ニンゲンと人間
────夢を見る。
いや、あの日の続きだ。続きであってくれ。そう懇願しながら、焦土は意識を浮かび上がらせる。足の裏には硬いコンクリートの感触が及び、肌には布の服が擦れ、右腕の感覚がある。呼吸すると、冷えすぎて乾き切った空気ではないが、埃っぽくてほのかに生臭い積層都市特有の匂いが感じ取れた。
「……あ」
焦土は、否、火野翔斗は瞼を開ける。
「俺は」
あの氷河期の世界は夢だったのか。いや、こっちの方が夢なのか。どっちがどっちなのか、釈然としない。だが、ただ一つ解るのは、放課後だということだ。
「行かなきゃ」
氷川銀花が待っている。翔斗は通学カバンを右肩に掛け、その重みを味わった。意味もなく右腕に触れながら、行き交う人間のいない通路を進む。
そういえば、氷川銀花と待ち合わせて何をするつもりだったのだろう。寄り道がしたい、買い物がしたい、と言っていたことを思い出す。だが、何を買うつもりだったのか。この数十年は衣服の類は配給品に限られているし、食糧も同様だし、嗜好品に至っては軍人にだけ許されていた。翔斗の限り少ない娯楽である本も、過去の文献が電子書籍化されたものしかない。このご時世では、娯楽物を創作する人間なんてほとんどいないし、いたとしても移民船団に乗せられ、長い旅をする人々を楽しめるために消費されてしまう。
階層連結路線の駅を目指し、黙々と歩く。灰色の筒に響き渡るのは、耳障りな自分の足音と、何かの機械の駆動音だけだ。人間がいなくなった都市は、あっという間に綻んでいく。交通網や通信網は自動化されているので、人間がいなくても動き続けることが出来るが、整備に必要な部品が補充されなくなるので、いずれは壊れてしまうだろう。
だが、それに抗うことは出来ない。空しさと切なさに苛まれながら、翔斗は駅に入ると、丁度いいタイミングでホームに車両が滑り込んできた。珍しく乗客がいたらしく、ドアが開くと人影が下りてきた。作業着姿の男で、年頃は翔斗よりも年上だろうか。
「あ」
人がいた。翔斗はいやに嬉しくなって、その男に目をやると────制服姿の少女が音もなく現れた。
「あ……?」
あの後ろ姿は、氷川銀花か。翔斗が面食らうと、氷川銀花は作業着姿の男に何かを押し付けた。直後、青白い光が走り、翔斗は思わず目を背けた。何事かと視線を戻すと、作業着姿の男がいた場所には、真新しい塩の山が出来上がっていた。雪よりも硬い粒の周囲には、中身がなくなった作業着とブーツが崩れ落ちる。
なんだ、今の。翔斗は声も出せずに後退り、氷川銀花が振り返るよりも先に駆け出した。意味が解らない。怖い。あの女はなんなんだ。息を切らしながら全力疾走するが、程なくして足が重たくなる。汗が滲み、喉が痛むが、それでも走り続ける。
地下鉄の駅から大分離れたところで足を止め、どくどくと暴れ回る心臓を押さえながら、翔斗はへたり込む。あいつ、あの人に何をしたんだ。されたんだ。額から流れ落ちた汗が目に沁み、痛みが生じる。
「ねえ」
不意に、少女の声がした。翔斗は心臓が縮み上がり、反射的に後退するが、勢いが付き過ぎて後頭部をぶつけてしまった。びくつきながら目線を上げると、そこには────。
誰がいたのだろう。
頭が重い。
焦土は倦怠感に見舞われながら、ゆっくりと覚醒した。過去の記憶を反芻するような夢を見ることは珍しくないのだが、それはいつも高校を出る時で終わってばかりだった。その先を見ることが出来たのは、きっとブリガンドとエーテルを共振させたからだろう。だが、その余波は少なからず出ていたらしく、頭が冴えない。
