48.流れ星と月と、芽生える気持ち(中編)
アクセサリー屋さんで出会った天使のお姉さんの店員さん。
果たして、彼女の言う言葉の真意は!?
アクセサリー屋さんにやって来た僕たち。そこで、アルテミスが落とした財布を拾っておいてくれた天使のお姉さんの店員さんと出会うことに。
僕が言った『地球』という言葉に反応して、驚き涙ぐむ彼女。これは一体……!?
「お姉さん、どうしたの?泣いてるよ?お腹痛いの?」
心配そうなアルテミスの声に涙を拭い、笑顔を見せる彼女
「ううん、違うのよ。ごめんなさいね。いきなり泣いたりして」
「地球をご存知みたいですが……何かあったんですか?もし、僕たちで良かったら話聞きますよ?」
「お姉さん、お財布見つけてくれたし、何かお返ししたいな。わたしたちで良かったら教えて?」
僕とアルテミスの申し出に一瞬、驚いたような顔になる。でも、すぐににっこりと優しく笑って、ありがとうございます、と一礼する彼女。
「見ず知らずの方にこんなお話をしてしまっていいのか分かりませんが……実は私、地球に転生経験がおありになる方を探してるんです。それで、地球のことでお伺いしたいことがありまして――」
「すみませーん!これの虹色のが出たって聞いてきたんですけど、ありますかぁー?」
「あっ、は~い!少々、お待ち下さ~い!」
話し出そうとしたところに、お客さんの女の子から呼ばれる彼女。まぁ、忙しいよね。やっぱり。
「すみません……あの!今夜、お時間ありませんか?七時にお店が閉まるんです。それで、もしよろしかったら、その後で話を聞いて頂けませんか?」
今夜か……今夜はちょっとなぁ。
「初対面の方にこんなお願いをして申し訳ありません。でも、私、どうしても地球の話を伺いたいんです!」
切羽詰まったような表情で必死に頼み込んでくる彼女。ふと、アルテミスを見ると、困惑しているような眼差しで彼女を見つめていた。僕の視線に気が付くと、どうしよう?とその揺れる瞳で語りかけてくる。
話を聞いてあげたいのは山々だけど、せっかくのデートだしな。アルテミスの肩を優しく抱き、大丈夫だよと耳元でささやく。それから、頭を下げる彼女に向き直った。
「あの……大変、申し訳ないんですが、今日はもう予定がありましてちょっと時間が取れないんです」
「お姉さん、ごめんなさい。この後はどうしてもダメなの……」
僕たちの言葉にゆっくりと顔を上げ、残念そうな表情を見せるもすぐに笑顔になって頷く。
「いえ、こちらこそ無理を言って申し訳ありませんでした。いまのことは忘れて下さい。せっかくお買い物にいらして下さったのに、大変失礼しました。すみません、ちょっと失礼しますね」
そう話すと軽くお辞儀をして、さっきのお客さんの方へと駆けていってしまった。
「ちょっと可哀想だったかな」
「うん……でも、今日はわたしとお兄ちゃんの時間なんだもん」
そうだよね。彼女が地球の何を聞きたいのかは知らないけど、優先するべきはアルテミスだもんな。
「お兄ちゃん、今日はダメだけど、明日ならいいんじゃない?」
「えっ」
「あのお姉さんのお話、聞いてあげて?だけど――」
ニコッと微笑むアルテミス。
「浮気はダメだよ?」
「えぇっ!?そ、そんなことしないよ!」
なぜか、しどろもどろになる僕なのだった。
―― 一時間後
あの後、少し店内を見て回った僕たちは店を後にして、近隣の店に向かうことに。そこには女の子が好きそうな雑貨や洋服がたくさんあって、アルテミスと一緒にショッピングを楽しんだ。
そして、いまはまた最初の店に戻ってきたところだ。店内の様子を伺うと、さっきよりは空いているみたい。あの店員さんに声を掛けるなら、いまが絶好のチャンスかな。
「お姉~さん」
「はい、いらっしゃいませ!何かお探し――あら?アルテミスちゃん!?それに、さっきの……」
「ど、どうも。流星です」
