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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
2章 6月 涙の暴雨、天舞う朱は侵界を祓う
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29話 1度は憧れるラグジュアリー空間

 青奈せなは身体を正常位に戻りながら、後ろ手になっている右手で【賊藍御前】(ティア・マ・タル)を回し背中に持ち手部分を当て、解放された左手は腰に置く。


 次はイケると思ったけど……。

 そして、今の私し達の位置取りが非常に厄介。カラス型は十分過ぎるくらいに安齋姉妹から離れている。位置関係は安齋姉妹、カラス型、カサンドラ、そして私しの位置になっている。


【ダイヤモンド】の柱は健在なので問題ない。しかし、それは目の前のカサンドラがいない状態なら……。アイツもソドールの能力が保有されているマガジンを集めると息巻いている。

 カサンドラも私しがちゃんとクイーンズブラスターASKとマガジンを持っていると思い込んでいるが気づくのは時間の問題。気づけば真っ先に安齋姉妹の所に向かうはずだ。私し達から手に入れるより戦闘経験がない一般人から奪った方が手っ取り早い。そうなれば、2人の安全が損なう危険性がある。下手したら……死。


 青奈:灯ちゃん……ごめん


  灯:うん……良いよ。アイツからはいつか取り戻るから!



 私しは武装解除し、迷う事なく全力でカサンドラへと突貫した。

 全力疾走で走り出す。血迷った行動を取った私しを見て驚いたが、すぐに自分が持っているチェーンソーを振りかぶり私し目がけてスイングした。ジャンプしこれを回避。そして……


 カサンドラの顔の前にマガジンを落とした。

 自分の前にレアアイテムが降ってこればそれを凝視してしまうもの。その行動が青奈は欲しかった。手に入れたのは数秒。しかし、この数秒で人の命が助かるなら安いものだ。


 ごめんね……すぐに回収するから。


 決してマガジンに保有されている魂を軽視しているわけではない。それは私しが一番分かっている。だからこそ、やると決めたことはなんとしても遂行する。あの2人と助ける。


「貴方ともまた今度ね」

 カラス型のソドールの顔を踏む。踏み台の顔から足を退け、一気に安齋姉妹の元に到着した。その場でよろめきながら近くの家屋にふらふらな状態で入る。勢いよく跳んだため体勢が崩れ着地。