「ねえ」
夢の中と同じ声がして、焦土は文字通り飛び上がった。
「うひえっ!?」
だが、コンテナの中には焦土以外は誰もいない。今日はさすがにフロージアも入り込んできていない。だが、聞き間違いにしては鮮明だ。焦土が困惑していると、コンテナの奥から人型の影がぬるりと現れた。シャドウピープルだった。
「この前にも出てきたやつか?」
焦土が声を掛けると、シャドウピープルは頷く。
「たぶん」
「なんだよ、それ」
「私達はエーテルに溶けているから、どこからどこまでが自分で、どこからどこからが他人なのかがよく解らなくなっているの。でも、こうして形を作って、あなたに同一の存在として認識されたとなると、私はあなたの知る私になったんだと思うわ」
「よく解らねぇな」
「自分を認識するためには、誰かに認識される必要があるから」
「ああ……それはそうかもな」
「でも、もうすぐ、あなたの知らない私に会うわ」
「俺はお前のことなんて知らねぇよ」
「でも、私はあなたを知っている。知ってしまったのよ」
シャドウピープルはするりと薄い影から抜け出し、焦土に実体を持たない体を近寄せる。けれど、彼女の手が焦土に触れる寸前で弾け、粒子一つ残さずに消え去ってしまった。
「思わせぶりなことを言いやがって」
焦土は嘆息してから、コンテナの外に出た。スティーブンソンによれば、次の目的地は海を越えた先に水没している移民船だそうだ。なので、アイオロス号が船として動けるように調整する必要がある。その作業をするのはもちろんスティーブンソンだが、焦土とブリガンドは率先して手伝うようにしている。作業が早く終わった方が、出発も早まるからだ。
だが、氷の魔女だけはそうもいかなかった。焦土は魚だらけの朝食を食べ終えてから、リビングに顔を出すと、フロージアが暖炉の前で丸まっていた。それどころか、うとうとしていた。
「起きろよ」
焦土がせっつくと、フロージアは力なく呻いた。
「んむ」
「トカゲだから体温が低いのは解るが、もう日も昇ったぞ」
「頭の奥がざわざわして、落ち着かないからリビングに来たんだけど、結局寝付けなくて……」
「そりゃまたどうして」
「たぶん……」
フロージアはのっそりと身を起こし、ツノの生えた頭部を押さえた。あの夢のことを言うべきか、と焦土はちらりと思ったが、フロージアの体調が芳しくないのであれば、余計なことで頭を悩ませてしまうのはよくない。それに、あの夢は焦土の空想で出来ているのかもしれない。氷川銀花の凶行が、現実のものだなんて信じられないし、信じたくはない。
不意に、甲高い警笛が鳴り響いた。フロージアはぎょっとして尻尾をぴんと立て、焦土もよろめいた。がちゃがちゃと足音を立てながらリビングに駆け込んできたスティーブンソンは、窓の外を指す。
「フロージア、ニンゲンが出たのであるぞ!」
「道理で落ち着かないと思ったわ」
フロージアは三つ編みを背中に払ってから、杖を手にする。
「ニンゲンを……殺すのか?」
「ええ。そうしなければ、私達は全滅してしまうもの。私の仕事ぶり、特別に見せてあげてもよくってよ?」
フロージアは焦土を急かしてきたので、焦土は不安に思いながらも彼女の背を追った。ブリガンドはアイオロス号の外に出ていたのか、時折、黒い影が窓の外を過ぎっていった。
ついに出会ってしまう。この時代の人間と、獣人達との共存を拒む人々と、人間から懸け離れた力を持ってしまった自分が。ああ嫌だ、逃げてしまいたい、けれど逃げるわけにはいかない。焦土は無意識に両手の拳を固めながら、デッキに出た。
「ん、いたわ」
