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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
2章 6月 涙の暴雨、天舞う朱は侵界を祓う
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48話 明無心掴手 Ⅻ 狂うにしても限度がある 

しかし見事に晴れたな……。さっきまでの大雨が嘘みたいだ。


  灯:ちゃんと成分抜いたのに……何で元に戻らなかったんだろう


 青奈:今ここであれこれ考えても埒が明かないわ。帰りましょう!


 黄華:じゃあ、僕のままで家に帰るか!


 青奈:お願いね……


 さて、変身解除っと……。


「あの〜」


 僕が振り返ると灯が助けた3人がそこにいた。

「助けてくれてありがとう」


「あれって噂の女怪盗だよな、ヤベェ〜本物にあったの初めてだ」


「さっきの野郎は……」


 説明とかめんどくさいな。しかしこいつら何ヘラヘラしてるんだ。

「逃げたよ、雨に紛れてね」


「あの野郎の素顔でも拝もうと思ったが良いか」


「先輩……今は良しましょう。助かったんだし」


「良くねぇ。どいつもこいつも何で俺たちがこんな目に遭わなくちゃいけなんだよ」


「だな。あの女のせいで死ぬ所だったのに。同じ女性でも貴方の方がよっぽど良いし……」



 僕の発した言葉に3人は驚く。


「なんか勘違いしてないか? 僕がここに来て闘っていたのはアイツの力が欲しかったからだ。因みにアイツの情報が欲しかったから近くで観察していてお前達を見捨てるつもりだった。お前達を助ける気は端からなかったよ。だが、お前達を助けて欲しいと友達から懇願されたから助けただけだ」



  灯:ちょっとこうちゃん!?


 青奈:灯ちゃんは何も言わない。あれは黄華なりの優しさだから……



「お、俺達が死んでも良かったのかよ……」


「そうだけど。角で聞いてたけど聞くに耐えない内容だったよ。『あいつが悪い』『俺達は悪くない』『なんで俺達がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ』など言い訳しかしてなかったな。誰かのせいにして自分達は逃げる。聞いた内容を思い返してもお前達を助ける必要があるのかと今も考えているよ」


 黄華は、一旦言葉を切り、肩で息をした。話は続く……


「あの武者野郎がお前達を粛清したい気持ちが分かるよ」


「言いたい放題言いやがって……何も知らないくせに偉そうにしやがって」


「知らないよ。でもな、これだけは分かる。誰が一番苦しんでいるのかを……。勿論、お前達じゃない。……怪我して引退した安齋って子だ」


【安齋】の単語を聞いた3人は頭を下げて僕を見ることはなかった。


「確かお前達の学校は何日か休みになってるそうじゃないか。家で大人しく考えるんだな。今何をすべきか、自分がどう行動するのか……じっくりとな」



「何をすべきか……」

 微かに聞こえたが如何でも良かったので無視しながらその場を離脱した。


 誰もいない所で変身解除して再び歩く黄華。


 黄華:少し熱くなったな……。すまない。


  灯:こうちゃん……


 青奈:灯ちゃんはアイツらに同情してる? する必要はないわ。青春の全てを何か捧げた子を落とすなんて人が一番やってはいけないこと。……まぁ、あの子達も死が近づいて仕方なく口に出してしまったとも見えるけど。



 黄華:どうでもいい。僕には興味ないことだ。ただ、本当に苦しい子の気持ちは知ってる。誰かが原因で全てが狂った人を……。だから、灯。


  灯:うん?


 黄華:お前は狂うなよ。以前のようには決してなるな。苦しい子に寄り添う人になるんだぞ。何があっても……


  灯:わ、分かった!!


 黄華:良い返事だっ!! そういえばこの近くに激辛カレーを出すカレー屋があるらしいぜ。今から行くか!!


 青奈:急に話題変えるのどうなの。辛いのは苦手だからパスしたいんだけど……


  灯:程々でお願いします……


 この後、本当に激辛カレーを食べたこうちゃんは唇が腫れた状態で帰る羽目になった。

 勿論、私達も例外なく悶絶することになる。





「今回の事件ですが……」

 モニターには事件の経過、被害者の情報などが映し出された。それを七上賢人しちじょう けんとがポインターを使って俺たちに説明してくれた。ここ最近、原因不明で倒れる人が多数。倒れた人はあの木ッ菩魅烏学園の剣道部の部員。今も被害にあった生徒は入院しており、昏睡状態と聞いている。


(しかし……またあの学園か)