 なんてみっともないのかな……まぁ、良いか。


「ちょっと、危ないからね」


「えぇぇええぇえぇええっ!!!!」


 2人と抱き抱えながら素早く【スパイダー】に替えその場から離脱した。



「ははぁぁはあああぁ!! まだまだ、手に入れるぜ」

 カサンドラが振り向くとそこには誰もいなかった。さっきまで5人いたとは思えない閑散とした場所に成り代わっていった。





 少し離れた場所。

「これは中々な人を見つけました!!」

 持っている人形が微かに光出した。

「あの子が大切なマガジンを1つ、彼に渡したおかげで難は逃れました。出来なければ私があの子に助太刀する形で守っていたでしょう」



「問題は……どちらかですね」

 ちょうど姉妹が重なっていたことと、戦闘現場から離れていたため正確なことが分からなかった。赤悪魔であるルージュは懐から博士から渡された小瓶を取り出す。

「これの可能性も知りたいですしね……」

 ルージュは静かに消えた。まるでそこには初めから誰もいなかった見たいに。






 肩で息をし、左手を腰に添え右手のクイーンズブラスターASKの銃口を下に向けた。

「ふ〜う……ここまで来れば問題ないわね」



 私しは後ろを振り向き地面に座っている2人を見た。

「大丈夫ですか?」



「その風貌……貴方は噂の怪盗……?」


「おぉ!! そうよ、私しが噂の怪盗よ。よろしくね、2人とも」

 満面の笑みで話しかけた青奈。


 黄華:……


  灯:……


 青奈:ちょっと、なんか言いなさいよ


 黄華:キャラじゃなくね……


  灯:今は【灯】じゃないから青奈ちゃん演技しなくても良いよ? 今までで良いよ


 青奈:灯ちゃんまで……良いでしょう別に…… 少しは変わりたいのよ ふん〜だ


 黄華:そっぽ向いたな、コイツ……




「今日は2人ともここに泊まるように……さっきの奴からまた襲われないようにね」

 懐から白い紙を出し、萌香もかに手渡した。


「ここ……ホテルですか?」


「私しの拠点の1つよ。あんな爆弾魔が街中を徘徊している。私しが四六時中、守ることは現実的に不可能だから。終わるまで、そこで缶詰生活しててね」



「で、でも……」


「仕方はないわね……ちょっと待ってて」

 そう言って2人から離れ携帯端末を取り出し誰かに連絡した。と見せかけている。

 通話を終わられる仕草をした。


「10分後位に私しの知り合いが来るから……その子と一緒にホテル暮らししててね! それじゃあね!!」


 そう言って女怪盗は居なくなった。


「う〜ん。あれ? ここは?」


「気が付いた、良かった。大丈夫、月音ゆみ?」


 気が付いた月音ゆみに何があったのか説明した。

「で、誰が来るのかな?」


「さぁ〜ね。でも、怪盗の仲間だから変な奴じゃないかな?」


 曲がり角から誰かが携帯端末を見つつ現れた。会話している2人は意外な人物を見て驚いた。

「えぇ!? あ、天織さん?」


「お待たせしました。さっきぶりですね、安齋さん! 話は聞いているので行きましょう」

 天織さんが差し伸ばしていた両手を私達は握り、立ち上がった。



 携帯端末の地図アプリを見つつ2人と護衛している灯。それを見ている安齋姉妹。

「まさか、あの天織さんが怪盗と知り合いなんて……驚いたよ」


「人は意外な人と付き合いがあるもんだから、その類じゃないかな。でも……彼女怖くないのか?」


「ここか……マジで!!」

 灯の声につられ、2人も目的のホテルを見た。

 夜なのに都会の中心地にあるホテルだけあって、本当に夜中なのかと疑う位の光に満ちていた。

 案内してくれた天織さんもお姉ちゃんが怪盗から渡された紙に書かれてあった住所を地図アプリに入力していたため、座標を間違えることはないだろう。学園で何度も見た表情からかけ離れた表情をしていた。

 でも、仕方ないよね……まさか、こんな高級ホテルを目指しているなんて、思わないだろうから


  灯:青奈ちゃん……間違えてるよ、絶対


 青奈:合ってるわよ——ここ杯輿はいこしとうヴェイきゅうホテルで


 黄華:変な名前だな それよりお前、どこの男を引っ掛けたんだ?


 青奈:ば、馬鹿にしないで……男になんて興味ないわよ ここはいわおに紹介されたのよ


  灯:えぇ!? 巌さんから……


 黄華:お前、オッサンいや、お爺ちゃん趣味があるとはな


 青奈:だから、違うって言ってるでしょう 私し達に何か合った時に使って良いって教えてくれた場所よ


  灯:精神的に来るよ、これ……お金持ってたっけ?


 青奈:その点は心配しなくても良いわ。フロントで特定の人にその紙を渡せば良いって言ってたわ。


 黄華:いなかったら、詰むなこれ……


  灯:この前、100万使ったから引き出しが暫く、出来ないのに……


 黄華:お〜い、灯 ダメだ、聞いてね……



「あの〜 天織さん? どうかしましたか、間違えたとか」


「いえいえ、合ってますよ。ただ、本当にここのなのか心配になっただけで……」


「そ、そうですよね……こんな高級ホテルなんて」


 意を決して中に入る3人。

 1階の中央が吹き抜けになっておりバカでかい白い柱が1本聳え立ち、それを囲むように螺旋階段があった。清潔感MAX、所々に植物も飾れてあり、まさに高級ホテルって感じだった。

 白い柱の根本部分にフロントがあり、3人は歩を進めた。

 1階だけでも分かる上質なやすらぎの空間。

 フロントの机が黒よりの青い大理石で出来たおり、柄が綺麗に彩りられていた。

 心臓が高鳴りながらホテルフロントにいたホテルの制服がよく似合うダンディーな男性に声をかけた灯。


 側から見たら、妙に緊張している制服姿の女子高生が来店したのだ。場違い感があり、少なくとも警戒すると思うがフロントにいた男性はそんな素振りもせず、丁寧な対応をしてくれた。


「すみません、この紙のことで……」


「拝見します……少々、お待ちくださいませ」

 そう言って、フロントの男性はその場から離れた。3分後、離れた男性とこれまたダンディーで色気があり、赤いネクタイが良く似合うスーツ姿の男性が現れた。


「お待たせしました。このホテルの総支配人をさせてもらっております。桝長栄一ますながえいいちと申します」



「お部屋のご用はできております。どうぞ、こちらへ」

 桝長さんに案内され、ホテルの1室に到着した。

「当ホテルの最上階に位置しているお部屋となります」

 恐る恐る3人は中に入る。ビバリーヒルズの邸宅のようなエレガントな空間。室内には上質な調度品や、今は夜の為、夜景しか見れないが朝になれば明るい光を取り込む程の大きな窓があった。

