第11話 元カップルの入学式
《結城 視点》
「アイシャ、早く朝ごはん食えよ。入学式初日に遅刻とか洒落にならないんだからな」
「ん〜! 髪型が上手く決まらないのよ。結城、ちょっと確認してよ〜!」
「いや、いつも通り可愛いと思うけど。なにが違うんだ?」
「可愛いって……朝から私と復縁のキスしたいの?」
「しないわ、アホの子」
「む〜! 相変わらず、結城は私に対する愛情表現が下手ね」
この元カノは朝からなにを言ってんだ。
「いいから、朝飯食べろよ。学校遅れるだろう」
「は〜い! 了解よ」
朝起きたら、布団で簀巻きにしていたアイシャが居なくなっていたため、なんだもう来ないのかとホッとしてきたら、俺の部屋の床下から、星夏高校の制服に身を包んだアイシャが現れた。
(着替えてきたのだわ。結城、どう? 似合うかしら?……あら、結城もお着替え中だったのね。素敵よ)
(どっから入って来てんだ! アホの子!)
あの時は、パンツ一丁だったので流石に見られて恥ずかしかった。
俺のプライベート本当にないよな。24時間アイシャに監視されてる気分だ。
最近は毎朝、アイシャと朝食を取る日々を送っている。
「ほら、ジャムが口元に付いてるぞ」
「ん、気づいたなら取ってくれると嬉しいわ。結城」
「……たく。朝から甘えん坊さんかよ」
「結城の前ではね〜! エヘヘ、ありがとう」
俺たち、数週間前に別れたはずだよな?
なんで、以前よりも親密になってんだろうか?
ちなみに、アイシャが料理をすると暗黒物質を造り出すため、料理は俺が毎日作っている。
そのため、現在俺は料理をスパルタ式で指導している最中。
「アイシャは、ご両親がマンションに迎えに来るんだったな」
「そうね。《《私の恋人》》の結城と久しぶりに会えるって喜んでいたのだわ」
「……いや、俺たち。別れたんだが。ちゃんとご両親に挨拶してないのかよ?」
「忘れていたわね。大丈夫よ。私、アドリブにものすごい強い子だもの」
「一切の信用ができないぞ」
「……酷いわよ。結城」
こいつ、呑気にサラダを食べ始めたぞ。
まさか、俺が別れを切り出した仕返しでもする気じゃないだろうな?
◇
「だから、伊達メガネを掛けなさいってば! 結城」
「断固拒否する。なんで、元カノに地味にイメチェンされないといけないんだよ!」
「そ、それは……私が元カノだからよ」
「……どんな理屈だよ。それは……ん?」
朝食を食べ終えて、マンションから出ると、外には大型乗用車が止まっていた。
「アイシャ〜! 結城く〜ん! 久しぶり〜!」
「迎えに来たよ。2人共〜!」
そして、リムジンから降りて俺たちに手を振ってくる30代くらいの男女。
男の人はアイシャの父親の修司さん。
女の人はアイシャの母親のエルさん。
「ママ、パパ〜! 迎えに来てくれてありがとう〜!」
嬉しそうに両親に手を振るアイシャ。
「…………お、おはようございます。お久しぶりです」
胃がキリキリし始める俺。……つうか、なんで俺がアイシャと同じマンションに住んでいることを知っているんだ? アイシャのご両親は。
そして、少し遅れてリムジンの後部座席の扉が開き、会いたくないアイシャの姉妹たちが現れた。
「見つけたわ! お姉さまの敵!!」
「お久しぶりね。覚悟しなさい女の敵!!」
やばい。逃げないと捕まったらボコボコにされる。
「リーリエにユノも来てたのね久しぶり〜!……あれ?」
アイシャの1つと2つしたの姉妹、リーリエとユノが、アイシャを無視して俺へと襲いかかって来た。
「「おらあぁぁあ!! お姉さまの敵がああぁ!!」」
「や、止めろ! アホの子共! 久しぶりにあってなんで、興奮した猿みたいに凶暴なんだ! やめ! ギャアアア!!」
「結城〜!」
この姉妹。姉のことが好きすぎて、別れを告げた俺を目の敵にしてるんだ。
そのためか連日連夜、どうして別れたのか説明してほしいから会いたいと連絡がくる始末。
「ハハハ!! 結城君は、変わらず娘たち皆と仲が良いんだな。感心感心」
「そうね。素敵なことだわ〜!」
いや、貴方方の娘たちに俺が一方的にボコられているだけでしょうが。助けてくれよ。
「「おらあああ!!」」
「やめなさい。貴方たち。結城が壊れちゃうわよ〜! やめなさい〜!」
アイシャだけが必死に俺を助けようとしてくれていた。
その後、俺はアイシャ一家のリムジンに強制的に乗せられて、星夏高校へと向かうのだった。




