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(どうすれば良いのだ…)
静香は出口の無い迷路に迷い込んだ気がした。
死ぬまで、この苦しみは続くのか?
絶望感の中、静香は旅を続けてきたのだった。
宿場の入口近くに人だかりが出来ていた。
日中の人通りが多い時刻だが、それにしても大勢の人が集まっている。
人だかりの中心で何やら大声で喋っている者が居た。
「腕に覚えのある者は名乗り出られよ!」
無視して横を通り過ぎかけた静香の足が止まった。
人だかりへと歩いた。
最後列からでも、長身の静香には先の様子がよく見えた。
人々の中心には異様な二人組が居る。
特に目を引くのは甲冑に身を固めた人物だ。
ただの甲冑ではない。
日本の物とは明らかに違う、西洋の甲冑であった。
漆黒の鎧の中の者は性別さえ分からない。
なかなかの体格であるのは見てとれた。
腰には剣を携えている。
鎧の人物の背後に立派な黒馬が立っていた。
おそらく主人であろう鎧の人物を大人しく見守っている。