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虹丸  作者: もんじろう
64/105

64

「おで、侍は大嫌いなんだ」


 岩の男は静香の言葉を無視した。


 あるいは本当に聞こえないのか?


「親父も、お袋も、妹も、弟も、みんな侍に殺された」


「………」


「世の中の侍は全員死んじまえばいいんだ」


「………」


「そう思ってたら神様が、おでを変えてくれた」


「石を見つけたのか?」


「だから、お前殺す」


 静香の問いを再び無視して、岩の男が動いた。


 巨大な両腕を振り上げる。


「死で」


 思いの外、素早い動きで両腕が振り下ろされた。


 静香は横へ跳び、ぎりぎりで攻撃をかわした。


 岩の拳が地面にぶつかり、轟音と共に砂ぼこりが舞い上がる。


「あで?」


 岩の男が首を傾げた。


 砂ぼこりが収まった後、自分と対峙する静香を見つけた。


「あがーーーっ!!」


 岩の男が怒鳴った。


 今度は右拳を横に払って、静香を狙った。


 これも、ぎりぎりでかわす。


 続けて左拳が叩きつけられたが、静香はまたかわした。


「あーっ!」


 岩の男が叫んだ。


「逃げるな!」


 地団駄を踏む。


「大人しく、おでに殺されろ!」


「………」


 静香は答えない。


 長刀の柄に右手を置き身体を捻り、岩の男に背を向け、腰を落とした。


「そうだ、そででいい」


 岩の男が笑った。


 静香が観念したと思ったようだ。


 静香の頭上で巨大な両拳を振り上げた。

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