1 花屋の息子なのに
主人公は小学三年生。
作者の私は小学三年生の担任。
授業中、ふっと思いついて書いちゃった!
・・・社会の授業中だったんだけどね(笑)
「これは何の花でしょう?」
先生が、教科書の写真を指した。
ピンク色の花だった。
ぼくは知らない。
「咲人くん、分かる?」
え?
なんで、ぼく?
みんなが、ぼくを見た。
「咲人くんの家、お花屋さんだもんね」
先生が言った。
こう言われるのはいやだ。
ぼくは、もう一回、花を見た。
でも、分からない。
「……分かりません」
すると、後ろのほうで、誰かが笑った。
「花屋なのに?」
また、誰かが笑った。
「こら。笑わないの」
先生が言った。
でも、もう遅い。
ぼくは下を向いた。
花屋の息子だからって、花を何でも知っているわけじゃない。
ぼくは花が好きじゃない。
別に、嫌いでもいいと思う。
「これはホウセンカです」
先生が言った。
ホウセンカ。
ぼくは教科書の下に、小さく名前を書いた。
これから、みんなで育てるらしい。
別に、覚えなくてもいいけど。
先生は黒板に、葉、くき、根、と書いた。
ぼくもノートに書いた。
全然、おもしろくなかった。
どうせなら、すし屋の息子がよかった。
すしなら好きだ。
マグロ、サーモン、えび、いくら。
毎日すしが食べられたかもしれない。
花なんて、食べられないし。
学校が終わって、ぼくは家に帰った。
ランドセルが重い。
今日は、いつもより重い気がする。
たぶん、「花屋なのに?」のせいだ。
ぼくの家は花屋だ。
一階がお店で、その奥と二階が家になっている。
ぼくの名前は、咲人。
花屋の息子で、咲人。
名前まで花っぽい。
やっぱりいやだ。
店の前まで来ると、お客さんがいた。
お母さんが花を包んでいる。
ぼくは店から入らない。
いつも、裏から入る。
店の横に、狭い道がある。
人が一人、やっと通れるくらいだ。
ぼくはランドセルを背負ったまま、そこに入った。
ザッ。
ランドセルが壁にこすれた。
「あーあ」
少し体をななめにする。
ザッ。
今度は反対側がこすれた。
狭い。
でも、店の中を通るよりいい。
お客さんに、
「咲人くん、おかえり」
と言われるのも、ちょっといやだから。
裏口の近くには、大きなゴミ箱がある。
いらなくなった花や、葉っぱが入っている。
その前まで来たときだった。
ガサッ。
ぼくは止まった。
ガサガサ。
何かいる。
いやだな。
猫かな。
それとも、ネズミ?
ネズミだったら、もっといやだ。
ガサッ。
また音がした。
見ないで家に入ろうかな。
でも、気になる。
ぼくは、そっと近づいた。
ゴミ箱の後ろを、のぞいた。
「……え?」
何かいた。
小さい。
すごく小さい。
女の子だった。
ぼくの手に乗りそうなくらい、小さい。
長い髪、白い肌。
背中には、羽があった。
薄くて、すき通った羽。
ぼくはランドセルのひもを、ぎゅっとにぎった。
すごく、きれいだった。
こんなにきれいなもの、見たことがない。
もしかして……妖精?
本当に?
でも、妖精はぼくを見ていなかった。
ゴミ箱の中から、花を引っぱり出していた。
少ししおれた花だった。
妖精は、その花を両手で持った。
そして。
ぱくっ。
「え?」
食べた。
花を食べた。
むしゃむしゃ食べている。
ぼくは、何も言えなかった。
すると、妖精がこっちを見た。
目が合った。
大きな目だった。
きれいだった。
ぼくは動けなかった。
妖精は、口の中の花を飲みこんだ。
ごくん。
それから、手に持った花を見た。
変な顔をした。
「この花、まずいな」
「え?」
「もっと、うまい花おいとけよ!」
ぼくは、しばらく黙った。
さっきまで、すごくきれいだ。
と思っていた。
でも。
「勝手にうちの花を食べといて、何なんだよ!」
妖精は、ぼくを見た。
「あ?」
と言った。
なんだ、こいつ。
感じ悪すぎる!
これが、ぼくとフローラの出会いだった。
最悪だった。
咲人くん、とんでもないやつに出会っちゃった!
この妖精と、どんな毎日が待っているのでしょうか?




