11.タダ働きの報酬
オレはともかく、高津の野郎はきっちりお泊りとなってこってり絞られていた。なんといっても未遂とは言え最近流行の犯罪に加担してたのだから当然だ。
背後にはやはりトクリュウが絡んでいた。さすがに末端ひとり捕まえて何か聞き出したとしても一網打尽とはいかないが、犯罪を未然に防げたのは良かった。
高津幸一は未遂なのでおそらく不起訴だろう。それでもまだグループへ戻るのであればもうこれ以上どうすることもできない。
できればのどかの気持ちを受け止めて改心してくれることを望むだけだ。そののどかは、高津が実家へ戻るのなら休学してしばらく様子を見るとまで言っていた。
幼馴染だから見捨てられないというよりは、どう考えても強い愛情があるように思える。
色恋沙汰にはてんで縁のないオレには良く理解できない感情ではあるが、その話を聞いていたルナはいたく感動し、のどかと長々話し込んでやがった。
◇◇◇
そして翌日――
「おー痛てえ。アノヤロー、力いっぱいぶん殴りやがって。まったく探偵は――」
「探偵は楽じゃねえ、って? ホント考えてたよりもずっと大変なのかもね。でもかっこよかったよ? 見直しちゃった」
「見直したってことは今までは見くびってたってこった。あまり嬉しかねえなあ」
「もう、ホント素直じゃないんだからさ。ほら、氷嚢交換するから貸して。そろそろ氷溶けちゃってるでしょ」
そういうとルナはオレから氷嚢をひったくった。おそらくその下からはまだ赤身のしっかり残る頬が現れているはずだ。
幸い口の中までは切れていないようだが、それでも痛いことは間違いない。
「まだ結構腫れてるねえ。何日かかかっちゃうんじゃない? その間はお酒もダメだからね」
「けっ、こんなの屁でもねえぜ。せっかく解決したんだから祝い酒を飲まねえでどうするってんだ」
「だーめ、痛みだって引いてないでしょ? ほれほれー」
「いてててて、突っつくんじゃねえよ。まだ殴られたばかりなんだから痛てえに決まってんだろうが」
「そうだよね、かわいそうに。かわいそうって言えばのどかちゃんさ、休学するっていってるけどいいのかなあ」
「そうだなあ。オレには野郎一人のために人生を捻じ曲げるのはどうかと思うわ。んでもよ? それもきっと本人の人生なんだろう」
「そうかもね。あの若さでそれだけ大切な相手がいるなんてステキな話ではあるから応援したいかな」
「若さゆえ、かもしれんぜ?」
「もう、ロマンがないんだから―― 男女の関係って不思議なものなんだから、大人なら温かく見守って応援してあげないとお仕置きしちゃうよ? ――――」『チュッ』
「おいっ! 触んなって言っ―――― おい? 今何しやがった!?」
「ばーか、お酒呑みに行ったら許さないからね! はい氷嚢、ちゃんと冷やしとくのよ!」
ルナはそう言いながら氷嚢をオレに”戻し”こちらに目をくれないまま駆け出して行った。数秒後、防火扉の締まる音がしてオレは我に返る。
浮かしかけていた腰を元へ戻してもまだ放心状態のまま、ぬるくなっている氷嚢を頬へと当てて呆け続けるオレだった。
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