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1,賢者は中位職です。

「岩野は国語満点!?相変わらず凄いなーお前」

「……。」


「なんだよ、感じ悪。」

「まぁまぁ。岩野君はいつもそうじゃん笑」


またか…勉強に集中できないんだよ。


「てかさー、岩野君って勿体無いよねぇ。成績は常に学年一位。運動もできるし、顔もそれなりに良い。」


「なのに無口でガリ勉w」

「ねーw」


「集中できないからどっかいってくれない?邪魔。」

「はいはい。そういうところだぜ?w」


なぜこんな奴がこの高校に入れたのか。

本当に面倒くさい。


(さてと…帰ったらまた「アレ」の研究をするか)



「…………ついに…完成した、!これさえ成功すれば…」


ポ チッ


頭がフワフワする。不思議な感覚。そういえば、実験はどうなったんだ。失敗したのか…。


実験は死と隣り合わせだ。つまり走馬灯だろうか。

今までの思いがどっと込み上げてくる。


────なんでもできることが、良い訳じゃない。


幼い頃から英語をマスターし、大会やコンクールでいくつも賞をとり、勉強スポーツ、何をやらせてもある程度は容易にこなすことができた。しかし、一つの才能を磨き続けた人間に勝てるはずもなかった。幼き頃の夢は、サッカー選手になることだった。一方で母は反対し、学者になることを勧めた。結局、色々なことに手を出した結果、岩野珠月(いわの みつき)という器用貧乏の手本となるような人間が生まれた。


何度“すごい”と言われただろうか。

でも、そのすべては中身が空っぽだった。


「ホント、嫌なこと思い出させるよな。」


俺の意識はそこで途絶えた。

───────────────────────────


「ルゼ、ルゼ?」

「………ル、ゼ?」

「ああ…目が覚めたのね、!ルゼ…!」


「…ここは、?」

「ここはあなたの家よ。1週間寝たきりだっから心配したわ…」


(なんだろう。何か忘れているような…)


「えっと、失礼ですが…あなたは?」

「私はあなたの母よ。まだ記憶が曖昧なのね…」


「すみません。」

「大丈夫よ。しばらく1人で記憶を整理した方がいいわね。また来るから、何かあったら呼んでね。」


「えっと…ありがとうございます。」


バタン


「……………」

なんだろう、この違和感は…?


「研究…しないと…」


ん?研究、?聞いたことがある言葉……



「これは、過去の記憶…?」


じゃあここは…?どこだ?

今のこの状況はどうなっている。


「…そうか。」

思い出した。


言えることは、俺は転生した可能性が高いということ。

前世の俺は、異世界転生オタクといったところだろうか。

異世界転生をするためだけに日々研究をしてきた。


それが俺という訳だ。


「実験もまだまだ未完全だったし、成功するとは思わなかったのが正直なところだがな。それはさておき…」


この世界が異世界なのだとしたら、試さなければならないことが色々と出てくる。


まず、前世で俺が作った装置が全て正常に作動しているかどうかだ。


俺は前世でしっかりと異世界転生物の主人公になる為に、色々とコマンドを設定してあった。


例えば…

「ステータス展開」


───────────────────────────

《ステータス》

名前:ルゼリア・マルク・アストラル

年齢:14歳

職業:賢者

称号:転生者・異世界の創始者(マスター)・公爵家三男・器用貧乏(オールラウンダー)

スキル:武神の才・賢神の才・創神の才・全神の才

   ・火魔法Lv10・水魔法Lv10・土魔法Lv10

   ・風魔法Lv10・武術Lv10・体術Lv10 ………

──────────────────────────


うん、きちんと作動しているな。

このステータスも、すべて前世の俺がコマンドで設定したものだ。そして、明らかに強そうだ。


でも「器用貧乏(オールラウンダー)」は設定した覚えがないな。それに、武神、賢神、創神、全神の才はなんだ?


