【1】神のお遊戯(不知火琳)
夕陽が綺麗とはいえないが、空をオレンジ色に塗り替えるのは幻想的ともいえる。
「じゃ、私もう帰るね。市花も早く帰るといいよ、最近は変質者の話でいっぱいだからね、被害者が17人を超えたらしいから、しかも皆私たちのような中学生だって」
誰もいない廊下に憂の声が一際響く。
「うん。じゃあね、また明日」
市花は、急いでカバンに理科の教科書とノート、数学のノートとワークを突っ込んでよろめいた足取りで教室のドアを潜ったが、カバンがドアに当たってしまい、豪快に頭から倒れてしまった。
「い、痛い!通るスペースが狭すぎるんだよ!」
市花自身自分が何を言っているのかよく分からなかった。だが意味不明な事だとはわかる。
「···帰ろ」
誰もいない廊下で、バカみたいな事をやった自分が恥ずかしい。
市花は埃が着いたかも分からないのに尻をはたいて、下駄箱まで走ろうとしたとき、誰かに左手を捕まれた。
「ッ!?」
いきなりのことで、何が起こったのか分からなかった。だがその考えるのも数秒にして終わり。バチッという重い音を立てた後、市花の体に電流が走ったのだ。
「な、んで···?」
そんな言葉を吐いた後、市花は気を失った。
***
「···エルスさん、私はこれが正しいとは思えません。なぜこんなことを···?」
どこからか声が聞こえる、その声は左からだろうか、考える度に分からなくなる。
「不知火琳さん。あなたは神を信じていますか?」
「···」
高い声の、誰かへの質問で会話が途切れた。
そこで市花の意識はハッキリとする、ここはどこだ?
「天野市花さんが目を覚ましたようです。立つのを手伝ってあげてください」
その声と共に、誰かが市花の両手を引っ張った。その後脇の下辺りを強く掴まれ、気がつくと市花は立っていた。
「こ、ここは···!?誘拐ですか!?」
辺りを見渡すと真っ白の部屋に、ドアが1つあるだけの空間だった。
不安気に辺りを見る市花の目に入ったのは、不知火琳だった。
「あなたはたしかクラスメートの···宮野さん!?」
「不知火よ。クラスに宮野なんて苗字の人はいないわ」
そういえばそうだった気がする。市花はこんがらがった頭を整理するため軽く深呼吸をした。
「不知火さんがどうして?」
「あのー。時間がないので、そろそろ『ノロイアイ』のルール説明をしてもいいでしょうか?」
2人の会話に、声の高い女性が終止符をうった。その女性はノロイアイと言いながら。
「···ノロイアイってなんですか···?」
「ご存知ないのも当然でしょうね、だってこのノロイアイは第二回目ですから。一回目は、遠くのイーズランドという場所で開かれました」
イーズランドというのは聞いたことがある。市花たちの住む福根市から、丁度南西へ2万3000km進んだ場所にある。
だが、そこでは人身売買や大量殺人が相まって、世間では口に出さないようになっている。
「では、ルール説明をしますね。天野市花さんと不知火琳さんは今日から『呪詛者』です。呪詛者には、呪詛を使う能力と権利が与えられます。そしてその呪詛を使って、他の呪詛者を殺してください」
「え···?ころ···す···?」
この女性は「呪詛者を殺してください」と言ったのだ。市花はその『ころす』という意味が分からなかった。
「はい。殺してください。それがあなたたち呪詛者に課せられた使命です。殺し方は問いません、毒殺、暗殺、銃殺、撲殺、呪殺、絞殺···中でも、特に呪殺は呪詛者に取っての得意分野、ということで、2人に『呪詛符』と呼ばれるカードを5枚ずつ渡します。1枚で1回なので、呪詛符がなくなれば私のもとに来てください。新しい呪詛符を差し上げます」
「ま、待ってよ!どういうこと?そんな···どうして私が人を殺さなきゃいけないの!?」
当然の反応だ、誰が好き好んで人を殺すものか。市花は自分が何を思い言ったのか、頭に血がのぼっていて分からなかった。
「市花、行きましょう。これは神様のお遊戯なのだから」
抵抗する市花を琳は強引に引っ張った。
こうしないと、琳の望みが叶えられないということは、市花には分からなかった。
「不知火琳さんの呪詛ナンバーは1で、天野市花さんの呪詛ナンバーが2です。7人揃い次第、ゲームを開始します。それまでに心の準備をすることですね」