「あ、あら。失礼しました。流星さん。どうされたのですか?何かお気に召したものがおありになりました?」
さっきの落ち込んだ様子は微塵も見せず、明るく接客に努める彼女。
「え~と、ま、まぁそれもあるんですが……」
「お兄ちゃん、何か買うの?」
「え?う、ううん。ちょっと気になったのがあっただけだよ」
「そ~なんだ。あ!分かった~!お姉様にプレゼントするんでしょ?いいないいな!」
「そ、そんなところかな」
「まぁ!プレゼントですか?それは素敵ですね!どちらのお品物ですか?お贈りする方のことを教えてくだされば、色味などもご提案できると思いますよ?」
とっても楽しそうな顔をする彼女と、心底羨ましそうなアルテミス。
「あの!ち、違うんです!いや、違わないんですけど、それはまた後で相談させて下さい。いまはその……さっきの話のことなんですけど、もし明日でも良ければ話を聞けますので、ご都合はどうかなと思いまして。でも、明日はアルテミスはいなくて、僕一人になってしまうんです。だから、それでも大丈夫でしたらですけど……」
よく考えたらこれってナンパみたいになってない!?話にかこつけて誘うだなんて、変に思われなきゃいいけど。
「お兄ちゃん、顔赤いよ~?」
「えっ!そんなことないよ!」
にひひ、と笑って誰かさんそっくりの悪戯好きな笑顔を見せるアルテミス。
「本当ですか!?ありがとうございます!明日なら私、お昼までで上がれますから、良かったらお昼一緒にどうですか?その時に話を聞かせて頂けませんか!?」
すごい勢いでまくし立てる彼女にビックリして思わず、頷いてしまう。
「ありがとうございます。本当に嬉しいです!もしかして、それを言うために戻ってきて下さったんですか?」
「え、えぇ。それだけじゃないんですど、まぁそうです」
僕の言葉を聞いて感極まったのか、手をギュッと握り締めてくる。その艶やかな美しい手に思わず、見惚れてしまう。その時、袖の上からうっすらと透けて見えた彼女の腕。その部分にアザのようなものがあるのが見えた。ん?あれは……いや、待てよ?もしかして――
「ちょっと、お兄ちゃん!いつまで手を繋いでるの~!?」
……っ!?
「す、すみません!」
「い、いえ。こちらこそ、いきなり握ってしまって失礼しました!あんまり嬉しかったもので、つい……」
アルテミスの咎める声に、お互い慌てて手を引っ込める。
「もぅ!ごめんなさいは?」
「ご、ごめんなさい!」
「あと、わたしのこと好きって言ったら、許してあげようかな~?」
自分でそう言いながら、ふふっと少し恥ずかしそうに笑うアルテミス。
「な~んて――」
「え?そんなの好きに決まってるよ?だから、こうしてデートしたいなって思ったんだし」
「あらあら、まぁ!仲良しなんですね~」
「お、お兄ちゃん……」
「ん?どうかした?アルテミスのことは好きだよ?」
「も、もぅ~!そんなに言わなくてもいいったらぁ!……恥ずかしいよ」
すっかり顔が赤くなってしまったアルテミス。ちょっとおトイレ~!と店の外へと駆け出して行ってしまった。大丈夫かな?ずっと我慢してたのかな??
「とっても仲がよろしいのですね。妹さんですか?」
「えぇ、そんなようなものです。でも、僕にとって凄く大切な子なんです……そうだ!今のうちにちょっとご相談したいことがあるんですけど――」
◇◇◇
おトイレの個室に入ったわたしは、まだ熱い顔を触って心臓のドキドキがおさまるのを待っていた。
「もぅ、お兄ちゃんったら、あんなことお店で言うんだもん。あ~恥ずかしかった」
さっき、絶対にわたしのこと好きって言ったよね!?あれってもしかして、告白かなぁ?そうだよね!?やったー!わたし、お兄ちゃんのこと好きだし、もう恋人さんってことだよね?でもでも、お姉様のこともフォル姉様のことも千秋のことも大事で大好きだから、どうしよう?なんて言おう?