 寝室はツインのベットが2つ。大きさは大体、ダブルベットのサイズだった。

 寝室にも大きな窓が備え付けれていた。


「お気に召しましたか」


「はい! でも、宜しいのでしょうか。こんな場所に泊めっても?」


「大丈夫です。大文字だいもんじ様のお客様に失礼があるといけませんから」


「……は、はぁ。では、お言葉に甘えてここに泊まられていただきます」


「何日でも泊めっていただいて問題ありませんので、それから……」


 桝長さんが私達に紹介したのは先程、私と会話したフロントの男性とストレートの黒髪が似合う綺麗な女性だった。


「何かあればこちらの藤中聡ふじなかさとし林美倭はやしみわをお呼びください」



「私はこれで失礼させて頂きます。最後に……天織様。少し宜しいでしょうか?」

 桝長さんに声を掛けられ、客室にいる安齋姉妹に一言言ってから出る私。

「2人は寛いでてね!!」


 歩くこと5分。

 中々、立派な入り口に案内される。どうもここは桝長さんの仕事部屋だとか。


 部屋の中も無駄な物がない洗練された部屋となっている。

「まずは、天織様。当ホテルをご利用して頂き、ありがとうございます」

 深々とお辞儀をした桝長さん。数秒後、顔を上げた桝長さんは私に対して……


「もし、可能でしたら天織様がお持ちの銃のマガジンを見せて頂いても宜しいでしょうか?」


 意外な単語を訊いて、驚く私だったが、目の前にいた桝長さんの目は真剣そのものだった。

 取り敢えず、適当にNo.53 【ミラー】を取り出し桝長さんに手渡した。

「ど、どうぞ……」


 マガジンを見るや1つ1つ涙の雫が溢れていた桝長さん。

 もしかして、この人も……


 ポケットに入れていた自分のハンカチ——正規品ではなく、手作り満載のハンカチで涙を拭っていた。

「お見苦しい顔を見せてしまい、申し訳ございません」


「いえ……大丈夫です。あの、もしかして桝長さんもですか」


「はい。巌さんと同じ立場です」

 私は腰を下ろし、桝長さんの過去を聞いた。元々、このホテルで営業部門で働いていたこと。10年前に娘さんがいなくなったこと。その事実を受け止められなく、一心不乱に仕事をしていたら今の立場になっていたこと。


「このハンカチは私の誕生日に娘がくれた物です。その1週間後にあんなことになるとは思いませんでしたが……」



「すみません……私が」



「貴方だけでも生きてて良かったです。もう、素顔を見ることは出来ません。会うことは叶いませんが娘はこの中で生きています。私はそれだけで満足です」




「……ありがとうございます」


「どうか、娘の分まで生きて楽しい時間を過ごしてください。私も娘も喜びます」




「良いのでしょうか……」


 桝長さんは立ち上がり、私の頭を撫でてくれた。

「目の前で娘達がいなくなるのをずっと見て苦しんだ灯さんは、どれ程壮絶なものなのか私達には計り知れない苦痛があったと思います。だからこそ、少しは楽になっても良いのですよ」


「ありがとう……ございます……」

 瞼に涙が溜まり、抑えが効かなくなり涙が流れてしまう。

 止めたくても、なお増え続ける涙だった。


 泣き止み部屋を後にした私は、安齋姉妹がいる部屋に戻った。





 ——支配人の部屋。

 桝長は灯がいなくなるとすぐにとある人に電話する。

「ありがとうございます。巌さん……」


「その様子は灯くんに会えたってことかな?」


「はい……」

 少し震え、鼻を啜る桝長。その声を訊いて嬉しい大文字だった。


「灯さんを守ります。何があっても……」



「他のみんなも同じ意見だよ、栄一くん」


お読み頂きありがとうございます


灯達が使えるソドール能力

No.14 ライオン 白黄色

No.16 ??? ???色

No.25 カメラ 黄茶色

No.29 キャット 青マゼンタ色

No.33 ホッパー 青ピンク色

No.35 スパイダー 赤紫色

No.44 タカ  白桃色

No.47 シャーク 青水色

No.48 ボーン 茶橙色

No.52 ダイヤモンド 水白色

No.53 ミラー ピンク赤色

No.55 クレーン 煉瓦橙色


悪魔:黄 カサンドラ     

所持人形:2個

No.56 ラッキー 茶黄緑色


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