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sheath‐鞘姫‐  作者: 肇川 七二三
誘拐(DParty編)
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誘拐犯と実際の彼女

「Dpartyっていう組織はドラゴニスタの抵抗勢力だって聞いたんだけど」

「それは全く違うんだよ、ドラゴンがこの世界の秩序を守るだの魔法を使うだのということにはたして僕たちが関わるべきか否か…」

「つまり、澄幸たちの言う『龍』のための枠組みが欲しかったの?」


また無言でこくりと頷く。


「僕たちはドラゴンじゃない、少なくともドラゴンの親がいた記憶はないから。『龍』っていうアイデンティティが目に見える形で欲しかっただけ。名前だって」


「D、Party?」


「そう、はじめはアジア圏だけで通じればいいと思って『龍雲会』って名乗ってたんだけど…」


そこではじめて澄幸は心からの笑いをクスリと小さくこぼした。


「…おっかない人たちがね勘違いをしちゃったんだ。ああいうのを任侠とかヤクザとか言うのかな、ジャパニーズマフィア。『うちのシマで断りもなく何してくれてんだにいちゃん』って龍の刺青をした人たちに囲まれて…ということがあったから横文字にしちゃった方がいいかもね、そうだね、って言う流れで命名した」


思い出し笑いが止まらない澄幸につられてトリシアも肩を揺らして笑った。


「穏やかじゃない」

「そう、とても穏やかじゃなかったね」


ただ、名前が欲しかったという些細な出来事にまさかジャパニーズマフィアと緊迫したハプニングに見舞われるなんて。

「あなた達のやりたいことはなんとなく分かった気がする。適当にひとくくりにされるのはおもしろくないし」


それと同時にトリシアは「DParty」の組織力の無さを感じた。


「スミユキは組織を作ろうとしたんじゃなくてサークルを作ろうとしたの?」

「そういうことになるのかな、上下関係とかルールとか、重い決まりごとに縛られるようなものを作るつもりはなかった、というのが正直なところ。ただ『龍』が『龍』として認められる枠組みが欲しかった。学生みたいな発想で笑っちゃうだろう?」


ずさんな組織統制は澄幸の望むものを叶えた産物。


「統率を取ろうとするには人員も財源も何もかも足りない。そこに付け込まれたんだ」

「狼藉をはたらいた、ドラゴンや龍を狩ろうとする連中に?」

「そう、奴らは少し宗教にはまったイカれた感じがする。人類に龍やドラゴンの存在を明かそうとするなんて、僕らの意志とは相反する」


けれど彼は立ちあがってトリシアに向かって深く深く頭を下げた。


「けれど、君を傷つけてシュトを攫おうとしたのは僕の組織に名前を騙った連中だって言う事に変わりないから、本当に申し訳ないと思ってる」


トリシアは少し不愉快そうに、人からはそう見える具合に顔を歪めて、ため息をついた。

「…そうね、あなたに謝ってもらわないとおさまりがつかないから」


でも、と言いたげに首を横に振り、白髪が追いかけるように翻った。


「だからって、こんな風に、謝られたって嬉しくもなんともないんだからっ!」

「泣かれると、僕が泣かしたみたいだからやめてくれ」

「大して変わりやしないわ、泣いてやる!」

けれど簡単に涙は出てきやしなかった。こんな時に限って!


「あなた、もう少し組織としてどうにかしなさいよ!あなたが意図しないことで傷ついて、勝手に憎んで、別に自分がした事でもないのに、そんな人に謝られなきゃならないなんて、子どものおままごともいいとこだわ!ふざけんな!」


語尾が荒がるほど拳を強く握って、怒りにまかせて立ちあがった。肩を怒らせて言葉強く責められるたびになんとなく気配負けした澄幸が縮こまるように後退去る。


「そのツケが目に見えないところで溜まって溜まっていつかあなたを息が出来なくなるくらい苦しめるって予言してやる!リスがどんぐり溜めこむみたいにどっかのイカれた奴らがそういうことしてんの!話し合え!」