それに、わたし、一番遅れて恋人さんになったから、お姉様たちよりお兄ちゃんとあんまり仲良くしちゃダメなのかな……。
「あ!ちょっと待って!確か『神恋』第15弾、初回限定版のおまけがあったっけ!」
思わず叫んじゃった口を慌ててふさぐ。いけないいけない。静かにしなくっちゃ。え~と、どこだっけ?亜空間って便利だけど、ちょっと片付けないとすぐ散らかっちゃうな~……っと!あった~!
えへへっ、これこれ。『神様だって彼氏が欲しい!お姉ちゃんなんかに負けないわ!』のおまけ漫画『恋は後出しOK!』。
これに描いてあったもんね。後から好きになっても、彼の一番になればオールOKって!それに、お母様もよく、恋は争奪戦よ~って言ってたし。よ~し!わたし、頑張ってお兄ちゃんの一番になっちゃお~っと!
あれ?でも、そう思ったら、なんだか急にもやもやしてきちゃった。さっきのお姉さんとお兄ちゃんが二人で会うのイヤかも。お姉さん、とっても優しくて素敵な天使さんなのに、なんでこんな気持ちになるんだろう?そういえば、お兄ちゃんたちが手を繋いでた時もちょっとイライラしちゃったし。わたし、どうしちゃったんだろう?お姉様に聞いてみようかな……。
わたしから明日って提案しちゃったし、いまさら嫌だからダメだなんて言えないよ~……そ~だ!良いこと考えちゃった!夜に噴水広場に行って……ふふっ、これならきっと大丈夫だよね!
◇◇◇
「ごめんなさ~い!遅くなっちゃった」
トイレにしては遅すぎるなと少し心配に思い始めた頃、やっとアルテミスが店に戻ってきた。
「大丈夫?随分、時間かかってたみたいだけど、具合でも悪かった?」
「ううん、ちょっと道に迷っちゃって。ごめんなさい」
「そっか。それならいいんだ。安心したよ」
何でもなくてほんとに良かったな。
「あれ?お姉さんは?」
「あぁ、ラミエルさんなら他の系列店の様子も見に行かなきゃならないらしくて、さっき出てったよ。彼女、店長さんなんだって。ちょうど入れ違いになっちゃったみたいだね」
「け~れつてん?」
「ん?え~っと、ここのお店と同じような他のお店ってことだよ」
「へ~!お兄ちゃん、頭いいね!」
「そ、そう?そんなこともないけど。でも、ありが――」
「ラミエルさんって言うんだ?へ~」
……っ!?なんだ??何気ない会話からいま一気に温度が下がったような気がしたけど……アルテミスの視線が心なしか冷たいような?
「ど、どうしたの?急に」
「ううん、なんでもないもん。ねぇ!わたし、お店を見るのの続きがしたいな~!手を繋いで一緒に歩きたい」
まだ四時半過ぎか。全然、大丈夫だな。
「もちろん、いいよ?まだ時間はたくさんあるし、お気に入りのお店教えてよ」
「うん!」
弾んだ声で話す彼女の表情は明るく、とっても嬉しそうに店を出ていく。さっきの冷たい眼差しはなんだったんだろう?ラミエルさんの名前を口にしてたけど……もしかして、嫉妬かな?そんなわけないか。ははっ。
店を出ると先に出ていたアルテミスがこちらを振り向き、お兄ちゃ~んと僕を呼ぶ。太陽に照らされた黄金色の髪が神々しく輝き、幼いながらも艶やかな笑みで僕を見つめている。そんな彼女がとても眩しくてとても綺麗だった。
「本当に綺麗だ」
自分でも気が付かないうちに自然と口に出していた。
「えっ……お兄ちゃん、ありがとう。嬉しいな」
そう言うと、アルテミスは顔を真っ赤にして俯いてしまう。聞こえてたのか。恥ずかしいこと言っちゃったな。頭を掻きながら、変なこと言ってごめんねと謝る。すると、頬に熱を帯びた表情、そして、少し潤んだ瞳で彼女はハッキリとこう口にした。
「ううん、そんなことないよ!すっごく嬉しかったもん。わたし……お兄ちゃんの恋人さんになれて良かった!」
え?……えぇぇっっ!?
今回もご覧下さってありがとうございます☆
アルテミスとのデート回は後半へ向けて一気に加速します!
次回もぜひ、ご期待くださいね(*^^)v




