エピローグ:能あるモフは爪を隠す
詳しい話はまた後日、連絡はヒョウを通して。
さっさか段取りをまとめたノルウェージャンは、最後にもう一度わたしの手を握ってから出て行って。
残されたわたしに、ヒョウが言う。
「あんた、気を付けろよ」
「なにに?」
いや、気を付けなきゃいけないことなんて、山ほど存在するけれど。とくに今日、貴族の邪魔をしたことなんて、知られたらどんな目に遭うか。
「ノルウェージャンは長毛なこともあって見た目に高貴だし、小柄で威圧感もない。とくにあの方は生まれも立場も高貴だから、話し方も上品で人当たりも良いが」
んん?気を付けるのは、ノルウェージャンに?どうして?
「肉食のハンターなことは、ほかの猫科と変わらない。油断してっと、狩られるぞ、あんた」
「そんな、ネズミやフィンチじゃあるまいし」
「いや真面目に。恐い方だぞ、あの方は」
そんな、脅されても。
「敵対しているならともかく、協力関係なんだから、害されたりはしないでしょ?」
「害されはしないだろうな。害されは」
ほかになにがあるって言うんだろう。
「年頃の女が年頃の男の服を剥く意味を、あんたはもっとしっかり考えろって話だよ」
「?」
「ったく、おれは忠告したからな。あとで後悔しても知らねぇからな」
ヒョウが乱暴に、わたしの頭をなでる。
「なんにせよ、協力を引き受けてくれたことは感謝する。おれらの未来に、あんたは欠かせない存在だ。なんかあれば手助けするから、困ったときは言え」
「いや、お兄さんとの関わりを知られるのが、いちばん危ないけどね?」
「手はいくらでもあるからな。おれとの繋がりを知られてねぇ手だってあるさ。それに、そんなこと言ってらんねぇ危機的状況になることも、あり得るだろ。そう言うときは、遠慮なく巻き込め」
さすが、若手獣民のリーダー格は懐が深い。
「そんなことにならないようにするけど、まあ、ありがとう」
「いや。あんたを守れなかったときの、あの方の反応が恐過ぎるからな」
「?」
「ほんとあんた、気を付けてくれよ」
ヒョウの言葉の意味を、わたしがちゃんと理解するのは、ずっとあとになってから。
このときのわたしは、自分が肉食モフの獲物としてロックオンされていたことなど、つゆほども気付いていなかった。
転生小市民が肉食モフに捕まるまで、残り三十年。
拙いお話を最後までお読み頂きありがとうございました!
ここで終わり?と言う声が聞こえそうなのですが
続きはご想像にお任せします
元々はヒョウに捕まる話にする予定だったのに
気付いたらノルウェージャンがすべてをかっ拐っていました




