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虹丸  作者: もんじろう
39/105

39

 男爵の兜には傷ひとつ付いていない。


「むう…」


 侍は唸ると、その場にへたり込んだ。


 自らの刀を茫然と眺めている。


 笑い声がした。


 男爵の兜が揺れている。


 男爵が笑っているのだ。


「○△□○△□」


 何かを喋った。


「男爵様は」


 少年が通訳した。


「ジパングにはサムライという強者が居ると聞いて来たのに、口先だけの腰抜けばかりだと仰せです」


 静香が人だかりの前へと出た。


 男爵の正面の立つ。


「私が相手しよう」


 静香の声に聴衆はざわついた。


 静香が女だと分かったからだ。


「○△□○△□」


 男爵が言った。


「男爵様は女とは戦いたくないと仰せです」と少年。


 主人の語調が少年にも移ったのか、その顔には嘲笑めいたものが浮かんでいた。


「お前のほうが腰抜けだな。女が怖いか?」


 静香が言った。


 少年が、みるみるうちに青ざめる。


 唇が震えだした。


「○△□」


 男爵が少年に言った。


 静香の言葉を訳せと命じたようだ。


 少年は一瞬、躊躇(ちゅうちょ)したが、男爵の兜に何やら耳打ちした。


「○△□○△□!!」


「男爵様は大変ご立腹です! 全力で立ち合うので後悔するなと仰せです!」


「○△□○△□!」


「今度は先ほどとは趣向を変えると仰せです!」


 少年が聴衆に向けて叫んだ。


 男爵は静香をその場に残し、自らの黒馬へと歩いて行く。

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