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「おおーーーっ!!」
すさまじい戦いの雄叫びが、死人の軍団から轟いた。
一斉に屍たちが清秀軍に襲いかかる。
清秀は自らの軍に指示を下すのさえ忘れ、茫然としていた。
そもそも号令したとて、兵たちが動いたであろうか?
清秀軍は恐怖に絡め取られ、誰一人として戦意を有してはいない。
これは戦か?
否、これから始まるのは一方的な虐殺であった。
その夜、清秀軍の屍を軍勢へと加えた骨武将、惨鬼義盛は新たに造られた天守閣に立ち、眼下に広がるかつての我が領地を見つめていた。
下では、いくつものかがり火がたかれている。
見つめるといえばおかしな話ではある。
義盛のどくろに、もはや眼球は存在しないのだから。
しかし、義盛は生きていたときと同じように考え、見て、聞くことが出来るのだった。
「死人の家来ども、よく働きおるわ」
義盛が笑った。
己も死人ではあるのだが。
確かに死人たちは、よく働いた。
何より疲れを知らない。