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城兵たちは生きたまま焼かれた。
攻め手の武将は焼け落ちた暁城を放置した。
まるで、巨大で無惨な亡骸だった。
山の麓にある村々では、義盛たちの最後が戦国の悲話として語られた。
最近になって、その村々で妙な噂が立ち始めた。
山に猟に出た男が暁城跡付近で、人影が動くのを見たと言った。
最初は村人たちは取り合わなかった。
皆を怖がらせる嘘を猟師が話していると笑った。
しかし。
腐敗し肉を失った骨の如き暁城の残骸が、次第に修復されていくのが遠目にも確認できるようになると、村人たちは猟師の言葉を笑い飛ばせなくなった。
噂は瞬く間に広まった。
義盛と城兵の霊が甦り、城を元に戻そうとしているのだと村人たちは囁きあった。
皆、怯えていた。
十日経つと、暁城は落城する前の威容を完全に取り戻した。
こうなると暁城の噂は義盛らを滅した武将の耳にも届いた。
この武将、豪里清秀は慌てた。
彼はとある有力大名の配下で、この辺り一帯の統治を任されていたのだが、領内に正体不明の城が出現したとなると自らの無能さを責められる結果となる。
清秀は人を差し向け、暁城を調べさせた。
正直なところ清秀は、この噂については懐疑的だった。
とても小城とは言えない規模の暁城を、たかだか十日ほどで元通りに出来るわけがない。