第一話 転生
俺は今48歳で引きこもっている。俺は高校のとき、学校でデブだからといじめられ、殴られたり、靴を捨てられたりした。だから僕は引きこもった。だが、親に家から追い出され、街中を歩いていた。すると目の前でトラックが女子高校生にぶつかろうとしている。そこへなぜか俺は突っ込んだ。俺は、どうなるのだろうか、、、
目を覚ますと、でかいおっぱいがあった。触ろうとしたら、なぜか手が届かない。なぜだ。
隣にいた男性、名はエリオット・グレイが言った。「この子の名はヘンリー、ヘンリー・グレイだ」
おっぱいのデカい女性、名はセシリア・グレイ。彼女はこの新しい人生の母親だ。
この世界でやりたいことは2つ。魔法があるなら魔法、そして、引きこもりをやめて、女遊びだ。
グレイ家はこの王国の王家につかえる貴族の家系だが俺が生まれたこのグレイ=クロス家は騎士爵でとてもちっちゃい村の部隊長をグレイ=ゲイツ伯爵家により任されている。
俺がヘンリー・グレイとして新たな生を受け、自分の足で屋敷を歩き回れるようになった頃。グレイ=クロス家が治めるこの小さな村は、とてものどかな場所だった。
ある日のことだ。俺は自室の窓から、ぼんやりと外を眺めていた。前世の48年間、引きこもって窓の外を見るのはただの暇つぶしでしかなかったが、今日目に飛び込んできた光景は全く違った。
村の広場で立ち話をしている女性が、手元からふわりと水を出して桶を満たしていたのだ。別のおじさんは指先から小さな火花を出し、葉巻に火をつけている。
「……魔法、だよな、あれ」
心臓が早鐘のように鳴った。
魔法が存在する! 俺がこの世界でやりたいことのトップにある「魔法の習得」が、現実味を帯びた瞬間だった。
その日の午後、俺は父親であるエリオットの書斎に忍び込んだ。騎士である父は普段剣の手入ればかりしているが、本棚の隅には埃を被った『基礎魔導書』があった。この世界の文字は、転生特典なのか不思議とスラスラ読むことができた。
本をめくると、初級魔法『ウォーターボール(水球)』の項目があった。魔導書によれば、魔法を使うには体内の「魔力」を感じ取り、「詠唱」によって事象を変換する必要があるらしい。
俺は誰にも見られない裏庭の隅っこへ移動し、本に書かれた通りにお腹の奥の温かい塊――魔力を練り上げる。
「清らかなる水よ、我が手に集いて球となれ。『ウォーターボール』!」
ぽんっ、と軽い音を立てて、掌の上に野球ボールほどの水球が浮かび上がった。
「おおっ!」
感動のあまり声が出た。俺は魔法使いになったのだ。
それから夢中になって何度もウォーターボールを撃つうちに、俺はあることに気がついた。
「これ、わざわざ呪文を口に出さなくても、魔力の動かし方とイメージだけでいけるんじゃないか?」
魔導書には「詠唱は必須」と厳重に書かれていたが、すでに体が魔力の流れを覚えている。俺は目を閉じ、掌に水が集まる様を強くイメージし、魔力だけを一気に放出した。
バシャァッ!
目を開けると、先ほどより一回り大きな水球が現れ、地面を濡らしていた。無詠唱魔法の成功だ。
「……僕にだって、この世界ならできるんじゃないだろうか」
ふと、そんな言葉がこぼれた。
前世ではデブだと苛められ、靴を捨てられ、ただ逃げ隠れて生きてきた。だが、この世界には魔法がある。やればやるだけ自分の力になる。心の中に、今まで感じたことのない確かな自信の芽が顔を出していた。
完全に調子に乗った俺は、さらなる高みを目指した。
魔導書のページをめくり、中級魔法『ウォーターバレット(水弾)』を見つける。流石に中級を無詠唱でやるのは怖いので、ここはしっかりと詠唱することにした。
「大いなる水の精霊よ、我が魔力を糧とし、敵を穿つ水の弾丸となれ!」
ありったけの魔力を両手に込める。するとバチバチと空気が鳴り、掌の前に巨大な水の塊が恐ろしい密度で圧縮されていく。
「あれ? ちょっと待って、これヤバ――」
『ウォーターバレット』!
ドゴォォォォォン!!!
凄まじい轟音と共に放たれた極太の水の塊は、標的にしていた木の幹を消し飛ばし、そのままの勢いで我が家の離れの壁を見事にブチ抜いた。
土煙が舞う中、半壊した建物を前に俺は呆然と立ち尽くした。
「ヘンリー!? 一体何事だ!」
「いやぁぁっ! ヘンリーちゃん!」
音を聞きつけ、父エリオットと母セシリアが血相を変えて飛んできた。俺の手から立ち上る魔力の残滓と、半壊した壁。言い逃れは不可能だった。
こってり絞られると覚悟したが、事態は思わぬ方向へ転がる。
「まさか、幼子でありながら中級魔法を、しかもこれほどの威力で放つとは……」
父は半壊した壁を見て、怒るどころか戦慄していた。
結局、俺が魔法を使うことは両親の公認となった。だが、ここは騎士爵家だ。
「ヘンリーよ。お前には凄まじい魔法の才能がある。だが、我が家は代々騎士の家系! 父の跡を継ぐためにも、魔法にばかり頼らず、剣を振るう強さも身につけねばならん!」
こうして、魔法の修業を許される代償として、俺は重い木剣を握らされることになった。
引きこもり生活から一転、汗水垂らして剣術と魔法の特訓に明け暮れる日々。どうやら、俺のもう一つの目標である「女遊び」への道は、まだまだ遠そうである。




