4匹のドラゴン
男前に笑うローリエはトリシアにはとても頼もしく目に映った。
「ローリエさん~!」
「私の事はローリエでいいぞ」
ローリエはふふんとどことなく嬉しげである。
その横でギアが歯ぎしりをして睨んでいる。本来はあの立場に自分がいるはずだったのに…!
そんな弟を横目に、こころなしかしょげて見えるシュトにローリエは言った。
「シュト、君はもっと自信を持っていいし胸を張ってトリシアの横にいなさい。品定めをしたり値踏みをしたり試すようなことをする連中は阿呆の極みと言っていい。年嵩のドラゴンは君たちの事をしっかり見るしそれだけだからこそ、トリシアが支えなければいけないんだ。姑息な手を使う者は逆に自分の格を下げることになる」
頼もしい、頼もしすぎる。
しかしそう思うと同時にローリエが使いうる手段に一抹の不安を感じた。
何をするか分からないのは総会にいるドラゴンや人間も同じだが、漏れなくローリエも入るのだ。
なるべく穏便に物事が済んで欲しい。
「…まあ、今は不安の方が多いだろう」
ローリエはバツが悪そうにうなじをかきあげ目を逸らした。
トリシアを見ていると、何というか過去の行いを悔い改めなければいけないような、そんな純粋で真っ白なものが見える…そしてとても申し訳ない…気がする。
ローリエは乱雑に扱った手紙の束をいたわるように整えてトリシアに渡した。
「世界中のドラゴンにこの連絡が行き届くのはおそらくあと2カ月はかかるし、開催は次の夏だ」
手紙は全部で9枚あった。
「ドラゴニスタ総会って、何日間あるんですか?」
「おおよそ1カ月」
きっと足の調子はよくなっているだろう。松葉づえをついて歩き回るようなことはない。しかし、1カ月の間自分が孤立無援の状態で品定めを受けるような状態は精神的にまいってしまいそうだ…。
「私には無理です…」
目を伏せて弱音を吐いた。弱音というより、事実に近い言葉だった。
「シュトは胸を張っていればいいです。この子は正真正銘のドラゴンだし、なんて言ったってシャルロッテの子どもですから。でも私は母さんや父さんほどの知識もないし何と言っても軽んじられて当然の小娘だし…」
しりすぼみになる彼女の声をローリエは、無言でそれを聞いていた。
彼女もトリシアの言っている不安は分かった。自分だってトリシアの事を人間の小娘だと軽んじていたし、そのような目で見られる1カ月は苦痛に違いない。
「トリシア、ちょっとごめんよ」
ローリエが詫びを入れてトリシアのシャツのボタンを外し始めた。
「姉さん!頼むからセクハラは止めてくれ!女性だぞ!…ぐはっ!?」
顔を真っ赤にしてギアが抗議するのをクッションを投げつけて黙らせた。
「お前は見るな阿呆」
なすすべもなく呆然としていたトリシアの胸元までボタンを外したシャツの下から、きらめく逆鱗が露わになった。
ローリエはそれを愛おしげにそっと掬いあげてトリシアの目を見つめる。
「君の事を心の底から信じているドラゴンがここに少なくとも4匹いる。私とギア、そしてシュトラーフとシャルロッテだ」
期待している、ではなく信じていると彼女は言った。
「シャルロッテの事を知らない者はいない、ましてや彼女から逆鱗を贈られた人間が蔑ろにされていいはずがない。最初から自信がある者はこの世にいないし私は君の首から上の頭がただの飾りだとは思っていない」
シャルロッテは死んでもなお絶大な信頼を君に寄せている、と彼女は囁く。
「シャルロッテの事を、どうか忘れないで」
そしてローリエは恭しく跪き、頭を垂れた。
指先まで神経の行き届いた美しい動作に、鳥肌が立つ。跪かれたのがトリシア自身であっても。
「我々ノクテの一族はトリシア・F・ルルーの後ろ盾になることを一族を代表しお誓い申し上げまする」
足先からじんとしたしびれが血流にのって時速60キロの速さで体を駆け廻る。
ギアさえも唖然としてその様を見つめていた。
耳が痛くなるほどの静寂を破ったのは幼い子どもの声だった。
「それって、シュトにお友達が増えるっていうこと?」
ローリエは思わず肩を震わせて笑った。
「そう、そう言うこと。たくさん増えるよ。だから総会で君にお目通り…いや会ってもらいたいんだ」
さて、あとがきってどういうこと書けばいいのかな 笑
小さな子どものあどけない顔を見ていると、なんか謝りたい気持ちになることがあります
純粋過ぎて、逆にこっちが申し訳ない
ローリエの心境はそれに近いです
今回も読んでくださってありがとうございました!
次話も乞うご期待☆!




