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「………」
「このまま一人一人を追いかけても、きりがない。集まってもらうぞ」
すでに日は落ち、辺りは夜の闇に覆われていた。
闇の中、十蔵はどんどん進んでいく。
引き摺られる虹丸は無抵抗だった。
二人は小高い丘の上へと、たどり着いた。
眼下には小さな村の明かりが見える。
「虹丸」
十蔵が言った。
「俺は今から、あそこに見える村の奴らを皆殺しにする」
「なっ!?」
ずっと黙っていた虹丸が慌てた。
「何故!?」
「仕方ないだろう。お前が逃げるからだ」
「村人は関係ない!!」
「関係ないから良い」
十蔵の口調は淡々としていた。
「虹丸、お前は昔から甘いところがある。自分のせいで関係ない奴らが殺されるのを耐えられるとは思えん。俺を止められるのは、お前だけだ」
「くっ…」
十蔵が丘を降り、村へと歩き始める。
「早くしろ。俺は殺ると言ったら殺る」
「卑怯な…」
「知らなかったのか? 俺は目的のためなら何でもする。今の俺は自由だからな」