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静香の背丈の三倍はあろうかという高さの岩の側へと差しかかったところで、ずずっという音と共に岩が動いた。
反射的に静香の長刀が鞘走り、刀身が岩へと叩きつけられる。
静香の両眼は緑色に光っていた。
これまでであれば、いかな巨大な岩といえど静香の斬撃の前には両断された。
当然、今回も静香の頭の中で、岩を真っ二つにする光景が思い描かれていたのだが。
しかし、現実は。
かん高い金属音を立てて、静香の長刀は跳ね返された。
歯こぼれは免れたが、岩の硬度が勝っているのは明らかであった。
静香の美しい顔が予想外の屈辱に歪む。
「がははは!!」
笑い声がした。
岩から聞こえてくる。
静香は後ろへ跳び、距離を取った。
岩が再び動き始めた。
のっそりと立ち上がる。
静香に向いていたのは、人で言う背中であった。
膝を折り、背を丸めて座っていたのだ。
岩には頭があり、身体があり、腕と脚があった。
人の形をした岩が振り返り、静香を見下ろした。
頭の部分の岩の中央に、人の顔が付いていた。
若い男の顔だ。
男の両眼は鮮やかな緑色に輝いている。
「おでは斬れないぞ」
男が言った。
口を開ける度に砂がこぼれ落ちる。
そのせいで男の言葉は、やや聞き取りにくかった。
「お前…緑の石を持っているな?」
静香が問うた。