フロージアが杖の先で示した先は、強い風を受けて白波の立った海面だった。弧を描きながら降下してきたブリガンドが、がしゃん、とデッキの手すりを足で掴んだ。
「遅いぞ、魔女よ」
「仕事はきっちりするわよ。だったら、文句はないでしょ?」
フロージアは杖のエーテルアキュムレーターの弁を確かめていたが、焦土に振り返る。
「あれがニンゲンよ。そうねぇ、個体としては中型ね」
海面に浮かんでいたのは、白くてぶよぶよとした奇妙な物体だった。言うならば、脂肪の塊だ。つるりとした頭部には部品はなく、太い首は肩に連なり、二本の腕が伸びている。波間から垣間見える下半身はクジラのような形状で、要するに不気味な人魚だった。しかも、その大きさが半端ではない。アイオロス号の十倍、いや、百倍はありそうな図体だった。
おぉぉおおおおおおおおおん、くぉぉぉぉぉおおおん、と声でもなければ獣の鳴き声とも異なる音が、辺り一帯に響き渡る。金属を震わせたかのような、或いは薄い板を指で弾いたかのような。それでいて音量は凄まじく、不気味な人魚の周囲の海水がごぼごぼと泡立つほどだった。
「……ぅ、ぐぇ」
脳を掻き回されるような不快感に襲われ、焦土は顔を歪める。
「大したことはなくってよ」
フロージアは杖を軽く振り回してから、身構える。
「どこがだ? あのニンゲンのエーテルの埋蔵量は、図体通りかそれ以上の量だ。そんなもの、どうやって殺すんだ?」
ブリガンドが臆すると、フロージアはにんまりする。
「あら、盗賊首領ともあろうものが、ニンゲン如きで怖じ気付くの? ふふ、おかしくってよ」
フロージアはデッキの手すりに飛び乗ると、スカートを翻す。くるりと身を転じてから、ダンスでも踊るかのように軽やかに飛び降りていった。焦土は慌てたが、すぐさま氷の柱が次々に立ち、フロージアはその上をぽんぽんと飛び跳ねて海へと移動していく。
「ニンゲン、ってのはなんなんだ」
先程の音で吐き気を催し、焦土が左手で口元を押さえながら呟くと、ブリガンドもまた弱った様子で言った。
「エーテルの塊だ」
「スカイフィッシュみたいなものか?」
「いや、あれの非じゃない。俺みたいなのじゃ、あいつに近付いただけでエーテル中毒でおかしくなっちまう。焦土でさえも危ない。だが、その分、一度ニンゲンを仕留めると当分はエーテルに事欠かずに済む。肉は脂肪だらけで喰えたもんじゃないが、油を絞り出せば燃料にならないこともない」
「骨と内臓は捨てるのか?」
「そんなものはない。あいつはエーテルと脂肪だけで出来ている」
「それって、生き物じゃないだろ?」
「そうとも。あれは、ただの化け物だ。その上半身が人間に似ているからニンゲンと呼ぶのかもしれんが、詳しいことは解らん」
ブリガンドの言葉も、ニンゲンの放つ咆哮に掻き乱されてしまう。焦土は絶え間ない頭痛に苦しみながらも、目を凝らし、フロージアの姿を探した。
氷の柱、氷の壁、氷の塔を形成し、フロージアはそれを足掛かりにして移動し、海面に到達していた。エーテルアキュムレーターを備え付けた杖を振り回すたびに分厚い氷の塀が造られ、魔女を守る即席の要塞が出来上がっていく。
「さあて、やるわよ!」
不気味な人魚────ニンゲンは、氷の塀の奥にいる魔女の存在を捉えた。上半身を持ち上げると、ぶるんっ、と脂肪だけの頭部が揺れて波打ち、海水が撒き散らされる。両手を氷床に付き、匍匐前進をするかのような格好で乗り上がってくると、足の付いていない、ヒレの生えた下半身が露わになる。
「えいやっ!」
