第三章 新人狩り・少年・仲間の死 3
「決闘モードの舞台はアワーリティアと戦う決戦の地マールスではなく、決闘を受ける人間の世界。お前の想像力が生み出す世界なのであります」
決闘を受けた側、つまり僕が戦いの舞台を生成するまで少し時間の猶予があるということで、僕は真っ暗な世界で黄色い猫との会話を続ける。
「僕の?」
「そう」
黄色い猫は僕の頭を撫でる。
「決闘を申し込む側は相手に戦いを挑むので、決闘モードでは決闘を受ける側の世界で戦うことになるのは当然理解できることなのであります。その結果、決闘を受ける側の方が自分のテリトリーで戦うことができ、有利に戦うことが可能な設定にすることが可能なのであります。吾が輩はこれを世界がバランスを保つための原理という理解しており、保有ラピス量の差があるベテランが新人を一方的に攻撃できない制約にもなるのであります」
「ただ、その火野ってやつは、なんで僕に決闘を申し込んだんだ」
黄色い猫はうなずく。
「うむ。火野千世子は団体行動を好まず、お前たちがいるトキワ荘に属していない。ただ、《夢を叶えるもの》であることには変わりになく、常にアワーリティアと戦っている。ただ、必ず、新人が生まれると、新人狩りを仕掛けてくることで有名なのであります」
「なんのために、仲間同士だろ」
「おそらく、新人が自分に歯向かわないようにするためであります。よくある〇〇業界に入った新人に対して、上下関係を見せつけるために、部下にパワハラをして、従順な配下にしようとする上司ってことなのであります」
なんだそりゃ。
「ただ、過去の戦いにおいて、火野にボコボコにされた《夢を叶えるもの》は三人いて、みんな殺されたわけではなく、いたぶられて,ムーンストーンを回収されて、戦いは終わっているのであります。とにかく、攻めではなく、守りが肝心なのであります」
〔《夢を叶えるもの》と《夢を叶えるもの》とのバトルを開始します〕
守りを固めるということであれば、要塞を築き、その中心部で火野千世子を待つか、日本の城を築き、色々なギミックを使って、応戦して籠城するか。
逃げるのを優先するのであれば、迷路のような構造体を作り、逃げ回り続けるか。それとも極限まで素早さを上げて逃げ惑うか。
黄色い猫との会話を長くしてしまったため、あまりアイデアを打ち出せないまま、僕は籠城することに決めた。
天守閣に僕はいる。
日本でいう普通のお城の最上階だ。
天守閣は板張りの床で、四方の窓は今は開けてあるが、格子があり、人の出入りはできない。その窓から城下町――ただ、僕の描いた世界なので、今回は町並みはなく、だだっ広い大地に巨大な城だけがある――を見下ろすことができる。
和風のお城の周囲には、城壁を五層ほど設置し、今回は出入り口も作っていない。だから、城壁を突破するためには城壁自体を破壊しなければならない。つまり、ムーンストーンを消費する必要がある。
アワーリティアとの戦いを含めて、シンプルに考えれば、僕らの戦いはムーンストーンの奪い合いだ。
《夢を叶えるもの》は能力強化・必殺技の使用によりムーンストーンを消費し、相手にダメージを与えることで、ムーンストーンを回収する。
二回ほど戦っても自分自身のレベルアップということもないし、基本的なステータスはきっと一緒だ。アワーリティアと多く闘い、自身が保有するムーンストーンが多い方が能力強化に消費するラピス量を多く使うことが可能で、つまり、より強い個体となる。
ただ、僕の保有するムーンストーンは二戦目までで2500ラピス程度。おそらく火野ってやつよりも、圧倒的に僕のムーンストーンの保有量は少ない。
だって、新人だもの。 by 真木みつを
火野はただの新人狩りだ。その新人のちょっとしたムーンストーンを奪うために、この城を攻略するだけで、赤字になるはずだ。そうすれば、きっと僕との戦いを諦めてくれるはず――
ドーン
という爆音とともに,最外層の城壁が一瞬で崩れ落ちるのが見えた。
そして、さらに――ドーン
二層目の城壁が崩れ落ちる。
ドーン――ドーン――ドーン――
次々に一気に五層の城壁を突破され、一人の女性が、和服姿の女性が城の入り口に立ち、こちらを見上げている。
大丈夫だ。
まだ天守閣まで登ってくるには時間がかかる。
「秘伝! 九式! ヤマタノオロチ!」
大きな叫び声が聞こえると、激しい爆発音が聞こえ、みしっという音とともに、城が一気に崩壊し、僕は落下する。