澄幸はなんとなく頬袋いっぱいにドングリを口に入れたリスを想像した。が、今の状況には比較的関係がない。そんな愛くるしいリスに殺されると言われても…。

澄幸はやや控えめに、彼女の怒りを助長しないように挙手した。


「話し合うって、誰と…?」


瞬間彼女の目が三角になったので失敗したのだと理解する。

もう、何をどう言っても救われない気がしてきた。


「決まってるでしょ、ドラゴニスタとよ!」

「君は馬鹿か!!!!」


馬鹿馬鹿しすぎて本当に罵ってしまった。


「とにかく話し合いなさいよ!誤解されてるっていうことが私は我慢ならないの!働け!もしくは組織として機能しろ!社会不適合者め!」

「えええ~」


この面倒くさがった所がいけないのだと脱力した。

ニートか。実はお前ニートなのか。


「ろくな抵抗もしてないくせに抵抗武力組織の筆頭なのよ?!Dだってドラゴンの事だろうからって野蛮なカルト集団みたいに扱われてんのよっ?!」


「ねー、やばんなかるとしゅうだんって何?」


「ぎゃーっ!いつから聞いてたのよ!」


幼い声に文字通り飛び上がって驚いた。いつの間にかシュトが足もとに立っていた。

曖昧に首をかしげて笑ってるあたりがロッテとそっくりというかなんとうか……子どものくせにあざとい。

とにかく、お子様の情操教育上たいへんよろしくない言葉を連呼してたのでトリシアは慎みを持つよう心掛けた。


「ハナシを変えましょ。DPartyのDってドラゴンのDじゃないんでしょ?あなた区別をはっきりつけてたから」


手のひらを返したように態度が一変した目の前の少女に少し驚き、同時におかしく思い、苦笑しながら顎に片手をつけてもったいぶるように考えるポーズをとった。


「なにもったいぶってんのよ、さっさと答えなさいってば」


その彼女の表情が楽しそうだったのに満足して答えた。


「da capo、はじめから繰り返し、の頭文字だよ」



「主!いつまでお庭をほっつき歩いているおつもりです?トリシア様を解放なさってさしあげください!」

「珠姫~!トリシアが僕をいじめる!」

「はあっ!?心象悪い事言わないでくれる?!タマキ、信じちゃだめよ!」


そもそも珠姫は澄幸の配下であるから、そんな言い方をされると大きな誤解を招きかねない。軽く澄幸に殺意が沸く。

しかし予想に反して珠姫の態度はドライだった。


「駄々をこねられておる場合ですか?トリシア様が困っておいででしょう」


つめたくあしらわれたのをぽかんと見る。ちょっと、あんたここのえらい人なんでしょ?


「いつもこんななの?」

「こんなだよ」


珠姫がトリシアの手を引いて澄幸から引き離す。


「ごめん私、何か悪いことした?」

「いいえ?せめてお部屋の場所には今日中にお連れしたかっただけです」

表情の変わらない彼女横顔からは感情が読みとりづらかった。

「様、なんて付けなくていいよ。それにスミユキの側にいるのが嫌だったんなら、気をつける…」

珠姫の顔はやはり変わらないままだった。二人がもしも恋仲だったら申し訳なく思った程度だったが、怒られている気がして下を向いた。

少し気落ちして俯く頭に言葉が降ってきた。


「…失礼とは思いましたが、会話を聞いておりました。その…」

珠姫がそこでようやく迷うような困ったような気配をみせる。

「私では、あそこまで主をお諌めすることが出来なかったので…その、あの…非常に気味が良かったです」

「え?」


戸惑って不安げに見上げるトリシアを珠姫は見ようとはせず、言い重ねた。

「私も、主の意志が誤って解釈されている事に我慢ならなかったので!あなたにああ言ってもらえて嬉しかったです!胸がすっとしました!」

しばしきょとんと手をひかれるままになっていると珠姫は少し困ったように、怒った。

「黙っておられると気まずいです」

「…タマキ、仲良くしてほしいな…一応長居する予定らしいから」

「承知しております」


それからもう一度珠姫は口を開いた。


「ちなみに、DPartyの『D』はDOの『D』ですよ」

「DO?」

クスリと花弁が風に乗ったように顔を綻ばせた。

「見栄を張られたようですね、当時誰も英語に親しみがなかったのでアクティブな名前にしようと主が辞書を引いて選ばれたのです。子どもみたいに」


トリシアも吹き出してしまった。


「本当、子どもみたいね」


それから珠姫に案内された部屋で、3人で荷ほどきをした。


さてさて

澄幸にニート疑惑が浮上してしまった今話ですが(笑)

久しぶりにトリシアにプンスカ怒ってもらいました

いやー、書いてて楽しかった!

シュトの将来が楽しみだ!(笑)


では今回も読んでくださってありがとうございます!

次話は金曜日に更新予定ですので

次話も乞うご期待☆

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