68/105
68
「お前は度胸が無かったからな」
十蔵は、にやっと笑った。
「何故、抜けた?」
「………」
「俺が抜けたのは…」
「………」
「お前が抜けたからだ」
黙っていた虹丸の眉が、ぴくりと動いた。
「一番度胸が無いお前が抜けたと聞いたとき、俺は初めて自分に疑問を感じた。頭領の命令をこなすのが虚しくなった。俺も自由ってやつを味わいたくなったのさ」
「………」
「抜けてみると自由っていうのは良いもんだな。行き先も物を喰らうのも寝るのも自分で決められる」
「………」
「里の奴らが追っては来るが…たいした奴は居ない。そうそう、誰をどうやって殺すかも俺の自由だからな」
「………」
「それにしても、お前の腕前でよく今まで逃げ延びたな。どうやった?」
虹丸は答えず、じっと十蔵の背中を注視している。
「ずっと、だんまりか?」
「………」
「相変わらずだな。お前も気づいているだろう?」
「………」
「俺は抜けてから緑の石を見つけた。お前は見つけたから抜けたのか?」
「はい」
ようやく虹丸が言葉を発した。
「不思議な力が身に付いて…そのまま里に帰れば頭領に利用されると思いました。それに、この力を使えば逃げられるんじゃないかと…」
「なるほど、そう思える力が付いたのか」
「ただ…」




