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桜吹雪とかけまして、恋心と解きます

 入学してから三ヶ月頃の事である。まともにカリキュラムがあるのか怪しい訓練の日々を送っていた我々は、東の国へとやってきていた。常春の国、前世であれば万年観光スポットとして盛大に観光客が訪れる事間違いなしである。


 どうやら四半期毎に東西南北の国へと赴き、訓練の成果を試すべく実際に魔物の討伐隊へと組み込まれるとのことらしい。別に盛大な自然破壊をやらかして中央を追い出されたとか、体のいい厄介払いといった面は存在しないと思う。


 あれ以来も訓練を続けたが、スキルこそ増え、磨き上げられたものの未だに正体の掴めない何かを斬る事は出来ないでいた。物というよりはむしろ流れとかに近いとは何となくわかってきたのだが、未だに精進が足りないらしい。

 なので訓練用に武器を申請したものの、精々が10本程度しか貰えなかった。木の切り倒しなども禁止された以上、属性を使えない私にはなすすべがないかに思えたが、ふと天啓が舞い降りたのだった。自分で使えなくとも、使える人間に協力させればよい。


 至極自然に忘れ去っていたが、よく考えれば推定友人ポジであったユート君は土属性。朝から晩まで死ぬ気で働くほど酷使しなくとも武器の100や200は容易に用意できることだろう。そんな渾身のギャグとともに説得してみれば、今回の合宿の間位ならとOKを貰えた。


 というわけで朝起きて修練、飯を食べて魔物狩り、昼を食べて魔物狩り、夜を食べてユート君を連れまわして魔物狩り、修練して風呂入って寝るという実に健康的な生活サイクルの確立に成功したのであった。ついうっかり自分が何のために修練しているのか忘れる程度には。


 もはや修学旅行の様相を呈していたわけであるが、こんなイベントで何らかの事件が起きないはずもなし。ましてシナリオ的には初めての外国など、明らかなフラグでしかなかろう。初実戦? 中央にも魔物くらいいるし授業に入っていた。


 だから、ついうっかり他のクラスの人間が明らかにレベルの違う魔物に襲われているのを見た時は非常に焦った。主人公になるなどと口にしておいてうっかり悲劇を見過ごしかけたなど、気が緩んでいたにも程がある。


 死人こそ出ていないものの、複数の生徒が満身創痍、重態に見える者すらいる中で、止めを刺される寸前の一人を抱きかかえて跳ぶ。生憎と打ち合って防げるような防御力もなかったし、斬った程度では助かりそうになかったゆえの非常措置。


 自分への不甲斐なさについ顔が厳めしくなる。抱えている人物を出来るだけ優しく地面に座らせ、腰に下げている剣……歪な片刃のそれを抜き放つ。薄く、鋭さのみを求めたようなそれは、簡単に言えば刀によく似た不完全な代物。


 こっそり持ち出した家の武器庫の中の宝剣と思しきそれを、更に砕けたと嘘をついて(折れはしたが)までこっそり鋳潰し、うろ覚えなんちゃって知識で鍛え上げた来歴がばれると非常に不味い不思議金属のそれを、苛立ち紛れに振りぬく。


 10メートルに迫る大型の魔物が、それだけで二つに両断される。飛ぶ斬撃が出せて刃の長さ以上の獲物が斬れぬ道理はない。木剣だとそれだけで耐え切れずに悲惨なことになるが、最近は金属棒でも折れずにいけるようになっている。


 振り返り声を掛けると、先ほど助けた女子は安心したのか気を失い、幾人かはへたり込んでいる。そちらの視線は助かったことへの安堵と驚愕、恐怖までは収まっていないもののそれは先程までの状況を考えれば仕方のないことだろう。


 こうして私は、自分でもフラグの存在にうっかり気が付かないまま事件の終わりを感じていたのだった。

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