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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
2章 6月 涙の暴雨、天舞う朱は侵界を祓う
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44話 明無心掴手 Ⅷ 涙には人生が詰まっている

 次の日の朝。生徒の親宛に学校が1週間の休校になるとメールが送られていた。しかも全学年。

 突然の休校の詳しい事は三守みかみ先生が教えてくれた。如何やら私達の目の前で倒れた人以外にも被害にあった人が複数人いた。その全てが私と同じような症状になっていたと言われている。人によっては重症で病院で寝たきり状態となっているとか。

 私は運が良かった。武者型のターゲットではなかったことと足に掠っただけ。


 学校があると思って朝起きして朝食を食べている。私達の学校だけが休校になっているので平日の今日の朝から外を出歩いていると警察に注意を受けてしまう。実践場に行きますか!


 席に立った後、私の携帯端末が鳴る。差出人を見るといわおさんからだった。




 私とクロは着替えて、学校に入る。ここまで警察の厄介にならなかった……理由は勿論。

「しっかしよ〜 こんなに人がいないと逆に怖いなっ!! 気味が悪いぜ!」

 私の隣にいるガラの悪い人がいる。そう、クロが変装している姿。

 私とクロは一応、この学園では生徒と養護教諭の関係。バレないための工作とはいえ何故その姿にしたのか分からなかった。

 しかし、今のクロを見ても心が震えない。やっぱりいつものクロが1番だね。


「さぁ〜 入るぜ!! 来いっ、灯!!」

 手を引っ張られ中に入る私達。警備員はおろか教師。誰もいなかった。

 教師は何となく分かるけど、警備員の人達もいないとは安全性は大丈夫なのかな。

 一抹の不安もあったが、問題なく理事長室に辿り着いた。

 理事長室があるのは教師棟の最上階。ワンフロア丸々、巌さんの生活エリア。理事長室兼巌さんの居住区——つまり、家となっている。ここにも警備員がいる気配がしなかった。


「私がここに来るのは片手で数える程度だね」

 いつものクロになりホッとする私。あのままの姿で会話は少し嫌であったから気持ちが晴れた。


「私は初めてだよ」


「生徒が理事長室になんて用事がある方がおかしいけどね。しかも、この最上階は巌が了承した限られた人しか入れないVIPエリアだしね」



 クロが大きな扉に手を掛け、中に入る。

「巌!! 入るわ」


 中に入ると椅子に座り、コーヒーを飲んでいる大文字巌がいた。

「いらっしゃい、2人とも……」



「クロは紅茶。灯君はコーヒーをどうぞ」

 巌さんが自ら淹れてくれたコーヒーを私は飲んだ。今まで飲んできたどのコーヒーより美味しい!

 これを口に出したら隣にいるクロがどんな顔するか予想はつくし、その後の展開も分かるので私の心にしまうことにした。


「く、くぅ……やるわね、巌。美味しい……」

 クロは心底、悔しかったのか降参顔をしている。


「老いぼれの楽しみだからね。仕事以外にやることないから、ここで一生懸命、練習していたよ。君達2人や他の協力者に楽しんでもらうためにね」


「早速だが、本題に入ろうか」


「この子が今回の武者型のソドールの対象者。ターゲットだ」

 机に出された1枚の写真。


「巌さん……嘘ですよね??」


 私達にはいつもニコニコしている巌さんがその時だけは真剣な顔をしていた。そんな顔をするってことを考えると本当なんだね……


 写真の中身は私が通っているこのみいうら学園の制服を着ている女子生徒。私の学年が1つ上の3年生で薄い紫の髪色で肩まで伸びているショートヘアー。安齋あんざい月音ゆみさんと同じ濃い赤紫色のヘアピンを頭に付けていた。


安齋萌香もかさんがあの武者型……」


「信じられないって顔だね、灯君? 人は誰でも欲望を持っている。その欲望を叶えるために尽力したり誰かを蹴落とすこともある。それが人間だよ。いくら君が否定してもこれは紛れもない事実。今回のソドールが君の知り合いだっただけのことだよ」



「今朝一斉にメールが来たね、灯君」


「はい。休校と……詳しい事の三守みかみ先生から聞きました」


 他に被害にあった生徒はうつ伏せで倒れている所を発見され、病院で入院している。しかし、検査しても何処にも怪我や傷はなく、目立った外傷はない状態。そんな不可思議な現象が他の生徒に及ばないように学園は休校にしたと巌さんが話した。


