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虹丸  作者: もんじろう
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 虹丸は肩を落とした。


「今は元の身体に戻りたいです」


「ほう」


「このままだと、人で無くなっていく気がして」


「力が無くなれば里の奴らに殺されるかもしれんぞ」


「分かってます」


「死ぬかもしれぬのに元に戻りたいか…人で無くなるのが、そんなに問題か?」


 十蔵は口の端を微妙に吊り上げた。


 無感情に聞こえる声も心なしか和らいでいる。


「俺は人でなくなっても一向に構わん。どこまで強くなれるか確かめるのも悪くない」


「………」


「世の中の全ての人を生かすも殺すも俺の自由になれば痛快だ。そうだろ?」


「………」


「石の力を持った奴を何人か殺した。勝ったほうは相手の力を吸収できる。自分の力が、さらに強くなる。知っているか?」


「はい」


「虹丸」


「………」


「俺に、お前の力をくれないか?」


「………」


「まあ、要するに」


 十蔵の口が再び吊り上がった。


「俺に殺されてくれ」


「………」


「嫌か?」


「………」


「そりゃあ、嫌だろうな。だが、あいにく、お前の答えがどっちでも俺はお前を殺す。俺が決めて俺が手を下す。自由ってやつだな」


 何の前触れもなく、川辺の石の上から十蔵の身体が消えた。


 虹丸は驚き、慌てて敵の姿を捜した。


 左右には居ない。


 足元で大きくなる影に気づき、虹丸が頭上を見上げると十蔵が降ってくる途中だった。


 十蔵の右手には小刀が握られている。


 虹丸は咄嗟に身をかわした。


 着地する十蔵と転がる虹丸。


 二人の距離が再び離れた。


 お互いに相手を窺っているのが、先ほどと違うところだ。


 十蔵の小刀に緑色に光る液体が滴っていた。

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