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我郎を持ち上げた相手が顔を近づけてくる。
虎然だ。
眼の前で見る虎然の顔は、やはり大きい。
虎然は緑色に光る眼で我郎を見た。
人の眼とは思えなかった。
「お前が最後じゃ」
虎然が言った。
虎然の持った錆びた刀が我郎の身体を串刺しにした。
腹を突き抜け背中側に飛び出した刀身を虎然の拳が横から殴りつける。
錆びた刀は折れ飛んだ。
動かなくなった我郎を虎然は投げ捨てた。
この場で生きているのは虎然だけとなった。
虎然が辺りを見回す。
「次はお前たちを供養してやろう」
そう言って虎然は辺りに落ちている刀を拾い始めた。
虎然が籠に入れていた刀はあらかた壊れてしまったが、殺された野盗たちの持っていた刀がある。
虎然はそれらを集めて籠の中に入れていく。
籠が一杯になった。
「さて、行くか」
虎然は一歩、踏み出したが。
「?」
小首を傾げた。
後ろを振り返る。
「石の気配がする」
前を向き「こっちとは別物か?」と大声で言った。