「近くに住んでいる人達は鎧を着たおかしな人を見たがすぐにその場から消えたと。まるで霧のようにね。我々がターゲットを見つけれたのは偶然だった」


「彼女は武者型のソドールとなって辻斬のように生徒を襲っている」



 それにしても……。辻斬か……。

 現代社会では誰1人として刀を腰に携え、歩いている人はいない。

 昔は新品の刀を試し斬りと称して人を斬っていたり、狂気に取り憑かれた人だったりとさまざまな人がいたらしい。自分を律することができなくなる。そして、段々歯止めが効かなくなり、より大胆に行動し、次々襲ってしまう。最後は破滅の一途を辿る。ってクロから教えてもらったけど実際にその状態の人を——ソドールを見るとは思わなかった。幸いにも死人は確認されていない。被害者全員は怪我してない。それが唯一の救い。彼女を人殺しにしてはいけない。



「灯……現れたわ。行きましょう!!」


 クロは璃子さんと連絡を取ってたらしく武者型が現れた事を教えてくれた。

 巌さんはというと。

「行きなさい。灯君が本当にやりたい事を」



 私は部屋を後にし現場に向かう。クロは「先に行ってて」と言われた。何でも巌さんと話があるからと。


「灯の前では上手く誤魔化せても私の目は誤魔化せないよ。巌!」


「バレていたか。流石、私が召喚した悪魔って所かな」

 巌は先程の元気な様子から一変、苦しい顔になっていた。額から汗を垂らし、息が荒くなっていた。

「信頼できる医者に診察してもらってね。もって1年だとさ。今はこの程度だけど、次第に歩行が困難になり寝たきりが続き最後は死ぬと。完治することは今の医学では難しいと言われたよ」


 巌は机の引き出しかからカプセルケースを取り出し、中に入っている錠剤を服用していた。


「璃子君が調合してくれたこの薬で何とか延命してる状態だよ。元々長くないと言われいたがここに来て君に依頼したことで私の身体は悲鳴をあげてるよ。でも、後悔はしていない。君に依頼したことでずっと探していた人を見つけられた。私の孫含め他の子は残念だったが灯君だけは生きていた。私はそれだけで十分。1つ心残りがあるとすれば灯君がこの学園で1つでも多くの思い出を作り、未来に翔くのを見れないことかな」



「それは任せて。私が見届けるわ。巌も残りの人生精一杯生きなさい。自殺なんてしてみなさい。私が後悔させるから」


「これは怖いね。君に恨まれたら地獄でも私の居場所はないね」


「あらあら、失礼しちゃうわ。私は唯の一介の悪魔よ。そんな力がある訳ないじゃん」

 私は巌に対して笑顔を見せる。


「私も行くわ。今頃、灯が泣いてるでしょうから。1つ聞いても良い?」


「何かね」


「わざわざ呼び出した理由が知りたいわ」


「なんだそんなことか。簡単だよ。私も2人と一緒に怪盗会議をしたかったからね。これでも昔は憧れていたんだよ。怪盗にね」


 私が扉を閉めようとした瞬間。

「武者型になった子を恨まないでくれ。私では全ての生徒を1人1人じっくり見ることはできなかった。彼女の痛みを知っても手を掴むことはできなかった。教育者失格だね」


「安心して。ターゲットの心を明けるのは灯で必ず救うわ。悲しんでいる人を救えるのは灯だけだから。人の痛みを深く身体に刻み込まれている灯なら誰かの道標になってくれる。かく言え私もその救われた1人よ」