武神の才は武者の才、賢神の才は賢者の才と設定したし、創神や全神の才はそもそも存在しないはず。


ところどころ謎はあるが、最上位職の賢者はしっかりと俺の職として設定されているようだな。


この世界は、主に魔法が戦闘手段となっている。

武術や体術はその補助的な役割だ。


職業にもランクがある。


下位職:付与魔法師・回復魔法師など

中位職:魔法使い

上位職:魔導師

最上位職:賢者


俺の設定した限り、賢者は至高の職業だ。


そして下位職は、その大半が武術や体術の修業をする。

単独では戦うことが不可能だからだ。


無論職業ランクを上げることはできるが、それには生涯を懸ける覚悟と、果てしない努力が必要だ。


つまり、生まれたときにつく職業によって、ほとんどの人生が左右される訳だ。


「最上位職の賢者は、尊敬すべき崇高な存在。もう前世のような失敗はしない。魔道を極めるだけだ。」


その日の晩の夕飯にて─────


「ご心配をお掛けして申し訳ございません。お父様。」

「いや、回復したようでなによりだ。ほら、座れ。」

「ありがとうございます。」


「ところでルゼ。お前はもうすぐ15歳だ。そろそろ職業も決まってくるだろう。」


「そうですね。教会はすでに決まっているのですか?」

「ああ。楽しみにしていろ。王都の大教会だ。」

「大教会ですか!?」


「驚いたか?お前には素質があると思ってな。より良い職業を賜れるようにしておいた。」


「お気遣いありがとうございます。」

「大教会ならば、上位職程度の職は賜れるだろう。もしかしたら、最上位職だって夢じゃない。」


ルゼリアは良い父を持ったようだな。


確かに教会によって賜れる職業は多少なりとも変わる。

まぁ、俺の職業は賢者とコマンドで設定してあるがな。


そんなこんなで、ついに俺の15歳の誕生日がやってきた。


「ルゼ、誕生日おめでとう。」

「ありがとうございます。お父様。」


ついに俺の職業を披露するときがやってきたな。

父はどんな反応をするだろうか。楽しみだ。


「お父様。拝職の儀はいつ頃催されるのですか?」

「そう焦るな。もうすぐだから少し待っていろ。」


そしてついに、拝職の儀が始まった。


「ここに手を置きなさい。」

「はい、神父様。」


手を置くと、石板に文字が映し出された。


『職業:賢者』


「そんな、バカな…!」

「お父様、僕の職業は賢者のようですね。」


さあ、どんな反応を見せてくれるんだ。


「ルゼが中位職なんて、あり得ない!」


…………どういうことだ?


「お父様、何を言っているのですか?賢者は最上位職に分類される職業です。これはとても光栄なことで───」


「…ルゼ。お前は職業ランクの認識があやふやなようだ。」

「…それは、どういうことですか?」


「まず、この世界においては職業ランクというものが明確に示されている。ここまでは分かるだろう?」


「はい。そうですね。」


「そして、お前は賢者が最上位職だと言った。」

「はい。」


「そこが間違っている。この世界の職業ランクは、大きく分けるとこうなる訳だ。」


補職:付与魔法師・回復魔法師など

最下位職:魔法使い

下位職:魔導師

中位職:賢者

上位職:賢司

最上位職:賢聖


「分かったか?賢者は中位職だ。つまり、一般的にどこでもいるような、ありふれた職業なんだ。」


賢者が……中位職、だって?


「大抵の子供は、ここ大教会で儀式をすれば、上位職程度は賜ることができるはずなんだ。」


「…では、賢者という職業では、どの程度の仕事にありつけるというのですか?」


「一般的に、中位職の賢者では、冒険者となって働くか、どこかの貴族家に仕えるしかない。」


「そう、ですか…。」


「ちなみに、上位職ならば魔法研究所で働いたり、冒険者ギルドの幹部にだってなれる。一気に仕事の幅が広がるな。最上位職ならば、宮廷魔術師として王家に召し抱えられる可能性だって十分にある。」


「…では、僕はどうなるのでしょうか。」

「……うちは公爵家だ。大教会で儀式したというのに中位職を賜ったと噂が広まれば我が家の威厳にも関わる。」


「すまないが、お前には家を出てもらう。」

「………………。」


どうなっているんだ?設定が間違っていたのか?

とにかく、一刻も早く計画を練らなければ……




























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