表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児院から全力疾走で逃げ出した少女が帰る場所を求めて失われた古代文明を探す話  作者: 高ノ原 麻矢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/7

3 リーナと図書館棟

「あれ?ここって……」

 二人とともに次の建物に入ったリーナは、そこが見知った場所であることに気づいた。

「そう。図書館棟。君たちも月一で利用しているよね」

 リーナは、ぐるっと見回して、これまでの記憶と今の場所が繋がった。

「そっか。今まで私たちが入ってきていたのは裏口だったのね」

 そして、裏口の近くにも小さな門があり、リーナたちはそこから学院の敷地に入っていたのだった。図書館棟では、学院の行っている奉仕活動の一つとして、一部を孤児院の子どもたちや一般庶民にも開放している。とてもありがたい制度だ。

「でも、私はここにあるアトセルティルス関係の本は全部読んだわよ!」

「そうだろうね。でも、研究区域の本は?」

 アルが自慢げに笑みを浮かべる。

「そんなのがあるの!?見たい!」

 獲物に飛びつく子猫のような勢いのリーナに、アルはまたくすくすと笑って案内する。


 リーナたちが二階に上がると、アルは受付の一人に声をかけ、書架の案内を頼んだ。

「こちらに、アトセルティルス文明関係の資料が置いてあります」

「ああ、ありがとう」

 アルが慣れたように礼を言う。

「ごゆっくりどうぞ」

 案内をしてくれた人が去ると、リーナは両手を組んで目を輝かせていた。

「すごい! まだまだこんなに資料がたくさんあるの!?」

「良かったね。今から1時間位は、本を見てていいよ。僕たちもちょっと調べ物をするから」

「うん! ありがとう」

 言い終わるや否や、リーナは書架に並ぶ背表紙に指先を走らせる。

「『アトセルティルス大全』! これにしよっと」

 一番大きくて分厚い本を持って、リーナは近くの読書机に陣取った。


「調子はどう?」

 突然のアルの声に、リーナは驚く。いつの間にか、本を読むのにすごく集中していたようだ。

「うーん……。よくわかんない」

 資料のスケッチなどを眺めつつ、文章を斜め読みしているけれど、まだこれといってピンとくるものは見つかっていない。ただ、それでも何か、見ているものに馴染みのあるような感覚がほのかにしていた。

「そっか。それは何、文字の一覧表みたいだけど」

 アルが、リーナの見ていたページを興味深げにのぞきこむ。

 本には石板のスケッチが載っていて、何やら不規則なうねうねした文字が縦七文字、横十五列で並んでいる。

「文字が百五種類もあるって、非効率じゃない? 二十文字あれば事足りるのに。アトセルティルス文明って変わってるね」

 アルが呆れたように言った。

「そんなことない! ……と、思う」

 突然反論が口をついて出たことに自分でも驚いたリーナの言葉は、だんだん尻すぼみになっていった。

「へえ、そうなの?」

 アルは面白がるように、リーナに続きを促す。

「慣れれば、普通に使える……ような気がする」

 リーナは、何となくこの表から音が聞こえる気がした。この表はきっと、横一列はのばすと同じ音になる文字で、縦一列は同じ音の出し方で始まる文字になっているはず。そして、できた音の一つずつに字を当てはめているんだ。

 しかし、周りの文章を読んでも、そんなことは書いていなかった。

 アルにそんな気がしたことを話すと、感心しながら聞いていた。

「でもやっぱり、二十文字でよくない?」

 それがアルの結論だった。そう言われてみれば、確かに今使っている二十文字の方が簡単かもしれない。どうして、こんな面倒な文字をかばう気になったのか、改めて考えるとリーナは自分を不思議に思った。

「あれ?ギルは?」

 リーナは、周りを見回した。

「うん。たぶんもうすぐ戻ってくるよ」

「そっか」

 リーナは改めて、図書棟を大きいなと見回す。今いる読書机の近くは吹き抜けになっていて、一階の様子がよく見える。これまで、リーナたちが利用してきたのは、図書館棟のほんの一角に過ぎなかった。学ぶ権利のある人たちとは、こんなにも違う。なんだか、悔しいような、悲しいような気がした。

「そろそろ時間だな」

 アルがそう言って、リーナはしぶしぶ、本を書架に戻した。結局、その本の半分くらいしか見られなかった。それに、他の本も見たかった。

「あれ? アルのその本……」

 アルが本を持っていることに気づいたリーナは、その表紙に「アトセルティルス考」と書いてあることに目を留めた。

「アルもアトセルティルス文明を調べてくれてたの?」

 気づいたリーナは嬉しくなって、自然と顔がほころぶ。

「ああ。これはここの教授が書いた著書で、受付で借りていたんだ」

 そう言って、アルはページをパラパラとめくってリーナに見せた。

「でも、残念ながら真新しそうな話は載っていなかったかな」

 アルは肩をすくめてみせる。

「そっかぁ……。でもありがとう!」

 受付に向かって歩く二人にギルも合流する。そして、受付で本を返した後、三人は図書館棟を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