フロージアが杖を振り下ろすと、特大の氷の槍が降り注ぐ。ニンゲンの頭部をぶぢゅりっと貫き、胴体を串刺しにする。あっという間にニンゲンの背が針山と化したが、ニンゲンの動きは衰えることはなく、ずりずりと氷床に這い上がってくる。
ぉおおおぉぉぉぉぉん、きゅぉうぉおおおぉぉぉおおん。ニンゲンが身震いすると、あの奇妙な音が高まる。濃厚なエーテルに震動が与えられたことで、アイオロス号全体が激しく軋んだ。いくつかのパイプが緩んだのか、激しい勢いで蒸気が漏れ出してしまう。
「うーん、手応えがないわね」
フロージアは尻尾を揺すってから、氷の階段を作り、それに飛び乗った。それと同時に氷を急激に成長させ、ニンゲンとの距離を開くと、氷の要塞があっさりと打ち砕かれた。分厚い塀が一瞬で粉微塵になり、白煙が舞い上がる。
「だったら、こうかしら?」
フロージアが杖を振り翳すと、ニンゲンの下半身の先が浸っている海水がめきめきと音を立てて凍り付き始める。そればかりか、ニンゲンの体に残っていた海水も凍っていく。
「それから、こう!」
フロージアがぐいっと力を込めて腕を上げると、突如、氷床が膨張した。ニンゲンの体の真下から、その体格に等しい太さの氷柱が出現したからである。突き上げられた勢いで巨体が宙に浮き上がり、ぐるりと回転し、一瞬ではあるが太陽を隠した。
「仕上げはこれね!」
フロージアは口角を上げ、杖の弁をぐいっと開けた。途端に膨大なエーテルが爆発的に噴出され、氷柱が更に成長し、先端が鋭利に尖った。嫌な予感がする、と焦土が眉根を寄せた直後、重力に従って落下してきたニンゲンが氷柱に突き刺さった。
ぶぢゅりぢゅるっ、と粘ついた水音が起き、脂肪と同じく白い体液が汚らしく飛び散る。フロージアは氷の壁を作り、その体液を避けていたが、アイオロス号はそうもいかなかった。白い体液の飛沫がびしゃびしゃと降り注ぎ、アイオロス号の配管を掠めると、エーテル過剰で外れかけた配管が吹っ飛んでしまった。スティーブンソンの哀れな悲鳴が聞こえてきたのは言うまでもない。
どろりとした体液が抜け切ると、ニンゲンは萎んでしまった。だが、皮だけになっても巨大なことに変わりはなく、冷え切っているはずなのに、しゅうしゅうと嫌な匂いの煙を上げていた。体液も、皮も、あの煙も、恐ろしく濃縮されたエーテルだった。
「ぐけえっ」
その影響をまともに受けてしまい、ブリガンドが鳥らしい呻きを漏らした。焦土は少しでも紛らわせれば、と適当な炎を起こしてエーテルを消耗してから、ブリガンドを船内に押し込めた。
「フロージア、大丈夫か?」
焦土が声を上げると、フロージアは指を弾いた。途端に氷がめきめきと範囲を広げていき、ニンゲンの残骸を氷の牢獄に封じ込めてしまった。
「ええ、問題はなくってよ。でも、まだ少しはやることがあるから、そこで待っていなさいね」
フロージアはにこやかに手を振ってから、氷の足場を連続して作り、ニンゲンの残骸に近付いていった。焦土はデッキから身を乗り出しかけたが、全神経が逆立つような感覚に襲われて身を引いた。先日のエーテル酔いに似た感覚だったからだ。これでは、フロージアに近付くこともままらない。
渋々、焦土も船内に戻った。吐き気が少しでも早く収まるように、とエーテルを消費するために、弱い火を灯した。力尽きたブリガンドを横目に座り込んでいると、少女の影が目の端を過ぎった。
「ほら、私はあなたと会えたわ」
「……それって、つまり」
ニンゲンとシャドウピープルは繋がりがあるのか。焦土が実態を持たない少女を見据えると、シャドウピープルは小首を傾げる。
