

「そうね……正直、分からないの。きっと、以前の私だったら、うじうじして尻込みしてたでしょうね。でも――」


 隣で不安げな表情をして私を見上げるセメレー。その肩をぽんと叩き、言葉を続ける。


「いまは怖さよりも、逃げたくないって気持ちの方が強いかな。逃げ出してしまったら、応援してくれてる中隊長さんや第三大隊の皆、それに、あなたにも申し訳ないものね」


 セメレーを見つめると、彼女もまたニッコリと笑い返してくれた。


「きっと……きっと、上手くいきますよ!わたし、先輩たちのこと全力で応援しちゃいますから!」


 拳を天高く突き出し、瞳をキラキラさせながら宣言する彼女に思わず、苦笑する。でも、嬉しかった。そんな風に支えてくれる気持ちがとても温かで優しかった。

 私もクロ君を支えられるようになりたいな。でも、その前にまず、きちんと謝らなきゃ。誠意を込めて謝ろう。もし、許してくれなかったら……出直して何度でも謝ろう。そう心に固く誓う。


 ふと空を見上げると、夏にしか見られない星座がいくつも光り輝き、夜の闇を幻想的に演出していた。その中でもひと際、目立つ赤い星。真っ赤に燃え盛るあの星はさそり座(スコーピオン)の丁度、心臓部に位置している。

 クロ君、いまどこにいるの?何をしているの?私、分かったの。私にとってあなたは、心臓といってもいいくらい大切なのよ?いつか、一緒に星を見に行きたいな。来年の今頃、あの赤い星(アンタレス)を見に行けたらいいな。


◇◇◇


――レーアの休み明け、神殿にて


「なぁ、レーア様なんだけどさ、どうしたんだろう?なんだか柔らかくなった感じがしないか?」

「あー!それ、わたしも思った!前はきりっとしてカッコイイって感じだったけど、どこか冷たい印象もあったの。でも、いまはもちろんカッコイイんだけど、可愛いって感じもするし……」

「やっぱり、そう思う?変わられたわよね!?こないだなんて、レーア様からお昼一緒にどう?なんて誘われちゃったのよ!?もう私たちびっくりしちゃったのなんのって!」



――第三大隊、待機所兼休憩所にて


「レーア様、一体、どうしたんだ?休み前といまとで全く違わないか?話し方も女っぽくなったしさ」

「みんな、それは感じてるな。神殿内部でも大隊長の話題で持ちきりだよ。なんというか、気負いすぎてなくてすごく自然体なんだよな」

「厳しいところは変わってないけど、それだけじゃなくて、女神らしい気遣いもしてくれるしな。あれは惚れるぜ……」

「ほんとだよな。あーぁ、あのクロノスとかって男さえいなけりゃなぁ」

「だよなぁ。でも、あいつ……時々、すっげー美味い食い物、差し入れしてくれたりすんだよな。すっげー良いヤツだよ。マジですっげーよな」

「お前、すっげー言い過ぎ。でも、分かる」


 大隊長室へ向かう途中、部屋の前を通ると、隊の皆がやけに静かだった。どうしたんだろう?


「あら、皆、どうしたの?しんみりしちゃって。何かあったの?」


 気になって声を掛けると、皆、ビックリしたように体を硬直させ、一斉にこちらを向く。


「な、なによ……?」

「ハッ……!い、いえ。何でもありません!」

「そ、そうなんです。単に馬鹿話をしていただけでして……」

「そう?なら、いいけど。困ったことがあるんだったら、何でもいいから私に言ってよね?頼りないかも知れないけど、皆のこと、大切に思ってるんだから」

「「「「はーーっい!!!」」」」


 すっごく良いお返事。ふふっ、初等部の子供たちみたい。


「あと、暑いんだから訓練も無茶しないで、適宜、休憩取るのよ?今日、蜂蜜レモン用意しといたから。私の手作りで悪いんだけど、良かったら食べてね?」

「「「「はあぁーーーーっっい!!!」」」」


 さっきよりもっと良いお返事がきた。一体、どうしたんだろう?


「じゃあ、また後で訓練場行くわ。しっかりね!」


 そう言って扉を閉めるも、その瞬間、中からもの凄い雄叫びがしてビクッとしてしまった。な、なに!?なんだか感極まったようなそんな声なんだけど……!?



――数日後、神殿にて~昼休み~


 午前中の訓練が終わりお昼も食べ、中庭のベンチでホッと一息つく。すると、同僚と歩いていた中隊長さんが私を見つけ、一人こちらへとやってくるのが見えた。


「レーア様、お疲れ様です。調子が良いようですな。神力が充実してましたぞ?」

「えぇ、ありがとうございます。これもあなたやセメレーのお陰です。肩の力が抜けた感じがするんです」

「おぉ!先日、話にお聞きしたあのワイン工房のお嬢さんですな?いや、あそこの葡萄酒は実に美味いもんです。技術だけではなく、きっと作り手の()柄が素晴らしいのでしょうな!」


 私もそう思いますよ、と微笑むと、彼もまた嬉しそうに笑い、隣いいですかな?と目で訴えてきた。一人分横にずれると、よっこらしょの掛け声と共にベンチが軽く揺れる。


「ところで、彼と連絡は……?」


 気を遣ってか小声で尋ねる彼に、静かに首を横に振る。


「そうですか……」

「でも、いまはそれ程、悲観してないんです。明日の表彰式には戻ってくるようなことをセメレーに話してたそうなんです。だから、きっと帰ってくると思います」

「そうですな。そう言っていたなら、きっと戻ってくることでしょう。彼に……会えるといいですな」

「はい」


◇◇◇

 

――表彰式

 数百万年に一度行われる。天界の様々な分野における功績に着目し、顕著な活躍もしくは貢献をした神や天使たちを表彰する場。

 今回は先の大戦関連が多いものの、それだけではなく、天界における農産業、畜産業、醸造業、林業、工業などの、長年にわたり貢献された方々も表彰予定とのこと。ちなみに、神衛隊からは戦場で見事な指揮を執られた総指揮官、それから、各大隊長及び中隊長が壇上へと上がることになっている。


 いよいよ、明日ね。クロ君、戻ってきてるといいな。私も神衛隊第三大隊長として恥ずかしくない振舞いをしないと。

 それにしても、はぁ……せっかくの表彰式なのに、また鎧を着ないとならないなんて。歴代の神衛隊の中にも私みたいな女神はいたんだけど、公の場に姿を現す時はいっつも皆、(あれ)なのよねぇ。なんで誰も疑問に思わなかったんだろう?

 

 なんて思っていると、突如として天啓が閃く。過去の皆がそうだったからって、別にそれじゃなきゃダメって決まりはなかったはずよね?


「よ~し!自分らしく決めてみちゃおっかな!」

今回もご覧下さってありがとうございました。

レーアはワイン工房での体験から、本来の明るさを取り戻し、

自分らしくいることの大切さを再認識したようです。

そして、迎える表彰式!

レーアの秘策とは……!?


次回もご期待下さい☆☆

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