 俺、緑川颯みどりかわ はやては疑問が尽きなかった。

 ここ数ヶ月で奇妙な事件があの学園で増えている。奇妙な事件というのは俺達が対峙している【ソドール】って化け物だ。この学園だけではないがソドールは色々な所で確認されている。住民からの通報で何度か確認し実際に戦闘を行った。しかし、1回あったソドールは次見ることはあまりない。そのソドールを密かに退治している奴がいる。それが謎の女怪盗。半年前にオカルト雑誌で初めて特集が組まれており、徐々に世間に広まっている。正体は不明。1人なのか複数人なのかも不明。戦闘した俺達は女だと認識しているが変装している線も否めない。何1つ分かってない正体不明の怪盗。唯一、分かっているのはソドールの能力を回収していること。敵を絶命するのではなく、動きを封じてから何らかの手段で能力を奪う。

 先日、ネコ型になっていた強盗犯を捕まえて詳しく聞くことにしたが、本人はここ数週間の記憶はないと。検査しても脳や身体に異常はなく、あれだけ俺達と戦った記憶もなく初めましての状態だった。嘘を言ってるようには思えず自分が捕まったのを不思議がっていた。しかし覚えていることが1つあった。誰かに小汚い人形を貰ったと……

 それを頼りに捜査すると、例の女怪盗の特集を掲載したオカルト系出版社【ゴースゥート】で同じく乗っている『怪人人形ソドールがあなたの願いを叶えます』に辿り着いた。

 早速、俺と賢人はその記事を書いた近藤一輝(こんどうかずてる)に話を聞こうと出版社に伺ったが近藤は滅多に職場に来ず、記事が出来た時だけ出社する変わり者だった。

 そんな変わり者でも『オカルト』の分野では名の通っている人物らしく、奴が記事を出せばその雑誌はすぐに売り切れ状態だとか。そんなことがあり【ゴースゥート】の社長も近藤に対しては何も言わない。ならばと社長に話を聞こうとしても何も答えてくれなかった。


「君達、警察が関わっていい事じゃないよ」とただその一言を言われた。


 正直、解せなかったがその時は仕方なく退散した。その矢先に教会での事件。工場地帯爆破事件とおかしな事件が発生した。教会の事件の方はキツネの化け物が白いウェディングドレスを着て襲うなどと頭がおかしいのでは無いのかと聞き込みで聞いた時は率直で思った。

 そのキツネの化け物も数日で姿を消し、それに関わっているであろう男が自らの罪を告白し出頭した。キツネの化け物の正体はその男は頑なに話さなかった。それよりも自分を早く捕まえてくれと懇願していた。詳しい調査している最中に練忍町ねおしちょうの工場地帯の爆破。仁宇胡にうこ町のホテル爆破。そして謎の山奥での爆破。次々おかしなことが発生し俺達、対策班だけではなく、警察全体が混乱状態。そこに今回の木ッ菩魅烏学園の剣道部の部員の事件。謎な事が多くなる。人によっては鎧武者を見たとか。おかしなコスプレを着た奴が刀を振り回しているなどと良くわからない話が多数、警察に情報が流れてきたが本当かどうかは今、調査中だ。


 もう1つ俺が疑問に思っていることがある。それは隣で座っている緋山燐兎ひやまれんとだ。5月に青髪の女怪盗にコテンパンにやられ昨日まで入院生活を送っていた。無事に戻ってきたことで俺達は喜んでいたが、燐兎れんとは何処か沈んだ、悲しい表情で入ってきた。


 燐兎は我がボスの鬼寵玲奈きちょうれいなに装備一式を提出した。燐兎の装備は怪盗に奪われ行方不明だったがこうして戻ってきた。ちゃんと整備された状態で。

 話を聞くと怪盗の師匠なる者が返しに来たと。燐兎はそれしか言わなかった。そして、ボスに対して前線には出ないと告げた。「自分がやったことは警察を辱めた」と。

 辞表も出していたがボスは受理しなかった。「暫くはこの対策室で後方支援ね」と燐兎に命令した。燐兎が復帰するまで仮の隊長として俺が任命された。正直、隊長は柄じゃ無いが仕方なく了承した。


「学園は数日の間、休校になったそうです」

 今尚、会議は続く……





「あぁあああも〜〜う。如何すれば良いの」

 私は自分のベットで寝転がりながら叫んでいた。別に変になった訳ではない。ミドリの世界に行って説得を試みたが全て撤退するしかなかった。これで3回目。


「クロ……恨むよ……」

 私の椅子に座っているクロを恨み節に発した。


「言ったでしょう。ミドリの協力がないと今の武者型を止めることはできない。だけど、ミドリの心を救わないと武者型との戦闘中に使い物にならないから、内と外でこの翠の陰包徳(リ・エミナァーデ)を制御するしかない。でもミドリが内側から制御するためには如何しても灯の身体を把握しないといけない。そうすればすぐに灯が人間だって気づくわ。そうなるとミドリは協力しない。逃げる心配なのが唯一の救いね」


「それはそうだけど……。ねぇ、ミドリと人間に何があったの?」


 クロはミドリの過去を話した。

徐々に浸透していく【怪盗】


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