「成長したね。灯君は。嬉しいよ!」


「では、行ってきます!」


「あぁ、行ってらっしゃい!」





 雲1つない青空。昨日の雨が嘘みたいな天気。そんな晴れ晴れとした外のとある公園の一角で地面に座っている3人組がいた。男達はズボンが汚れるのも厭わない様子だった。

「今、入院してるの俺達の剣道部の生徒だってさ……噂では変な鎧を着た野郎が剣道部の連中を見つけ次第、次々斬りかかっているとか」


「俺達が何したんだよ。そんな変な奴に恨まれることなんてしてないのに」


「あるだろう……1つだけ」


「あれはアイツのせいだろ。安齋さんにあんなことしておいて平然としているあの女が」


「しかも未だに妹さんに突っかかっているらしいぜ」


「はた迷惑だな、全く……あの女が鎧野郎にやられれば俺達が被害を受けることがないんじゃないか」


「寄せって。あの女にそんなことをしたら親が黙ってないぜ。あの女の父親は——」


 その言葉がかき消された。先程の天気が180度変わり晴れから一気に厚く暗い雲に覆われた空。それを皮切りに横殴りの雨が降り注いだ。まるで誰かの怒りの感情のように。


 3人の男達は雨を防げる屋根がなかったため仕方なく近くの木の下に避難した。

「最悪だっ。雨が降るなんて聞いてないぜ」


「そう言えば……」


「な、何だよ」


「襲われた部員の人は皆、突如降った雨の中で倒れたって……」


「突如降った雨って……ま、まさか。偶然だろ」


 3人の前から雨で地面にできた小さな池から足音が聞こえた。重い足取りだ。音の主が1歩1歩こちらに歩く度に水の音だけではなく、何かが接触して擦れる音も聞こえてくる。


 雨の中平然と歩いている鎧武者。着ているデッカい鎧は雨で濡れているが野郎が持っている刀は横殴りになっている雨を弾いていた。刀の周りだけ空間が捻れていて絶対に濡らさないとばかりに……


「待ってください。貴方が他の剣道部員を狙っているのは安齋さんのことですよね」


 鎧野郎が歩くのを止めた。効果的面だ。やっぱりコイツの狙いは安齋さんをあんなことした犯人だ。なら……


  「俺達は知っています。誰がやったのか。教えますから俺達を見逃してください」


「お前、いきなり何言ってるんだ。あの女に知られれば」


「うるさいっ!! 元はと言えば全てあの女が原因だろ。アイツと同じ部員ってだけでなんで俺達がこんな思いをしなくちゃいけないんだよ。親が偉いからっていつも偉そうにしてさ。親が剣道部に予算を出したことで何の実力も無い癖に副将の席に居座るし。それだけじゃ飽き足らず安齋さんに怪我させて大将の席に着いたじゃないか。アイツが来てから俺達がどれだけ苦しい思いしたのか忘れたのか」


「安齋さんを怪我させ退部させたのは——」

 俺は声を荒げた。その正体を叫んだ。後がどうなろうと良いさ。生きたいと強く願ってるんだから。


 その正体の名を聞いた鎧野郎は声を加工してるのかおかしな声で一言。

「お前達を断罪する」


 鎧野郎は持っていた刀を自分の頭上に持ってきて斬りかかる構えを取っていた。

「な、何でだよ……俺達は教えたじゃないかぁぁぁ!!」


「勘違いしてるのでないか。私が狙っているのはお前達だ……全員が私の復讐対象だ」


 刀を振り下ろし水でできた斬撃が俺達に襲い掛かる。


「今日で3人。残るは……」


 顔を上げると斬られた3人がいなかった。

「何っ!?」


 その後に先程まで彼らが雨宿りしていた木が渦巻き状に歪む。

 そして、そこには誰もいなく初めから木などなくあるのはぬかるんでいた地面だけだった。


「彼らは私が安全な場所に避難させました」


 振り向くと見覚えがある女がいた。赤い服を身に纏っている長髪の女。両手にはそれぞれ銃と少し大きいナイフがある。正体を知られないように目元にマスクをしていた。マスク越しでも悲しみの目をしている。


「私は貴方を止めます。これ以上、その力を使われません」


「私の復讐の邪魔をするのならお前にも『死』をくれてやる」

 武者型は自分の首に刀を当て威嚇していた。これ以上進めばお前の首を刎ねるぞと警告しているみたいに。


「生憎、まだ死ねませんのでお断りします!!」


 臨戦態勢を取る私と再び自分の刀を横向きにする武者型。


 灯達が使えるソドール能力

 No.16 フォックス 煉瓦茶色

 No.33 ホッパー 青ピンク色

 No.35 スパイダー 赤紫色

 No.44 タカ  白桃色

 No.47 シャーク 青水色

 No.48 ボーン 茶橙色

 No.50 ??? ???色

 No.55 クレーン 煉瓦橙色

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