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気を取り直して探索を再開しよう。
そうね……、手あたり次第に探索するって言ったけど、それは後回しにして重要施設を調べようかしら。
考えたくはないけど、この足止めがどれだけ続くかわからないわ。だとしたら生きのびるためにも必要な施設を確保しておかねば。
まずは食料ね。学食を覗いてみましょう。とりあえず米と卵と醤油があれば三年戦えるわ!
いや……、だめか。生卵が三年ももたない。せいぜい一週間といったところだろう。
「思ったよりも厳しい戦いになるかもしれないわね」
思わずため息がでてしまった。しかし嘆いていても仕方がない。とにかく学食へと向かった。
広い学食には人の気配もなく静まり返っていた。どうやら学食のおばちゃんたちも帰った後のようね。私たちの争いごとに巻き込まなくてホントよかったわ。それにこれで厨房あさりを好き放題やりたい放題できるしね。
さて、厨房を探らせてもらうとしますか。うーん、私はひとり飯派だったし、あまり学食のことは知らないのよね。でもパーティーメンバは同じくひとり飯派のラカンと学校とは無関係のジャックだしなあ。
「学食くらい使ったことある」
ラカンが先頭にたって歩き始める。
なん……だと……。たったひとりで学食を利用したというのか!? この娘っこ。
私はラカンのことをみくびっていたのかもしれない。ラカンなら千年に一度現れるという伝説のスーパーなボッチになれる可能性が――。
ラカンの冷たい視線が突き刺さったので、そこで考えるのを止めた。
こうして厨房の奥に進んでいたところ、異音が聞こえてくることに気が付く。しかも独特の臭いまで漂ってきた。なんだ?
私たちは慎重に足をすすめながら、冷凍庫があるという厨房の奥を目指した。
どうやら異音の原因は私たちのお目当てである冷凍庫にあったようだ。
扉は大きく開かれたままで、さらには中にあったらしき肉がその場にはちらかり、ついでにそれを夢中でかっくらうワンコがいた。
しかもただの犬じゃないわ。巨大な犬よ。どれくらいデカいかというとチワワの軽く倍はあるわね。
え? それ普通の犬だろうって? うっさいわね。こういうシチュエーションだとこういう表現のほうが盛り上がるのよ。
だいたい大きさは普通でもアレは存在自体が普通じゃないのよ!
だって胴体が骨なんだもの。
私は声を大にして言いたい。食ったものはどこにいったんだと。