「ニンゲンと私達は、意識を共有しているのよ」
「ニンゲンって、なんなんだ?」
焦土が問うと、シャドウピープルは化け物の残骸を見やる。
「産まれ損なった胎児、熟する前に割れた卵、種を成す前に腐り落ちた果実。彼らもまた、箱舟から零れ落ちた子供達よ」
「つまり、出来損ないか」
「私達は、皆、そういうものだから」
「だったら、俺は何者なんだ? どうして一万年前の記憶があるんだ? なんでもいいから、知っているなら教えてくれよ」
だが、その問いには答えずにシャドウピープルは影に溶けた。ちったぁ相手にしてくれよ、と焦土は思ったが、口に出来るほどの余力はなかった。気を抜くと、胃液と朝食が込み上がってきてしまうからだ。なるほど、魔女が重宝されるわけだ。焦土はフロージアに対する認識を改める一方で、あの夢について喋るべきではないな、とも思った。
フロージアは旧世界に思い入れがあり、憧れすら抱いている節がある。氷川銀花のことも、興味深げに耳を傾けてくれた。その氷川銀花が凶行に及んだともなれば、幻滅するだろうし、焦土の妄想である可能性も否めないからだ。
まずは、魔女の活躍を讃えなくては。
帰還した魔女は、戦利品を携えていた。
高濃度のエーテルが凝縮された液体と、黒く四角い金属板だった。液体エーテルは氷の器から頑丈な金属製の容器に移され、スティーブンソンが厳重に保管することになった。金属板はニンゲンを殺すと必ず出てくる物体だそうだが、使い道が解らないのだそうだ。だが、せっかくの金属を捨てるのは勿体ないから、とスティーブンソンにせっつかれ、フロージアは持ち帰ってきたのである。
「うーん」
金属板を右手で掴み、焦土は考え込んだ。例によって、皆はリビングに集まっていた。
「どうだね? 旧世界に似たものはあったかね?」
スティーブンソンに迫られ、焦土は唸る。
「思い出せそうで思い出せないような……」
「頼りないわねぇ」
一暴れしたので、フロージアは暖かなスープを飲んでいた。無論、それを作ったのは焦土である。
「焦ることはないさ。男爵ですら利用価値が解らないのであれば、赤道国家の連中に取られる心配もないんだからな」
ブリガンドは気分が持ち直したのか、語気に力が戻っていた。彼もまた焦土の作ったスープを飲んでいたが、クチバシをがつがつと器に突っ込んだ。それで飲めるんだろうか、と焦土は不思議に思ったが、スープの量は減っていたので、ちゃんと飲めているらしい。
「なあ、フロージア。ニンゲンが出現する前後には、シャドウピープルが現れるものなのか?」
焦土が尋ねると、フロージアは尻尾を振る。
「そうねぇ。あれもエーテルの濃さに応じて出現する頻度が変わるから、ニンゲンが高濃度のエーテルを発していると現れやすいのは確かね。もしかして、また出てきたの?」
「この前出てきたやつと、同じやつがな」
「ふうん……」
フロージアは考え込んだが、それ以上は語らなかった。暴れたから疲れたらしく、程なくしてうとうとし始めたので、焦土はフロージアを彼女の部屋まで運んでやった。リビングで寝られてしまうと、無意識に氷を張ってしまうため、紙の本だけでなく蒸気式計算機まで凍り付いてしまうからだ。
ニンゲンの咆哮が、未だに鼓膜にこびりついている。なんとも言い難い感情が込められていて、骨身まで揺さぶられてしまう。ニンゲンは、焦土の知る人間ではなかった。それに安堵しつつも、やはり人類は滅びたのだと痛感する。とっくの昔に自覚していたのに、別の形で思い知らされると、胸の奥から苦みが込み上がる。
寂しさを紛らわすために、魔女に縋った。