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さあ、授業も終わったし今日も楽しい修行のはじまりよ!
なんてテンションをあげないとやってられないほど成果がない。まあ、暴漢程度ならばどうにかできるかもしれない程度の自信はつけたけど。
問題は私の仮想敵は魔術師ってところよね。私がまったくかなわないラカンが、エドモンドに手も足もでなかったのを知る身としては、とても楽観視できる状況ではない。
まあ私はそのエドモンドに勝ったわけだけど、あれは偶然に助けられたっていうのがあるからねえ。
やはり体術で魔術に対抗するというのは難しいと考えるべきだわ。となればやはり魔術には魔術で対抗するしかないか。
しかし相変わらずハードな筋トレを続けているんだけど、私の魔術が目覚める気配はない。いったいどういうわけだ?
密室殺人の謎に立ち向かう迷探偵よろしく頭を悩ませていた。
そうこうしているうちに神社へとたどり着く。
境内にはすでに到着していたラカンの姿があった。ついでにそのラカンと向かい合うように立った男の姿も目に入る。
なん……だと……。
まさか私といっしょにボッチを脱出したラカンが、すでに勝ち組JKへの階段を駆け上がろうとしていたとは!?
いや、落ち着け私。ラカンに限って私を裏切るなんてないはず。
そうね……通りすがりの一般人かもしれないし、まずは相手の男のステータスをチェックよ。
ピピッ……、分類――ホモ・サピエンス・イケメン。
裏切ったわね、ラカン! 私が修行に疲れて爆睡している間に、自分はイケメンを捕獲していたってわけね! なんとうらやましいことを!
私は裏山カップルの会話を盗み聞きするため、コソコソと隠れながら接近を試みた。
「――なにを考えているんだ? お前の姉貴はよぉ」
「貴方には関係ない」
「関係ないですまされる問題じゃねえ。お前ら魔術師に舐められてんだよ。少しは反省しているかと思えば、一般人とおままごとか? 笑わせんな」
おやおや? なにやら雲行きがあやしいみたいだわ。
それに私が考えていた吐き出しそうに甘い関係ではなさそうね。ラカンの弱みをスクープして、私にもおいしい思いをと考えていた私の作戦は、発動されることなく終了してしまった。
それよりなにやら波乱の予感がするわ。
ここはお節介など焼かずに、このまま撤収したほうがよさそうね。